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【旧作】 Welcome into the world [俺の妹が勇者なんだが…]  作者: 真理雪
第三章【シスターズサイド・消滅都市編】
50/77

043 ― 消滅都市へ ―

 あけましておめでとうございます!(大遅刻) こ、今年もよろしくお願いしますです。


 よかった…間に合いました。あ、遅いですよね申し訳ないです…。いろいろ考えていたら混乱してしまいまして…どうしようかなと悩んでいたらこんな時期に…。


 あーなにか長くなりそうなので先にいきましょう。では、どうぞ。 


 翌日の早朝。まだ外は薄暗く、朝の肌寒くとも爽やかな空気が立ち込める頃。遥たちクラスメイトは王女様や使用人たちに見送られ、王都から旅立った。


 護送用の馬車を2台。そして、護衛の騎士団が数十人。要人警護としては少な目の規模。諸事情から勇者が召喚されたことは民間に知らせていないため、目立つことは避けたい。その結果がこの状態だった。

 王都から一言に旅立つと言っても城下町のメインストリートを抜け、城門を目指さなければならず、その上“騎士団”の護衛付きと言うのも相まって目立つことは避けられない。ならば、少なくとも勇者たちを視認させないよう馬車という個室に入れ、貴族か王族かの高貴な者の警護と思わせる。勘の良い者にはすぐ気がつかれるだろうが、少しでも情報が流出しないよう最小限に計らった結果であった。


 旅路の日程は片道で約二日。その間、勇者たちは馬車に缶詰状態だったが、それを省けば概ね問題のない旅だった。勇者たちには慣れない馬車旅で現代のようにコンクリートの舗装などされていなく、ゴム製の車輪でもない中世的な旅はどうしてもストレスが溜まるものだった。が、それは若さ故の元気で払拭し、多少不満があれど耐え抜くことができた。


 馬車で揺られている間、勇者たちはこの世界についての知識と人類に対する“脅威”についての教鞭を受けていた。“脅威”とは魔獣、魔物、魔族を一纏めにした呼び方で、世界については旅に出る前にある程度は説明されていたが、脅威については時間もとれなかったこともあり、ちゃんとした説明は受けていなかった。



 この世界の“魔獣”は一般的に動物が魔力を扱えるようになり、変質したものを言う。“魔獣”の数は比較的に多く、種類もさまざまだ。“魔法世界”と呼ばれるここでは“元素魔力(マナ)”が空気中に漂っている影響で、生物に影響を与えやすい。

 “魔力”は生命活動には必須の項目だが、与えすぎるとどうなるかはっきりとは分かっておらず、大概が悪影響を及ぼすとされている。そうして、与えすぎた結果が“魔物”だとある研究者がだした論文もあるほどだった。


 そして、“魔物”とは通常、生きている(・・・・・)ことが困難で説明がつかないもののことを言う。

 例えを挙げるならば、不定形の“スライム”や死んだ筈の人間、所謂(いわゆる)“ゾンビ”だったり、石でできた“ガンズロック”や肉体を持たない霊体の“リッチ”などなど。挙げていけば切りがないほど存在する。その言葉は生物とは到底言えないものたちの総称であった。


 そして、それを統治、統率している或いは統率できるものたちが“魔族”───で、あると言われている。

 人類も今までの歴史の中で調査ないし研究に勤しんできたが、そのはっきりとした生態までは分かっていない。理由としては、単純。───“魔界”に棲み、滅多に姿を現さないこと。そして、強力過ぎる力で討伐が難しいことが挙げられた。捕獲などもっての他だ。

