1-12. 小学校に行こう!
______小学校前______
「ここか」
俺は今、光ちゃんの小学校前に来ている。
光ちゃんと接し、ロリに目覚め、幼女の柔い太ももや発育途中の小さな胸の膨らみに癒されに来た訳では断じてない。
下校途中の小学生女児に白い目を見られたが、勘違いさせておけ。
どうせ、こいつらとは交わる事が無い人生だ。
「うっはぁ! 天使ちゃん達が沢山いるねぇ!」
「うん。そうだな。これは目の抱擁に......ん?」
聞き慣れた声に踵を返す。
すると、アホみたいに口を開け、犬のようなハアハアという息遣いをしているポプラの姿がそこにあった。
「さぁ! お兄ちゃん! 光ちゃんの元にレッツ! んご!? な、何するのさ!?」
「何するのさ!? じゃねえだろ。どうして、ここにポプラがいるんだよ」
「えー。だって、お兄ちゃんがコソコソと学校を出て行くからさー。気になって」
「なるほど。俺の後を付けて来たって訳か。ストーカーみたいに」
「そうなりますなー」
「うむ。ポプラの存在に気付けなかったのは俺にも落ち度がある」
「そうだよ。お兄ちゃん、警戒心無さすぎ。殺し屋に狙われたらもう助からないタイプだよ」
「いや、それ、現代日本だと殆どの奴が当てはまるだろ」
「いや、私は助かる自信がある」
根拠のない自信を見せ、胸を張るポプラ。
だいぶ、話が脱線してしまった。
訳の分からないやり取りをするモデル級の美女は注目の的だ。
早く、こいつを家に帰さないと。
「いいから、早くポプラは家に帰れ! ここは、俺一人で行く!」
「えー! 何でよ! 私もお兄ちゃんと一緒に行きたい!」
幼い子供のように駄々をこねるポプラ。
見た目は大人、中身は子供の代表的な態度で周りからの注目は一層集まる。
このままでは、学校から教師が現れ、俺の計画自体がおじゃんになる可能性が高い。
「分かったよ! その代わり、うるさくするなよ!」
「私、いつも静かじゃない?」
「静かじゃないから釘を刺してるんだが!?」
「えへへ。一本取られたなこりゃ」
いや、何も取ってない。
むしろ、ポプラのせいで余計な時間を取られたのだが、ここでそれを言ってもポプラは理解をしようと思わないだろう。
若干の不安を抱きつつも、俺はアホな妹を引き連れ、光ちゃんの学校に潜入した。
◇ ◇ ◇
「伊地知光ちゃんのご家族の方ですか......?」
「えぇ。光がいつもお世話になっております」
学校に潜入!
と何とも秘匿性のある言い方をしてしまったが、わざわざ秘密裏に学校に忍び込まなくても良い。
職員室に直接行けば後々、問題になる事はない。
それに、初めは邪魔だと思っていたポプラがいるお陰で俺のことは怪しんでも、若干は信頼してくれると思ったからだ。
「で、今日は何しに?」
「光を迎えに来たんですけど、校門前で待ってても来ないので、それで心配になりまして」
「あぁ。なるほど。それなら、光ちゃんは教室で日直の仕事で残っているんですよ。いつも、光ちゃんは色々と手伝ってくれますから。先生からの評判も良いんですよ」
真っ当な理由を述べると、若い女教師は手の平を返すような笑顔を俺に向ける。
正直、こんな簡単に小学生に侵入出来て大丈夫か?
と先生の危機管理能力の低下を心配したが、今は好都合。
俺は、普段見せる事がない笑顔をこれでもかとふりまいた。
「おー? 懐かしい奴等がいるなー」
ビクッ!
後ろから気怠そうな声が聞こえ、俺は静電気に触れたように全身を強張らせた。
「あ! ダイアン! おつー!」
「ハロー! ポプラ! 久しぶりね~。おっきくなってちゃって!」
「ダイアンも良い意味で綺麗なままだね!」
「ハハ! まぁ、よく分からないけどありがと」
うわぁ......。
どうしよ。
しかし、どうして!?
何故、ダイアン先生がこの学校にいるんだ!?
「ハロー。楓。あんたも久しぶりね~」
「あ、は、はい。こんにちは。ダイアン先生......」
ダイアン・メグ先生。
俺とポプラの小学生時代の担任であり、俺の初恋の人物。
そして、俺が二度と会いたくない人物の一人に出会い、俺の思考はその場で停止してしまった。