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【旧作】 Welcome into the world [俺の妹が勇者なんだが…]  作者: 真理雪
第二章【辺境の街 カノン】
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034 - 脅威を討つ者達 2 -

 おはようございますこんにちはこんばんは!!真理雪です!!

 ………無駄にテンション高いですね…。


 と言うことで今回はルナ視点??となります。いや、ルナかなーどうなんでしょうね…。まあ置いておきましょう長くなるので。では、どうぞ!!


 木々が生い茂る静かな森。そこから唸るような鳴き声が聞こえてきたのはつい先程のことだ。

 もともとこの森は霊峰から降りてきた弱い魔獣が蔓延る森だ。霊峰には元素魔力(マナ)と言われる魔力の原液のようなものが溜まっており、魔獣たちはそれに釣られて集まってくる。しかし、そこには強い魔獣達もいるため弱い低級の魔獣達は殺されかねない。なのでそれらの魔獣たちは霊峰の近くの森に降りてそのおこぼれを貰っているのだ。


 霊峰から降りてきた魔獣達を“霊峰帰り”と呼び、そしてその霊峰帰りの魔獣達は比較的大人しい魔獣達が多い。それもその筈元素魔力に引き寄せられた者には攻撃的な魔獣もいれば大人しく戦いに向いていない魔獣もいるのだ。どちらが勝つか等言うまでもないだろう。霊峰での生存競争に負けた彼等は回りの森で大人しいく静かに暮らしている筈だった。


「っ…何でこんなに魔獣が多いのよっ」


 森の中で唯一の街道を走る少女。ルナ・エルヴィスは紫色の髪を靡かせながら嫌そうに悪態をついた。


「こんな辺鄙な所に魔獣がうじゃうじゃいるとは…街の方はどうなってるんだ。大丈夫なのか…?」


「っ!あたしが知るわけないでしょっ。…街はキュレアちゃんに任せるしかないわ」


 後ろを追従して走る大男に彼女は叫ぶ。本当は自分だって街へと向かいたい。だけど、シスターたちがいる教会もほっておけないのだ。


「……キュレアちゃんならどうにかしてくれるわ…。問題はあたし達よね」


 ルナは一度大きく息を吐き出し落ち着く為、自身の状況を顧みる。


 

 降魔を倒したあたし達はキュレアちゃんと別れ教会へと急いでいた。あたし達がいた場所から考えると教会へと続く道はそこまで長くはない。しかし、その間で遭遇した魔獣はもう数十体もいた。幸い弱い魔獣だった為、魔術でどうにか出来たが……今考える所はそこではない。


「シスター…大丈夫…よね…」


 教会には魔除けの障壁が張ってあるとシスターが前に言っていたのを思い出す。こんな辺鄙な場所に建てた教会だ。魔除け障壁は無くてはならないものなのだろう。しかし、この魔獣の大量発生は異常だ。こんな異常時に魔除けがどこまで効果があるのか…。


「っ!教会っ…見えた!」


 目の前に特徴的な白い建物が見える。その白亜の教会は何事もなかったかのように佇んでいた。一見、異常はない様に見える。


「シスター!入るわよ!」


 ルナは一直線に教会の入り口へとたどり着き、両開きの扉を開ける。


「っ!?!?」


 中を見て彼女は絶句した。


 荒れ果てた教会。何もなかった表側に対して内側は悲惨なものだった。

 綺麗に並べられていた長椅子は無惨に壊され、窓脇に灯っていた幾つもの蝋燭は全て崩れ落ち、いつもシスターが祈っていた礼拝堂は見る影もなく廃墟と化していたのだ。


「うっ…嘘でしょ…。間に合わなかった…」


 彼女は声を震わせ、目の前の現状から目を背けるようにして俯く。


 何であたしはこんなに無力なのよ…。何も出来てないじゃない…。


 彼女は無意識の内に右手を握りしめ、悔しそうに歯をくいしばる。


「落ち着け小娘、何かおかしいぞ」


 そんな彼女にこの惨状を見た大男バギーが声をかける。


「死体がねぇ。血の臭いもしねぇし…まだ生きてるんじゃねぇのか?」


 その言葉に彼女は驚いたように顔を上げ辺りを確認する。


 確かに教会は見るも無惨な状態になってはいるが、誰かが倒れているとか血が流れているとかはない。ここまで破壊されているのなら人の死体があっても可笑しくはない。ないと言うことはまだ何処かで生きている可能性が高いのだ。