 その上、“魔神”と呼ばれる者たちの存在も忘れてはならない。


 それらを見事打ち破り、“魔王”の首を取ること。それが“勇者”ならびに“騎士団”や“王国兵士”諸君らの最終目的であった。





「……い、蕀の道…だね」


 講義が終わり、皆が沈黙を保つ中。遥がぽつりと呟いた。


「うん、そうだろうね。でもハルカさん。それに皆さんも。君たちは“勇者”として呼ばれた。そこには決して間違いはないの。今は確かに強くないでしょうし、そこらの一般人となんら変わりはないでしょう。だけど必ず、君たちには力が授けられる。ハルカさんに“聖剣”を与えられたようにね。これはそういう仕組み(・・・)なの」


 そう語る彼女。講師役を任されたらしいミスティアはその豊満なボディを見せつけんばかりに腕を組み、眩しいぐらいの笑顔でそう返した。

 今はあの鎧を脱ぎ、インナースーツ姿の彼女が目の前で堂々と座っていた。なんでも団長直々に講師役を頼まれたらしく、馬車内では邪魔でしかない重装備を丸々取っ払い身軽な格好で教鞭を取っていた。

 甲冑姿の彼女しか見たことがなかった遥たちはそのギャップに驚きながらも真剣に講義を聞いていた。が、そんな中で生殺しのような状況になっている男子が一人。



「あ、ゆーじーが赤くなってるー」


「あ! 見とれてやがんなホレホレ~」


「うるさいよ二人ともっ! 仕方ないだろっ…な、慣れてないんだから…」



 目ざとい麻衣が楽しそうに指摘し、亜衣が肘で小突きながら勇二を茶化す。それに彼は怒り、すぐに恥ずかしくなったのか頬を染めて視線を反らす。


「もうっ。駄目だよ亜衣ちゃん麻衣ちゃん。今真面目な話をしてるんだからね」


「「oh、ソーリー」」


 ぷんすこっと叱る美衣に息ぴったりに頭を下げる二人。それに誠意が籠っているかは甚だ疑問だった。


 そんな様子の彼らを眺め、肩を竦めるミスティアは落ち着いた声で話し出す。その口調は今まで教授していた彼女とは異なり、どこか気落ちした声質だった。


「君たちには脱帽するよ。本来はこんな急に戦わすつもりはなかった。危険が伴う戦闘には常に恐怖が付きまとう。それは常人にはなかなか耐え難いものなんだ。それを一度経験しながらも、一緒に戦おうとしてくれる。巻き込んだのはこちらの方なのにね。君たちに一度聞いてみたかったんだ───」



「───何故。関係のない、無関係な世界で戦おうと思ったんだい?」


 

 彼女は遥たち一人一人を見回してそう尋ねた。



 遥たちは唐突な質問にきょとんとするも、お互いに目配せしてから改めて彼女を見る。そうして口火を切ったのは遥だった。


「無関係だなんてわたしたちは思っていませんから。確かに思うところは皆違うと思います。だけど、あなた方はわたしたちが必要だと言った。この世界を救うために呼んだのだと言った。だから、決めたんです。──皆を『手助け』しようと。救えるかどうかははっきり言って分かりません。今はまだまだ足手まといですし、王女さまや国王さま、それにアリア師匠たちが期待するほどわたしたちは強いわけではないです。だけど、あなた方の決心や熱意は伝わったから…。だから、わたしたちはここにいるんです」


 目と目で向き合って遥は言った。それをミスティアは静かに聞いていた。…少し驚いた表情で。しかし、それはすぐに鳴りを潜め笑顔を作り出す。


「なるほど。…真っ直ぐね本当に。眩しいほどに。少し羨ましいな」


「えっと、ミスティさん…?」


「ああごめんね。──って…ミスティ??」


「あ!すみませんっ。前に愛称(ニックネーム)が欲しいと言っていたので…」


 聞き返した彼女に直ぐに謝る遥を見て、ミスティアは楽しそうに笑いながら答える。


「いや、謝らなくても大丈夫っ。考えてくれて嬉しいよ。ミスティか…ふふっ、愛称なんて呼ばれたことなかったからなんだか新鮮だね」


 そうして嬉しさを噛み締めた後、彼女は真剣な表情に戻り言葉を続ける。


「一つ忠告しておくよ。あたしたちのような考えの人間はたくさんいる。だけど同時に、あなたたちに反感を持つ者たちもたくさんいる。あたしたちの決心は本物だけど、反抗心に囚われた人間には惑わされないで。良くも悪くも人の考え方は人それぞれ。あたしたちも全力で君たちを守るつもりだけど、どうしても手が届かない場合もある。その時は……自分の答えに従いなさい」



