047 ― 無力さ ―
お、おおおおおおおおおお久しぶりでございます…。こ、こここ今回はちょっと早めに…出せましたねっ。今回はご報告がありまして…というかまあただ確認したら気づいただけなんですが…。
な、ななななんと嬉しいことにブックマーク件数が1000件突破いたしました!
ありがとうございますありがとうございます。まあ実際のところ放置とかありそうなので、実際はもっと少ないんでしょうが…。嬉しいことには変わりません。
拙い文章でスローペースで、それでも見てくれている方々には本当に感謝です。これからも見てくれると幸いでございます。
長くなった…。では、どうぞ。
「よしっ。三人でこれからのことを考えよう」
軍用テントの一室。大広間ぐらいの空間にテーブルが置かれ、両脇に3つの椅子が並ぶ。その奥には簡素ながらもベッドが3つ用意されている、最低限の設備を施された室内。そこには3人の少年の姿があり、2人がテーブルにつき、1人がベッドで寝転がるというように別れていた。
“霧崎勇二”、“田中武司”、“高間日向”。この3人はクラスの男性陣の中でも、よくも悪くも目立っていた少年たちだった。
勇二は、頭脳明晰で周囲への気配りも欠かさず、ルックスの良さと相まってクラスだけでなく間違いなく学校一人気のある少年。
武司は、その大柄な体躯に反して優しい性格で、誰とでも分け隔てなく接するクラスのムードメーカー的存在。
日向は、喧嘩することがないとしても無愛想で、言葉遣いも荒く、1人でいることが多い。しかしながら、格好は目立つし、先生とも仲が悪いともなれば嫌でも有名にもなる。
勇二と武司としては仲のよいクラスメイトだ。しかし、日向はというと同意しかねる。
そんな3人が仕方ないとはいえ、同室内に集まってしまった。
勇二はそんな妙な空気を断ち切るように、意を決して口火を切ったのだった。
「うむ、そうだな。これから始まるだろう戦いについて情報交換やすり合わせはするべきだろう」
勇二の言葉に大仰に頷いて、そう口にするのは田中武司。
彼は勇二の隣の席に座り、ここで唯一言葉を発しない1人に目を向ける。その彼の額には不機嫌そうに皺がよっていた。
「高間。君にも言っているんだぞ」
「はぁ…? なんでオレがそんなのに付き合わないといけねぇんだ。勝手にやってろ」
高間日向はあからさまに嫌そうな態度を取り、こちらに顔も向けずにそう言う。
「高間。今の状況を分かっているのか? こんな未知の世界で自分たちは今や九人しかいないんだ。協力し合わないと生き抜くことすら難しいんだぞっ」
日向の興味なさげな態度に語尾が強くなる武司。正義感の強い彼にはそんな態度が目に余ったようだ。
「だからなんだよ。こんな訳の分からない場所でやることは仲良しごっこか? そんなことしてなんの意味があるってんだ。オレは甘ちゃんのお前らだけに任してられねぇから着いてきただけだ。協力しろだ? 勘違いするんじゃねぇ」
事も無げにそう言った日向は、寝転がっていたベッドから起き上がってその場に立つ。
妙に反りが合わない武司と彼。二人の視線がぶつかって少しの間、睨みあった状態になる。
緊迫した空気がここ一帯を支配した。
「二人ともっ! 止めるんだっ」
互いに矛を納めない彼らに勇二はたまらずに言った。
「ここで喧嘩しても意味なんてないだろ。落ち着くんだ」
「はっ! てめぇもてめぇだ。リーダーぶるのも大概にしろよ。なにもできない癖に偉そうにするんじゃねぇっ。…イラつくんだよ!」
「高間っ!! 君ってやつはっっ!!」
怒り心頭の武司は日向のむらぐらを掴む。
「あっ? なんだ殴るのか? あ?」
「高間っ! 言っていいことと悪いことがあるだろうが!」
「───止めろ!! 田中っ!」
ピリピリした空気の中。勇二の叫びで時間が止まったように沈黙が舞い戻った。
「───ちっ! 離せっ」
日向は強引に武司を突き放して足先を出口へと向ける。
「どこに行く気だ高間。ここで待機していろと────」
「うるせぇっ。こんな辛気クセェとこにいられるかよ」
武司の言葉を遮って彼は外に出てしまった。
「…」
「…」
言葉が出ずに、気まずい時間が流れる室内。空気は重苦しく、雰囲気は暗い。
「…悪い、田中……」
「何故君が謝る。謝るのは自分の方だ」
二人は互いにため息をつき、席につく。
「…リーダーぶるな。か…」
「霧崎に落ち度はない。奴はことの重大性が分かってないんだ」
「…」
