004 -異_界の_者_-
いつでもこんにちは、真理雪です。
お久しぶりです…遅くなりました…本当に申し訳ありません。
仕事が忙しくなかなか書けなくて…それになかなかいい感じに(物語が)ならなかったので投稿できませんでした…申し訳ないです…。
と言うわけで今回も楽しんでくれたら幸いです。
では、どうぞ。
明るく照らす魔法の光。その光が部屋の隅々まで照らし、そこにいる黒髪の少女と茶髪ポニーテールの女性を照らし出す。
広く、そして豪華なこの部屋は片方は一方が軽装の鎧を着こんだ騎士ともう一方が美少女ではあるがこの世界では見たことのない服を着た少女であった。些かこの部屋には釣り合わない彼女らだったがそんなことは関係ない。二人は真剣な面持ちで大きな丸テーブルを挟み話し合っていた。
「なるほど…。ハルちゃんのお兄さんが…ね…」
「……はい。もう…一年前になりますが…」
質の良い茶髪を一括りに纏めた凛とした雰囲気を醸し出す女性。リアさんは右手の人差し指を唇に当てどこか納得したように頷いた。
「それで?ハルちゃんは──どう思ってるの?」
「え…?」
私はリアさんの質問にす頓狂な声を出してしまう。
「お兄さんのことよ。ハルちゃん…貴女はもしかして自分のせいでお兄さんを死なせたと──思ってるんじゃない?」
「っ!それはっ…」
私はどう答えていいか分からず言葉を濁す。
『───もし私がちゃんとしていれば、
もし私がしっかりと確認していれば、
もし私がお兄ちゃんの手を引っ張っていれば───』
───何度も何度も何度も私はそう考えた。意味なんてない。そんなことはとっくの昔に分かっていた。だけど、思わずにはいられなかった。だって…だって…私の目の前で…お兄ちゃんは───死んだ!!手が届いたはずなのに!少し手を伸ばせば届いたはずなのに!!!死んだ!!死んだ!!死んだ!!死んだ!!死んだ!!死んだ!!死んだ!!死んだ!!!!!
「───ハルちゃん!!!!」
リアさんが私の名前を呼び、はっと我を取り戻す。
「うぅ…。……ごっごめんなさい…リアさん…」
「別にいいのよそんなことは…──それよりも…」
はぁ…とリアさんは似合わない大きなため息をつき、言葉を止める。その場に沈黙が降り、しばらくの間お互いの息づかいだけが聞こえていた。
「やっぱり…ね。…ハルちゃん?貴女は自分を責めすぎよ」
「…だって…。リアさん…お兄ちゃんは目の前で…」
「それが駄目だって言ってるのよ。貴女はもしものことを考えすぎよ。そんなことじゃ───お兄さんが貴女を助けた意味がないじゃない」
っ………そんなこと───
「そんなこと分かってますよ!!!何度も何度も!こんなことじゃ駄目だって!お兄ちゃんがしてほしかったことはこんなことじゃないって!そんなこと分かってます!だけど…だけど!!離れないんです!!私の中からずっとずっと!!消えてくれないんです!!!!」
私は叫んだ。ありったけを込めて叫んだ。見ず知らずのリアさんだったからこそなのかもしれない。それともリアさんの優しさに私が気を許したからかもしれない。理由は分からなかったけど、私は心の内にこびりついた焦げ後のように黒く胸が焼けるほど苦しいその思いをぶちまけた。
「なら──もう一度、前を見なさい」
「──え?」
私は涙で赤くなった瞳で彼女を見る。ぼやけて見辛いが、リアさんはその特徴的な朱色の瞳に仄かなる意志を見せ、私を貫かんばかりに見つめていた。
「過去じゃないわ。現実を見なさいハルカ。貴女は何をしたいの?貴女はどう生きたいの?貴女の大切なものは一体何?それをちゃんと考えないと───貴女はまた同じ失敗をしてしまうわよ?」
私の…大切なもの───??
