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風が吹く。18時、キャンパスの灯が、流れる音楽に混ざり合う。息は白く、それもまた幻想になり、この数ヶ月を時々、無理矢理に思い起こす。良い、非常に良い時間だった。本当に。大学1年という、初々しくも大人に近い、そんな不安定な時期を、彼女に捧げる事が出来た。私はそれで幸せを感じる。


聖夜の前夜、とある催し物に、私と彼女は共に行くことになった。それは部関連の事でもあるから、セーフ。だけれど、私は自然と舞い上がっていた。

彼女と会う前に、指定の場所から程よく近い雑貨屋に立ち寄る。折角聖夜(の前夜)に会えるのだから、一方的だとしても、何かを贈りたい。そんな気持ちがずっとあった。


私にとっての、掛け替えのない、良い先輩であるHと話した事を、私は今でも鮮明に思っている。

なぜ、私が彼女を好いていることを言ったのか、問い詰めたことがあった。

彼女が、私を弄んでいる。

確かにHはそう言った。


事実、Hは面白半分にその事を言ったわけではなく、彼女の態度に腹が立ったから言ってしまった、と謝っていた。私には突然の事で、頭が追いついていなかった。


彼女は、私の知らないところで、「やっぱりこの人しかいない」と言っていたことがあったらしい。それは覚悟の上だったが、Hから見てみれば、私の事を弄んでいる風に見えたのだった。だから、ハッキリしてくれ、と言う意味を込めた告白をしてしまった、という。私は、色々と思う所はあったが、その話を聞き、噛み締めた。辛かった。辛かったが、不思議と涙は出なかった。


その後から、私は彼女に対して、以前と比べて、ほんの少し距離を感じる様になった。仕方の無いことではある。だけれど、私のことを見てくれていないのではないか、そんな卑しい思いが、私の中で叫びを挙げるのだ。痛い。悲しい。辛い。色々なマイナスの感情が蠢く。その全てが、全てが、大好きだという純粋な思いに中和されて、侵食されて、飽和して、破裂する。想いが、今にも破裂しそうなのだ。それでも好きなんだ。


忘れもしない1月の出来事。

彼女の瞳が、直視できない。


ああ。

言葉が詰まる。


貴女のことが、本当に好きでした。


彼女との会話が好きで、通知が楽しみで仕方が無い。他愛も無い話も、この関係についての話も、少し深刻な話も、全部好きなんだ。彼女が落ち込んだ時は慰める。喜んでいたら一緒に喜ぶ。そんな距離が好きだった。一度も面倒だと思った事なんて無いし、不思議な事だが、私から彼女に送る言葉で、私が不安になることは無かった。一方的にも思えるが、私は彼女の事が好きで好きで、そして心から信頼していた。それは裏切られてもいい信頼。儚くても、それでもそこにある、そんな憐れな信頼。何が言いたいのか分かった頃には、もうそこにはないものだ。


だから、ねえ。

ずっと好きでした。


応えられない愛で、

叶うことの無い恋でした。


それでもいいと思える恋でした。


それでもいいと思える愛でした。


愛した人が貴女でよかった。

恋した人が貴女でよかった。

本当に、素敵な恋でした。


貴女に出会えて、本当に良かった。


これを1つの告白として、1通の恋文として、貴女に贈ります。

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