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【旧作】 Welcome into the world [俺の妹が勇者なんだが…]  作者: 真理雪
第三章【シスターズサイド・消滅都市編】
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039 ― 王都の勇者たち ―

 こほん。お、お久しぶりでございます。また見てくれて本当にありがとうございます。ほとんど失踪しかけていましたが、また性懲りもなく戻ってきました。

 投稿については、活動報告の方を見てくれると嬉しいです。おそらく、この後に書いていると思うので…。


 さて、今回から妹サイドのストーリーとなります。少々長くなりそうですが、お付き合いくださるととてもありがたいです。

 あと、久しぶりに書いたため矛盾点などミスってるところがあるかもしれません…。その時は教えてくれるとすごく助かります。

 長々と失礼しました。では、どうぞっ。



 時間が少し遡る。これはまだキュレアが霊峰から旅立つ前、そこからかけ離れた地での物語。

 

 美凪遥とその他数名のクラスメイトは王都と呼ばれるこの世界の二大勢力国の一つ───“アルテミス”にある一番目立つであろう場所に呼ばれていた。そこは王族のみが住むことを許された王宮。きらびやかなそれでいてやり過ぎないほどの絢爛さ豪華さを兼ね備えたそこは現代の美術館のような出で立ちで、どれも高級なものだと見ただけで理解できるものばかりであった。


 魔族の襲撃から一週間がたったころ。遥と結果的にクラスの纏め役となった勇二、そして戦うことを選択した数名の者たちと共に王宮でも一際大きな部屋を訪ねていた。



「えー。みんな集まったようね。じゃあ、話を始めさせてもらいましょうか」



 話の音頭を取る彼女。アリア・ウィクトリーナは皆が席についたことを確認してから口を開いた。

 ここは王宮にある大広間。彼女たちとクラスメイトが入ってもまだ余裕があるほどの大部屋で、もともとは社交界などのパーティー会場として使用する部屋であった。


「ここに呼んだのは他でもないわ。貴方たちが戦いに参加することを決めてくれたからここに呼んだの。あの…魔族からの襲撃を受けてもなおそう決めてくれた貴方たちをね」


 そう言うと彼女は集まった異世界の勇者たちを見回していった。


 約半数ほど戦いに赴くと決めていたクラスメイトたちはあの容赦ない襲撃の後、その恐怖から抜け出せない者たちが続出し結果的に激減していた。しかし、それも仕方ないこと。現代で生きてきた若者にとって突如現れた恐ろしい魔族と自身の命の危機。それらから与えられた恐怖は予想できるものでもなければ耐えられるものでもなかった。若者特有のノリとテンションで決めていた者も多く、そういった者たちの大半が足がすくみ身動きが取れない状況に陥ったのだ。


 結局、残ったのは遥と勇二含め数名のみで、それでも戦うことを決心してくれた者たちにアリアや王女、国王共々その誠意に感謝し、同時に勇敢さに驚きながらも感心していた。



「美衣、本当によかったの…?」


「…うん。遥ちゃん心配してくれてありがとう。わたしは大丈夫だよ」



 そんな中で美凪遥(みなぎはるか)のとなりに座る“橘美衣(たちばなみい)”は本来ここには居ない人間だった。その理由は単純で国王から戦場に出るか否かを聞かれた際、参加せず帰国する方へと決めていたからだ。彼女は先天的に身体が弱く、日本にいたころも病院通いが多かった。成長するにつれて少なくなってきたとしても、遺伝子レベルで弱いことから完治することはないだろうと医師からもそう言われていた。

 それ故、勇者と言っても彼女にはできることが少なく、足を引っ張ってしまうと考えた美衣は帰ることを選んでいたのだ。しかし、あの悲惨な襲撃を見て、彼女は逆に臆することもなく何かをしなければならないと決心した。そういう経緯で彼女は今ここにいる。



 遥は心配そうな表情をしながら隣に座っていた親友を見る。彼女はそれに笑顔で頷き、続けてこう言った。


「…わたしも、なにもできないなんて嫌だから。できることがあるなら、わたしも助けたいんだ」


「…そっか。うん、分かった。でも、調子が悪くなったら隠さずに言ってよね。美衣は大切な親友なんだから」


「…ふふっ。ありがとう遥ちゃん。わたしも遥ちゃんは大切な親友だよ」


 お互いに微笑み合う彼女たち。そうやって友情を確かめ合った二人は集められた理由を聞くべく、この話の中核を担うアリアへと視線を向けた。


 