「シスター!どこ!?どこにいるのよ!返事しなさい!!」


 そうと分かれば彼女は早かった。もともとくよくよと考え悩むのは苦手なタイプの彼女は元気を取り戻し、教会の中を捜して回る。


 その時だ。唐突に重苦しい空気───重圧が二人を襲った。


「っ!何!?」


「なんだぁ!?」


 彼女らは二人して二通りの声を上げる。


 振り向いたその先。祭壇の上部に張り巡らされたステンドグラス。今では無惨に割れた残骸の前に、それは漂うように浮遊していた。そこにいたソレ(・・)は彼女らを見下ろす様にして浮かぶ異質な存在。


「なっ…嘘でしょ…。なんでこんなところに…“精霊殺し(スピリットキラー)”がいるのよ…」


 “精霊殺し(スピリットキラー)”───そう呼ばれた白い人形のソレ。精霊殺しと名付けられたその魔物はその名の通り精霊を殺し精霊を糧として生きるこの世界の癌。冒険者の中では死神とも呼ばれているそれの危険度はSランク…。遭遇してはいけない存在で有名な魔物だった。


 見かけは白い女型の人形のようなもので白い布のスカートのような胴体に細く白い腕、白く長い髪。それだけならまだ人の霊として見られるかもしれない。稀に人の霊魂が見える人間がいるらしいが、彼らからするとこの“精霊殺し”の見た目はそれとはかけ離れているらしい。それもその筈その魔物は本来人間を構成しているパーツその物が欠けているのだ。それは───