「大切な…もの…ですか…?」
「ええ。──立ち直れとは言わない。忘れてしまえとも私は言わないわ。人はね。生きるためには──悲しみも怒りも憎しみも…必要なのよ」
リアさんはその場を立ちあがる。そして、私に近づき優しい微笑みで私を見ながらゆっくりと私の頭を撫でてくれた。
「ハルちゃん。貴女は深く考えすぎよ。大切な人がいなくなるのは本当に辛いことね。けどね、貴女のお兄さんは何故自身の命を懸けてまで助けたのか…。分かっているんでしょう?貴女なら。──たくさん泣きなさい。たくさん叫びなさい。それは自分の中に溜め込んでても何もいいことはないから」
「でも…でもっ…リアさん。わたしは…」
「──そして、気がすんだら貴女の大事な友達に会いに行きなさい。そうすれば自ずとしたいことが見えてくるわ」
────っ!!
私はリアさんの言葉に何も言い返せなかった。
繰り返す嗚咽と涙。今まで溜め込んでいたものが喉から心から押し寄せて来て止まることがない。私は抱き寄せてくれたリアさんの胸の中で吐き出す。それは一年間溜めた悲しみと寂しさと怒り──それはやっとのことで出来た私の一年ごしの慟哭だった。
ーーー
「さて…言いたいことは言い切ったし、邪魔者は失礼するわね」
私が泣き止んだ後。そう言ってリアさんは颯爽と踵を返し私の目の前から離れて行く。
「あっあの…リアさん!」
そのしなやかなポニーテールが揺れる後ろ姿に私は咄嗟に呼び掛けた。
「? どうしたの?ハルちゃん」
彼女はこちらを振り向き微笑む。
「…えっと…その…ごめ…いや──あっありがとうございました。まだ悲しいし辛いですけど、リアさんのお陰で気持ちが少し軽くなりました。えっと…どう言えばいいか分からないんですが──」
私は悩みに悩みながらもどうにか言葉を探す。そうしてはっきりとこう言いきった。
「───私は…負けません」と。
それを聞いた彼女は少しだけ驚いた表情をするが、すぐに戻し微笑み返してくれる。
「…そう。分かったわ。頑張ってねハルちゃん」
リアさんはその微笑みを一層深くし、私にエールを送ってくれた。
「はい!」
私はしっかりと頷いたのだった。
ーーー
ついさっきは二人で歩いていた薄暗い通路を今度は彼女一人で歩く。
「で?いつまで隠れてる気よ。早く出てきなさい──ティアラ様?」
と私は暗闇に一人、そう問いかけた。
「──もう、リア。二人の時はティアラでいいですって何回も言ってるじゃないですかっ」
その暗闇から、一つの人影が姿を現す。それはエメラルド色の絶世の美少女。
その艶やかなエメラルド色の髪は月明かりに照らされ妖艶な色を醸し出す。それは彼女の太股の辺りでゆらゆらと揺れ、その整った顔立ちに湛える慈愛に満ちた微笑みは女神のようで──この国に否、この世界に一人しかいない詩姫であり、そしてこの私が主と認める唯一無二の存在であった。
「でも、流石リアですね。私の隠蔽魔術を破るなんて…魔術には自信があったのですが…。いつから分かっていたのですか?」
「そうね…。確か私たちがあの子の部屋に入るぐらいから見ていたでしょう?伊達に貴女たちに“焔の旋風”とか恥ずかしい名前で呼ばれてないってことよ」
「恥ずかしいですか?私は格好いいと思いますよ?」
彼女は不思議そうに小首を傾げるがわざわざ説明するのも恥ずかしいだけだ。
まあいいか…と私は彼女との話を一度区切り、気になったことを先に聞くことにする。
「ところで…ティアラ?勇者たちはどうしたのよ?まさかほってきたわけではないわよね…??」
「心配しなくても大丈夫ですよ。勇者様方はジルに任せていますからっ」
「………」
その彼女の返答に私は額を押さえた。あの堅物のジルに任せてきたのね…。