 そう彼女言い切った時───




 “ボォォオ──────────”




 と、何かの鳴き声のような音が響いた。突然のことに皆の表情に緊張の色が差すが、ミスティアだけは別で皆を(なだ)める。


「大丈夫よ。やっと着いたみたいだね」


 そういって彼女は窓を開け、外を見ることを促す。

 開け放たれた外の景色。自分たちが向かう進行方向の先には、地平線をなぞるように長い灰色の壁が見えていた。それは都市全体を囲う防壁。先が見えないほどに長く、遠くからでもその巨大さが伺えるものだった。


 彼女らが色とりどりの歓声を上げる中、ミスティアは言う。


「さ。これから忙しくなるよ。お互い頑張りましょ」





 こうして彼女たちの冒険の幕が上がった。




 ◆◆◆





 そんな防壁の上で、長い髪を靡かせながら眺める人影がいる。


 防壁は損傷が酷く、脆くなっている部分が多くあるため、登ることを制限されている場所だった。


 それは一見、美しい女性の容姿をしており、繊細で華奢な体つきは世の男性を釘付けにしてしまうほどのもの。しかしながら、彼女は人間(・・)ではない。

 背中の尾てい骨から蝙蝠の翼が生え、臀部から鞭のようにしなやかな尻尾が伸びている。そして、頭部から歪んだ二対の角が髪の間から見えている。


 それは誰が見ようとも──“魔族”の象徴だった。



「“オウト”の騎士と馬車を視認したわ。どうやら当たり(・・・)のようね」



 彼女は誰ともなくそう呟いた。いや、それは宙に浮かぶ小さな魔方陣に向けて発した言葉だった。


『───────』


「分かりました。では、その様に」


 魔方陣から発された声と一言二言掛け合うと、それは音もなく消失し、当たりは静寂と化す。



「ふふ…。一緒に踊りましょう? 子羊さんたち」



 その一言で彼女は影のように消えた。そこにはまるで誰もいなかったように消滅し、誰にも気づかれることが無いまま時間だけが静かに過ぎていった。





 いつでもご感想お待ちしております。


 あと、いい忘れていましたが『幕間』と『プロフィール』を追加していますので確認してみてください。もう気づかれているかもしれませんが。


 今月は残念ながらここまでです。来月は2つ出したいな…とか思っているんですが…どうなるか。ちなみに次回は他のクラスメイトが登場予定。予定ですよ。恐らく遥たちと合わせて主軸となるクラスメイトになる予定。予定ですよ。もう予定ばっかだなっ。

 まあ結局のところどうなるかは分かりませんが…。さ、先が思いやられる…。次回も見てくれると嬉しいです(涙)


 遅くなりましたが、今年ものんびりとお付き合い下さると幸いです。また次回お会いしましょう。ではでは~。



 以下捕捉説明。



消滅都市(ロストシティ)について

 一千年前の戦争で失われた大都市。さすがに大きさは王都に劣るが、全盛期は首都と覇権を争うほどの大都市だった。今では見る影はなく、魔獣たちの巣窟になっており、長らく放置されていた影響で地下水道に魔力が溜まり迷宮化している。今現在、騎士団および王国兵士たちによって地上の魔獣たちは大抵が掃討されており、地下から出てくるものたちに対処している状態。

 復興するには時間も労力も資金も足らず、妥協案の“最低限の脅威を取り除く”方向で進められているようだ。何故今更になって手を入れ出したのかは公開されていない。


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