成り行きで纏め役を務めていた勇二だったが、こうやってはっきりと嫌悪感を表に出されたことはなかった。自分がやっていることは大切なことで、間違ってないと自分なりに考えてやってきたことだった。それだけに否定されれば、衝撃は大きい。
「はぁ…」
再度大きなため息が漏れる。もたれ掛かった背もたれから軋む音が鳴った。
確かにリーダーになるべき人材は自分以外にもいるだろう。聖剣を持った“美凪遥”や天性のカリスマを持つ“天楼院未來”。目の前にいる“田中武司”だって頼りがいのある男で、彼らに任せればこんな自分よりも上手く皆を纏めあげたのかもしれない。
(今の俺は…何も出来ない。…確かにそうだ)
───だからって、立ち止まることはしない。
自分にはリーダーを務める技量はないのかもしれない。だからって、諦めることは出来ない。
(彼女の決心を無駄にすることはしない。そう…決めたんだ)
彼は胸の前で右手を握りしめ、呼吸を整える。決めたことを忘れないように噛み締めながら。
────ガヤガヤ……
「? 外が騒がしいな」
武司がふと気づいたように口にする。気を取り直した勇二もそれに気づいて首をかしげた。
「何かあったのか…?」
「さてな…」
不思議そうに二人は顔を見合せて言葉を交わす。そして、武司はおもむろに立ち上がると入り口の弾幕を退け、ちょうど近くにいた兵士へと声を掛けた。
「騒がしいですが、どうかしましたか?」
「はっ! これは勇者殿。実は少し前に強力な魔物が現れたと報告がありまして…」
「魔物っ!?」
「心配ご無用でございます。すでに騎士団と兵士隊が動き対応しております。勇者殿の皆様はここで待機をと、騎士団長殿から言い遣っております」
「そ、そうですか…」
武司はその兵士にお礼を言って帰ってくる。勇二はその掛け合いを全て見ており、心配そうな表情を浮かべていた。
「魔物か…自分たちは守られる立場なのだな。なんとももどかしい…」
「そうだね…」
自分たちの無力さに苛まれる二人。まだ戦い方を知らず、力のない自分たちは彼らの力を借りなければ生きていくだけで難しい。そんな事実がむざむざと思い知らされる。
「───遥ちゃんたちは大丈夫かな…」
勇二はここにはいない彼女たちを案じるようにぽつりと呟いた。
◆◆◆
心臓が激しく脈打っている。彼女の悲鳴が響き渡った室内で、血だらけの人が倒れてくる姿が目に入った。その人物は知っている顔でその表情は苦痛に歪み見るに耐えない状況だった。
「───エディンさんっ!!!」
遥は名前を叫び近づく。そして、抱き上げようとしたところで───
「──ごふっ」
「っ!!」
彼の口から血が吐き出された。
「ひっ!?」
運悪く目の当たりにした彼女、未來は顔を真っ青にし、両手で口元をおさえる。
「エディンさん! 大丈夫ですか!? ───天楼院さんっ、そこどいて!」
遥は未來を押し退けると、彼の容態を探る。自分に助ける手立てはないが、とにかく何かをしなくてはならないという使命感が彼女の体を動かしていた。
(うっ! この傷は…)
それはヤバいと素人目でも分かるものだった。まるで拷問を受けたかのように身体中痣や傷だらけで、右足は曲がらない方向へ折れ曲がり、胸にある鉄の胸当てが見事にぱっくりと割れ、そこから止めどなく血が溢れている状態。
(ひ、酷い…。こんなの助からない…)
遥はそれを見て唇を噛んだ。自分自身の無力さが、ここにきて身に染みて分かる。聖剣を持ったからと言って、全員を助けるなんて不可能なのだ。
「───やっぱり脆いわねぇ。人間って生き物は。ま、期待はしてなかったけどねぇ?」
異質な存在が扉を開けた先、遥が向けた視線の先に妖艶な笑みを浮かべた人物が立っていた。
笑みと言っても嘲笑ったかのような笑みで、決して人を微笑ますものではない。その爛々と煌めく双眸は獣のように、“狩ることを楽しんでいる”かのようにこちらを見つめていた。
「初めまして、“異世界の勇者”ちゃん。会えて嬉しいわ」
心底楽しそうに彼女はそう言った。
前書きに書きすぎて書くことなくなった…。
あ、次回ですが。頑張って月末には出したいなと思っております。え? 無理だろって? ……否定はできませんね。
ま、まあ…少なくとも来月の一週目には出したいなーなんて…。
こほん。
改めまして、今回もありがとうございました。まあまだクライマックスにはほど遠いですが…付き合ってくれると嬉しいです。中途半端が一番嫌なので、頑張って書ききりたいと思います。
では、また次回!