(早く帰らした方がよさそうね…)
私はジルに任せたと言う緑色の美少女を半眼で見ながらそう思った。
「はぁ…。本当は隠れて見ていたり私にあの子を任せたのに文句を言いたいところなんだけど…。私も仕事に戻らないといけないしね。それはまたの機会にしておくわ」
「う…。えっと…それはその…申し訳ありませんでした…。その…リアならしっかりとやってくれると思ったので…」
私の言葉に彼女はばつが悪そうにおろおろとしながら謝罪を口にする。
「はぁ…王女様たる貴女が簡単に謝らないでよ…。しかも、こんな冒険者上がりに…。私の立つ瀬がなくなるじゃない。──そんなんだから婚約のお誘いが年々増加していってるのよ」
「ええ!?そうだったのですか!?」
と彼女は始めて気づいたように驚く。
確かに婚約のお誘いは年々増加傾向にあった。
まあ、それだけじゃないんでしょうけどね…。
どうしましょうどうしましょう…と慌てる彼女は小さな小動物みたいな可愛らしさがあり、その美人で可愛い様子は誰が見ても虜にしてしまうであろう。ましてや──自分の世界に閉じ籠りがちな欲の強い王族だったり自画自賛で自己主張が強い貴族などはすぐにでも手にいれたいと思うはずだ。それにこの子の性格やスペックを考えると…一層…。
まあ、そんな彼女だから私は守ると決めたのだけどね…。
ふう…と私はため息をつき可愛らしい彼女を見やる。
「ほら、ティアラ。正気に戻りなさい。さっさとパーティ会場に戻るわよ」
「はっ…そっそうでした…。申し訳ありませんリア…あれ?リアも来てくれるのですか!?」
「違うわよ。近くまで送っていくだけよ。私は参加しないって何回も言ったでしょ?」
うう…少しぐらいいいじゃないですか…と小声で呟く彼女。
「ほら、早く行くわよティアラ」
「あっ待ってくださいリア!」
私はちょこちょことついてくる彼女横目で見ながらその場を去っていく。
さて、明日はどうなるのかしらね…?帰るとしても、残るにしても…あの子たちには何もなければいいのだけど…ね。
私は心の内だけでそう思いパーティ会場へ向けて歩を進めるのであった。
ーーー
「よく眠れましたか?勇者様?」
と綺麗なエメラルド色の長い髪が眩しい美少女な王女様がその鈴の音のような透き通る声を鳴らす。
「バッチリ~…」
「……zzz…」
「───寝るな!」
凄く眠そうな亜衣と勇二くんに頭にチョップを降り下ろされうぎゃ!と女の子が言ってはならないような声を出す麻衣。
「…ごっごめんなさい王女様…。亜衣ちゃんも麻衣ちゃんもちゃんと謝って!」
「ふふっ…いえいえ大丈夫ですよ。昨日は楽しんでくれたみたいですからね。こちらとしても嬉しい限りです」
美衣がは二人に変わって謝罪するが、王女様は楽しそうにコロコロと笑いながら水に流す。
うーん…流石王女様だね。器が大きいと言うかなんと言うか──王族ってもっと堅物なイメージだったんだけど。それにこの国の王様も強面だったけど…優しそうな感じだったしね。
私は彼女たちを見ながらそう考え歩く。そしてまた昨日と同じ大きな両扉の前に近へと向かった。
「さて──では開けますね?準備はよろしいですか?」
「はい、よろしくお願いします」
チラッとこちらを見ながら言う勇二くん。
むっ今回はちゃんといるもんね!
その大きな扉は静かに開いていき、私たちはその中へと入っていった。
ーーー
「では、早速だが答えを聞かしてもらおうか勇者殿よ」
昨日のように大きな玉座に座る強面な王様は威厳たっぷりなその声を発し私たちに訊ねる。
「はい、分かりました。それじゃあ皆──昨日の打ち合わせどうりに」
「了解ー。それじゃあ皆別れよ~別れよ~」
「…うん、分かったよ」
ってあれ?皆が二つに別れていく…?