 顔がない───目がない鼻がない口がない眉がない耳がない。


 白い髪から覗くその顔は吸い込まれそうに黒く降魔とはまた違った恐ろしさを持つ。パーツが多いのも恐ろしいが少ないと得たいのしれない恐怖が増す。


 ルナはその場でゆっくりと背負っていた男を下ろす。出来るなら守ってやりたいが、背負っていたら魔術すら儘ならない。


 その魔物から目を離さないように瓦礫に男を隠す。今はこれが精一杯だ。ここから切り抜けるには…自身の命を賭けるしかない。


 チラッと彼女はバギーの様子を窺う。



 それがいけなかった。一瞬の隙。その瞬きの間でその魔物は姿を眩ます。



 ───現れたのはルナの目前。


「!?!?」


 ソレは自身の顔を彼女へ向け────



「バッカやろう!!!目をそらすんじゃねぇよ!!!」


 目の前を凪ぎ払う轟風。それは魔物を巻き込み壁へと叩きつける。


「小娘がっ!あんな化物から目を放すな!!死にたいのか!」


「うっぐぅ…」


 けたたましいバギーの声が殆ど耳に入らない。彼女は自身をその腕で抱きしめその場に力なくへたりこむ。


「…何あれ…何よあれ……」


 彼女は顔面を蒼白にし、同じ言葉を何度も呟く。


 ルナは一瞬の交錯で見てしまっていた。あの化物の顔の内側を。それが頭の内に幾度もフラッシュバックし鳥肌が止まらない。


「ちっ!大丈夫かよ小娘!!くっそ!片手じゃ限界があるんだぞっ!」


 彼は返事がない彼女を守るようにして立ち塞がる。

 それと同時にソレも崩れた瓦礫から姿を現した。


「あーっくっそ!こんな化物俺様でも手に余るんだが!!…やるしかねぇかよ!!」


 彼は吐き捨てるようにして叫び、左手で魔剣を構える。


 彼の後ろには舎弟二人と小娘が一人。到底、自分では守りきれる訳がない。


「それでも…恩は返してやる!俺様は義理堅い男だからな!!」


 彼は雄叫びを上げ、魔剣を振るう。

 その度に飛ぶ剣圧が魔物を襲うがそれはひらりひらりと避け当たる気配がない。


 彼が持っている剣がいくら強力な魔剣と言っても使いきれてなければその強さは激減する。ましてや今は片手腕で利き手でもない左手のみ。今までいろんな場所でいろんな状況で鍛えてきたバギーと言えどこんな不利な状況下ではどうにもならない。


「くっそ!はぁ…はぁ…当たらねぇかっ」


 彼は次第に魔力が減少していき、剣を支えにして肩で息をする。


 それを見計らっていたのか魔物は動きを止め、白い両腕を突き出す。


 上空を浮遊していた魔物には到底届く筈のない距離だ。しかし、そう思った瞬間…。


「うお!?」


 腕が蛇のように伸びて近づいてきたのだ。

 バギーは咄嗟に魔剣を振るうが風が起きない。彼の額に冷たい汗が流れた。


 魔力切れ───冒険者の中ではそれは最も最悪の状況を示す言葉。しかもそれは死神と恐れられるほどの魔物の前である。


「畜生!!」


 彼は悪態をつく。しかし、この状況を好転できるものが見当たらないし、思い付かない。万事休す───そんな言葉が脳裏に過る。

 彼は諦めきれず魔物を睨んだ。



 刹那───白い燐光がソレを貫いた。



「は?」


 彼はす頓狂な声を出す。いや、それしか出せなかった。


 こちらに攻撃を仕掛けた魔物は空中で白く発光する槍のようなものに貫かれもがくように暴れている。


「や~っと捕まえましたよ~?囮役、ありがとうございました皆様」

 

 この戦場では場違いな呑気そうな声。高く澄んだ声質から女性と言うことが分かる。


「…しっ…シスター……?」


 彼の後ろから声が聞こえる。やっとルナが正気に戻ったのかその光が伸びている終着点へと目を向ける。


 それは一人の女性だった。修道服を着た金髪の美しい女性。そんな彼女が細い右腕に持った槍を魔物に向けて突き出していたのだ。


「お話は少し待ってくださいましね。今止めを刺しますから」


 そう言って彼女はにっこりと微笑む。

 しかし、バギーはそんな女性に戦慄を覚えた。


 こちらに向けて笑みを向ける女性はさっと視線を魔物に戻し、ある言葉を紡ぐ。



 ───貫け(ドルヒボーレン)───



 それは一瞬だった。貫かれてもがいていた魔物は内側から突如出てきた無数の槍で体をズタズタにされ、悲鳴すら上げれずに細切れになり落下する。

 生き物ではないし、そもそも敵だったものだ…。しかし、その冷徹な笑みと無惨な成れの果てを見た彼らは何とも言えない恐怖を感じただ呆然とそれを見ていることしかできなかった。



 どうでしたでしょうか?いつでもご感想お待ちしております。


 今回は何だかモブキャラにしようと思っていた人が頑張ってくれましたねええ…腐っても上位ランカーということでしょうか…。本当はここまでしようと思ってなかったんですが…何だか筆が乗りまして…したかったことを詰め込んでしまった感があります…。


 あ、そういえばここでご報告を。ご感想で妹が空気になってると指摘を頂きました…。確かに否定できません…なのでこの章が終わった後に妹側のストーリーを書こうかと画策中です。どうなるかはまだ分かりませんが…。


 今回も読んでくれてありがとうございました!感想も本当にありがとうございます!もっと精進したいと思います!少しは成長したかなぁ…と思ってるんですがっどうなんでしょうね!では、また次回もよろしくお願いします!

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