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私には支えてくれる人が沢山いた。恋愛相談に乗ってくれる男女の友がいた。本当にこれは大きい存在だ。どうしようもなくなった時なんかは、厳しい言葉や優しい言葉をかけてくれた。その中、想い人の彼女に近しい人も含まれていた。実際、最もよく話したのはその人かもしれない。


信頼のおける人だった。酒豪だと言うところも面白く、こんなただの一後輩をご飯に誘ったり、飲みに誘ったりしてくれた、優しい人だ。本当に良い先輩なんだ。だけれど、一つだけ欠点がある。オブラートに包んで言うと、恐ろしく口が軽い事だ。(以下彼女をHと呼ぶことにする)


ある夜、想い人の彼女からメッセージが届いた。簡単に要約すると、こんな所だ。

「あなたが私のことを好いてくれているのを、Hから聞いた」

思考が止まった。何をしているのだと、すぐにでもHを問い質したいと思った。彼女は続けて「少し勘付いてはいたけれど、今日確信に変わった」「どう接していいのかわからない」と言った。私もどうしたらいいのか分からないままであったのを覚えている。

今思えば、これは彼女なりの拒絶だったのだろう。「あなたへのそういう気持ちはないよ。だから、どう接していいのかわからないの」 と、こんな風に。

そう思う根拠として、その後に「今答えを出した方が良いと思う?」と聞いてきた。私に聞くなよ、と思ったが、それでも選択を委ねてきてくれたことは幸いだった。今断られるよりは、まだ希望があると、都合良く思ったのだ。

私は「最後まで待ってくれ」と言った。

じめじめした六月の夜だった。


この部活は、三年生の冬に、ちょうど年明けの頃に、引退という形で、世代を交代する。私が言った最後、というのは、ちょうど年明け、彼女の世代が引退する日だ。その日まで、どうか待っていて欲しい。ここで、『こんな形で』終わりたくない。その時は、そんな心持ちでいっぱいだった。それが、どれ程私の首を、心を、そして恋を苦しめるか、考える余裕は無かった。


きっと彼女は、私に対して気を使ってくれたのだと思う。それは「二人きりで出掛ける様なことはしない」という一文から読み取れる事だ。私と彼氏を比べたりしない。彼氏しか見ない。そんな決まり。私はとても苦しい気持ちになったが、笑顔でそれを受け入れた、と思う。


それから、しばらくは、ただ下らない話を永遠と続けた。キャンパスも別々に分かれているから、昼などに会うこともなく、週に二回の部活の時間でのみ、また、ただ挨拶を交わすだけの関係だった。もどかしさ、今すぐにでも打ち明けてすっきりしたい、そんな気持ちもあった。視線は無意識に、彼女を追っていた。


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