何故かクラスメイトたちはちょうど半分半分になるぐらいに分かれて行く。
「遥ちゃんはどちらか決めたかな?残る?それとも元の世界に帰るかい?」
「え…。私は……──残るよ」
勇二くんの質問に私は意を決して返答する。彼はそれに優しく微笑み返し──
「うん、分かった。それじゃあ──一緒に行こう」
勇二くんは私の手をとり別れた片方のグループへと近づいて行く。
「ふむ、なるほどな。…残る者と戻る者とに別れたわけか」
「はい、そうです。こちらの方が分かりやすいかと思いまして」
勇二くんは王様の言葉に頷く。そして──
「俺達は──この世界に残ります」
「そして──私たちは元の世界に帰ります。…ごめんなさい」
こちら側は勇二くんそして、あちら側の代表として美衣が戻ると宣言した。
「いや、謝ることはない。理由があるとしてもないとしても、帰りたいと思うことは当然のことだ。そして──これが最後だ。残る者達と戻る者達よ…。もう一度…その答えを聞かしてもらえないか?」
王様は改めてもう一度そう問いかける。
「はい、分かりました。俺達はこの世界に残ります。世界を救うとかそんな大逸れたことは言えませんが…この国のため、この世界のため精一杯努力したいと思います」
「…私たちは元の世界に帰ります。理由はいろいろありますが…帰りたい…皆がそう思っています。この世界では役に立てるとは思えませんし、それに残る者たちからはあちらの世界のことを頼まれました。なので私たちはこの世界を去り、元の世界に帰らしてもらいます」
王様は瞳を閉じ、クラスメイトの真意を静かに聞く。そして数分の沈黙の末、彼は口を開いた。
「──よかろう…。残る者たちよ…ありがとう。その決断はきっとこの世界を救う助けになるだろう。そして、戻る者たちもありがとう。しっかりと考えてくれたようだな感謝する。すぐに帰る準備をさせよう」
ティアラ頼むぞと王様はそばにいた王女様に告げる。
「分かりました。では、召喚の間に行きましょう」
彼女はそう言いながら微笑む。
「美衣…」
「…ごめんね遥ちゃん。私は…役に立てるとは思わないから…」
私はある少女に近づき声をかける。その少女は申し訳なさそうに悲しそうに顔を俯かせながら言った。
「ううん…。寂しいけど…大丈夫だよ美衣。心配しないでね」
私はその儚い美少女にそう返した。
彼女は身体が生まれつき弱かった。いつも体育の時間は始めに軽く運動するだけで、それ以外は近くで見学という感じだったのだ。いつも見学してる時に悲しそうに見つめていることを私は知っていた。
「必ず…。必ず帰るからね!待っててね美衣!」
「…うん…うんっ。待ってるねっ遥ちゃんっ。必ず…無事に帰ってきてねっ」
「うん!必ず帰るよ!」
私は決意を改める。──必ず…必ず帰るから!
そして、私たちは王女様たちに誘導され謁見の間から出ようとした。その時だった。
「───緊急!緊急事態です!!」
と謁見の間に入ってくるものがいた。
「何ですか!王の御前ですよ!」
「うっ!すみません騎士団長殿!しかし、緊急事態なんです!」
「どうしたのですか?」
その男の凄く慌てた態度にたまらず王女様は疑問を問いかける。
「そっその…召喚の間が…召喚の間が──破壊されました!」
「何だと!?」
「なっ!?」
「そっそんなっ。どういことですか…?」
皆が驚く。と、最後に王女様が言った叫びに答えたのはこの場の誰でもなかった。
『───それはこう言うことだ詩姫よ』
その頭の中に響くような男性の声。それが聞こえた瞬間…──私の…私たちの視界は光に包まれた。
あの…えっと…その…申し訳ありませんでした…妹パート終わりませんでした…あっあれー?何故かな?自分的には今回で終わるはずだったのにな~?あれー?
今回も読んでくれてありがとうございました!次回もよろしくお願いしますね!感想などありましたら是非ともお願いします!では、このへんで…また次回お会いしましょう。