「さて───ここに貴方たちを呼んだ理由。それは戦う術を身に付けてもらうためよ。簡単に言えば、人ではなく“魔獣”との戦闘を経験してもらいます」



 その言葉で遥たちクラスメイトは一気にざわめいた。

 ここ一週間。彼らはなにもしてこなかった訳ではない。アリアたちは後処理などもあり、手をつけられなかったとしてもその他の騎士団たちがクラスメイトたちに戦い方を伝授していた。まあ、騎士団の鍛え方をそのままやるとなると流石に着いてこれないのは分かっていたので、それなりに抑えてではあったのだが。


「あの、それは俺たちが実際に戦うということでしょうか?」


 そう手を上げて質問したのは霧崎勇二(きりさきゆうじ)だった。真剣みを帯びたその表情は学校一のイケメンと評された彼の優しそうな顔からは一転、大人のような頼りになる男性のように見えた。


「ええ、その通り。当然、騎士団が監督して危なくなれば手助けするわ。それに魔獣と言っても小型のものでそう強くないものを選ぶつもり。多少の怪我は仕方ないけども、出来る限りの身の安全は考慮するつもりよ」


 ざわざわと動揺を隠せないクラスメイトたち。それもその筈、彼らは修行しだしたと言ってもまだまだ初心者。アリアたちにとっても“魔獣”と戦わせるのは時期尚早だと重々承知していた。しかしながら、魔族の襲撃がまた来ないとも限らず、やつらの企みを掴みかねている状況ではこの国にいたとしても安全とは言い難い。ならば、早々に彼らにある程度の力をつけてもらうしかないと上層部がそう提案してきたのだ。

 魔王軍対策の為に施行した筈の“大規模勇者召喚”が、結果的に後手に回ってしまったことに大臣たちは焦りを抱いているようであった。


「本当ならしかるべき手順を踏んで力をつけていってもらいたいところなのだけど。やつら…魔族らが次にどんな手を打ってくるか分からない以上、貴方たちを守りながら鍛えることなんて出来やしないわ。それに、貴方たちには学園への編入も決まっているのだし、おちおちとしていられないの。分かってちょうだい」


 彼女はそういって彼らを見回していく。クラスメイトの皆はざわつきはしたが文句や不満が出ることもなく静観していた。彼らもアリアたちの言う状況は理解していたのだ。その上、彼女らがクラスメイトたちにしてくれた襲撃後のケアは彼らにとってとても重要で感謝するべきものであった。その恩を忘れるほど恩知らずな者はいないと言うことだろう。


「さて、それじゃあ。これから具体的にどのようにするか、わたしたちが決めたことを貴方たちに教えていくわね」


 彼らの沈黙を肯定と取った彼女は一つ頷くと傍らにいた兵士に短く声をかける。すると、彼は用意していたであろう大きな巻物を卓上に広げる。薄茶色のそれには王都の回りを記した地図が描かれていた。


「わ…。遥ちゃん、これ羊皮紙だよ。こんなに大きなものがあるんだ…なんの皮なんだろう…」


「へ? 羊皮紙? それってファンタジーの物語によく出てくるアレ?」


「うん。現代では高価だったりしてもうほとんど使われてないけど…」


「美衣よくそんなの知ってるね。さすが読書家…」


「う…別に凄くはないよ。ただ興味があって調べてただけで…」


 彼女は少し頬を染めて恥ずかしそうに俯く。それが可笑しくて遥は自然にその頬を緩ませる。遥はふと、いつも通りな親友が隣にいることに安心感を抱いていることに気づいた。


 (……怖いけど。皆とならやれる気がする)


 緊張が少し和らいだような気がした。


 “魔獣”と戦う。それは平和に暮らしてきた自分達にとって未知の領域。緊張してしまうのも無理はないだろう。しかし、自分の回りには仲間がいた。

 遥はそれに感謝して説明しだしたアリアの言葉に耳を傾ける。


 


 彼女が語ったプランは、大まかに纏めてこういうものだった。


 この王都近辺にある“消滅都市(ロストシティ)”と言われる場所に騎士団とクラスメイトたちが赴き、徘徊している小型魔獣を討つ、というもの。

 この“消滅都市”といわれる街は一千年前の戦いの中で破壊され、今では使われていない都市だと言う。謂わばゴーストタウンと化したその街をここ最近、騎士団と兵士たちが共同で復興作業を行っているそうだ。そこへ自分達が合流し、訓練を行うらしい。


