一人目 樹海の終着レストラン
「本当に死を望むのならば、最期の晩餐しませんか?」
雨風にさらされて風化した看板の群れの中、
そんなことが書かれた看板がそこにはあった。
まいったな。
せっかく死のうとこの場所に訪れたのに、この看板に惹かれてしまった。
有り金は心もとないがどうせすぐ死ぬのだ。
最悪食い逃げすればいいだろう。
そう思い、看板の差す方向へ足を進める。
一体何を食べることができるのだろうか。
和食か、洋食か、はたまた中華か。
いやそもそも、本当に店があるのだろうか。
疑心暗鬼になりつつも歩を進める足は速くなった。
数分歩くだけでその場にたどりついた。
白いログハウス調の家が見える。
「終着レストラン…」
パセリと書かれたその看板があった。
カランカランと入口のドアを開けるとそこには従業員が立っていた。
「いらっしゃいませ。ようこそ終着レストランへ」
はにかみながらも落ち着いた雰囲気で男は言う。
黒を基調とした燕尾服に身を包んでいる。
一見するとどこかの漫画で見たような執事という言葉が似合いそうな赤毛の若い男だった。
促されるまま席へ案内されるとそこには席が一つしかなかった。
真っ白いテーブルクロスの惹かれたテーブルに席が一つ。
男は御冷をグラスに注ぎ僕の手もとのコースターに乗せる。
そして口を開き私にこう伝えた。
「ご来店ありがとうございます。まず当店のシステムについて説明させていただきます。」
そこから先の言葉は衝撃しかなかった。
「当店にメニューはございません。不満に思われるかもしれませんがご心配なく。
貴方様の最期の晩餐にふさわしい料理を必ずやご提供いたします。
料金ですが、我がレストランの料理が貴方様の最期にふさわしいと感じれば
帰る際に持ってるお金をすべてテーブルに置いていってくだされば結構です。
もしふさわしくないと感じるならばお代はいただきません。」
そう伝えると男は裏手へ消えていった