「その“消滅都市”って魔獣たちの巣窟なんですよね? 言ってはなんですが、自分達は素人同然です。危険…なのでは?」


 アリアの話が一区切り着いたところで、勇二が手を上げて質問を口にした。

 彼女はそれを見越していたかのように頷き、返答する。


「そうね。戦闘において危険は付き物…と、言ってしまえばそれまでなんだけど。“消滅都市”ではそうそう危険なことはないわ。今は先行している者たちが殲滅作戦を実行し、大型のものや危険な魔獣はあらかた片付けているの。所々、迷宮(ラビリンス)化しているところがあるけれど、騎士団たちに従ってくれれば問題ないわ」


「師匠! ラビリンスってなんですかっ」


 遥は聞き慣れない言葉にいの一番に飛び付く。それにアリアは少々微妙な顔をしながらも答えた。


「…あーと。そうね。“迷宮化”っていうのは簡単に説明すると、魔力が溜まって空間がねじ曲がり、迷路のようになってしまう現象のことよ。使っていない地下通路や大型の洞窟、古い遺跡や鬱蒼と繁った森林なんかも対象ね。世界各地には意図しない場所で魔力が溜まってしまう場所があるの。そういう場所が“消滅都市”にもあるのよ───」


 アリアはそこで話を切って遥に諭すように言う。


「…ハルちゃん。さすがにその呼び方は止めてくれないかしら…?」


「え? あ、すみませんっ。呼び捨てはいけませんよね。アリア師匠!」


「そういうことじゃなくて…」


 額に手を当てて彼女はどうしたものかと悩む仕草を見せる。そこへ───


「あらあら。珍しいものを見せてもらいました」


 美声とともに部屋に入ってきた第三者。それは緑の髪を靡かせ美しいドレスを纏った人物───ティアラ・フィオーレ・アタランテ。この国の王女様であった。

 その人物が入ってきた途端、部屋の空気ががらりと変わり、兵士たちも当然アリアも畏まった雰囲気を見せる。それに気づいた彼女は少し困ったような表情をし、言葉を紡ぐ。


「もう。わたくしが入ってきただけで、そんなに畏まらなくても宜しいのに」


「…御言葉ですが。ティアラ様は自覚が足りません。貴女は近い将来この国の主権者となる御方です。失礼のないように振る舞うのは下に就くものとして当然の行為かと」


「むう…。リアは意地悪です…」


 ぷう、と頬を膨らます彼女はその美貌と相まって凄く可愛らしい。しかし、彼女はアリアが言ったように地位の高い人物である。庶民の者からしたら話をすることも出来ない天の人だ。そう考えると私たちは凄い幸運に恵まれているのでは…と、今更ながら思う遥である。


「それはそうと。ティアラ様は何故ここに?」


「はい、それはですね。…えーとっ。あ、ハルカ様を少しお借りしても宜しいでしょうか?」


 彼女はクラスメイトを見回してある少女の名前を呼ぶ。

 呼ばれた当の本人はへっ?わたし?、と素頓狂な声を出し、自身の顔に人差し指を向ける。


「…まだ、途中なのですが」


「大丈夫です。わたくしも貴女方のプランは拝見させてもらいましたから♪ わたくしから伝えておきましょう」


「いやそういうことでは…」


 アリアに珍しくどうしたものかと二の次を踏んでいると王女様はそれに…と言葉を続けていく。


「例の件の用意が出来ましたので、彼女に渡しておきたいのです」


 それを聞いた彼女は先程の表情とは一転して納得したような顔をし、少し肩を竦めて見せてから。


「…分かりました。それなら仕方がないですね」


「はい。ありがとうございますリア」


 にっこりと微笑んだ彼女はそのままの表情のまま視線をこちらへ向け、上品で揺ったりとした仕草で遥へ右手を差し出す。




「それではハルカ様。不躾ながら少々お付き合い頂けませんか?」




 





 どうでしたでしょうか?

 短いとお思いかもしれませんが、これはもともと長くなったのを区切ったためこうなってしまったものです。次回はほとんど書けてるため近々また投稿できるかと思います。


 一応こちらでも投稿頻度のことを少々…。


 基本マイペース進行で月に1、2回は投稿したいと思っております。仕事柄忙しくて書けないこともあるかもしれませんが…どうにか書いていきたいなっ…と気合いをいれて頑張りたいと思います。

 というか、前の投稿頻度とほぼ変わらないと思います。つまり、遅いです。気長にお待ちくださると助かります。


 

 さて、ここまでお読みくださってありがとうございました。また近々…お会いできたらお会いしましょう。では。

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