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【旧作】 Welcome into the world [俺の妹が勇者なんだが…]  作者: 真理雪
第二章【辺境の街 カノン】
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033 - 脅威を討つ者達 -

 こんにちは!真理雪でございますよ!はい!


 何だかどんどん物語が凄い方向に行ってる気がしますが…。大丈夫なのでしょうか!私!


 まあそれは置いておきまして…。今回は主人公が出てきません。別視点になりますが……まあそれは読んでいただいた方が早いですね。では、どうぞ!


「こっちです!こちらに運んでください!重傷者からです!急いでっ」


 わたしはありったけの声を張り上げ叫んだ。

 回りではたくさんの人が忙しなく動き回り慌ただしい。


 わたしの前に傷を負った男性が運び込まれてくる。


 脇腹に深い傷──はっきり言って重症だ。しかし、どうにか命は繋ぎ止めなければならない。

 わたしは魔力を込め魔術を発動させる。回復魔術にだって限界はある。だからと言って諦められる訳がなかった。


 ここはギルドが臨時で建てた大型のテントの中だ。ギルドには運び込めなかった怪我人をこちらへ運び治療を施す場である。


「ステラちゃん!もういいわっ。交代よ!」


 ある女性がわたしの肩を叩く。交代の時間らしい。


「いえ!まだ大丈夫です!」


「ダメよっ。貴女大分魔力を消費してるでしょう!顔が真っ青よ!ちゃんと休憩は取らないと!」


「ですが…怪我人が…」


「はぁ…きつい言い方かも知れないけど。今倒れられた方がこちらとしても迷惑がかかるのよ。貴女はよくやっているわ早く休んで来なさい」


 渋るわたしに女性は有無を言わさず。彼女が言ったことが現実的であることが分かっているわたしは黙って頷くことしかできなかった。



 魔獣たちが襲ってきたのはつい先程のことだ。始めはギルドが防衛部隊を作り警戒していた為、襲われても対処できる筈だった。しかし、魔獣の動きはその予想を悉く覆していった。


 予想よりも多い魔獣に想定外の高ランク魔獣。それでも危ないのにもう一つ強大な敵が潜んでいたのだ。


 “黒の脅威(ダークメネス)”───この世界でごくたまに見かけるようになった黒い魔物である。


 今はセーラさんや熟練した古株の冒険者たちがどうにか凌いでいるらしいが……。


 自分に力がないのが恨めしい。自分に力があればもっと彼らを…彼女らを助けられたのに。


 わたしは後ろ髪を引かれる思いでテントの奥へ引っ込み一人悔しそうに唇を噛む。



 わたしだけだ。わたしだけ戦ってない(・・・・・)のだ。



「セーラさんやギンくん…。ルナちゃんにキュレアちゃんも…きっと戦ってる…。なのにわたしは…」


 わたしは回復魔術が使える。謂わば回復要因だ。戦闘が出来ない訳ではないが稀少な回復魔術を前線に出すことなどするわけがない。


「分かってる。分かってるから…我慢してわたし…」


 自分の立ち位置は理解している。わたしは自分自身に言い聞かせるように呟く。


 ここで勝手なことをしてしまえば皆に迷惑がかかる。最悪…死人が出てしまう可能性だってあるのだ。


 わたしは用意されていた簡易ベッドに座り込み俯く。


 “不甲斐ない。役立たず…”


 そんな言葉がわたしの心中を駆け巡っていた。

 

 ───そんな時だった。



「た……すけ…。だれ……たすけてっ…」


「え?」



 わたしはばっとその場で立ち上がる。休憩しているのはわたしだけだ。テント奥の休憩室には治療している表側からの声が聞こえてくる。


 一瞬あちらから聞こえたのかと思ったが…それなら他の声も紛れて来なければおかしい。


「……だ……たすけてっ…」


「っ!」


 聞こえた。はっきりと。方向は後方。ギルド職員や怪我人等は表側で集まっており、手薄になっている所であった。


「どこっ!?何処にいるの!?」


 わたしは考えるよりも先に行動に出た。声を張り上げ微かに声が聞こえた方へと向かっていく。


 行き止まり。声が聞こえた先はテントの幕で阻まれた方向だった。


 わたしは眉間に皺を寄せ難しそうな表情になる。


 このギルドのテントには結界とは異なる防御魔術が組み込まれている。低ランク魔獣程度なら籠城戦も出来る代物だ。この中なら少しは安心出来るだろう。

 しかしだ。声が聞こえた先はテントの幕の向こう側。今の状況を鑑みれば外に出れば危険でしかない。


 誰かを呼びに行くか?……却下だ。今手が空いているのはわたししかいない。表側では猫の手も借りたい状況だろう。それなのにいるかも知れない怪我人を助けに行くなんてとてもじゃないと言えることではない。


 なら聞こえなかった振りをして無視するか?───テントの向こうは不確定要素だらけだ。声が聞こえただけで一人で助けに行くなんて出来やしない。ましてや回復魔術にも限度はある。助けに行っても助からず運悪く魔獣に襲われる…こともありうるのだ。

 こういう大規模な戦闘に参加したことはないわたしだが、それが一番賢い選択だと自身では思った。しかし───



「……無視なんて……。無視なんて出来る筈ないよっ!」


 

 わたしは俯いていた顔を上げる。考えを振り払うようにして叫んだその瞳には信念が宿っていた。


「わたしは無視なんて嫌だ。助けたい。いや…絶対助ける!」


 自身の決意を言葉にし、彼女は目の前を遮る幕に手をかける。それを一息に引き上げステラは外へと駆け出した。




 ーーー




「セーラ!これ以上はダメだっ障壁がもたない!」


「っ!分かりました!私が注意を引きます!その内に撤退を!」


 セーラは長い金髪を靡かせひらりひらりと木の上を飛び、駆けながら敵を見定め弓を引く。


 光速の矢(スピードアロー)───


 鏃の先で展開された魔方陣が矢全体に伝わり魔力を纏わせていく。


 パシュッと軽快な音を響かせ、その矢が放たれた。


 その岩をも穿つ光の矢は空気を切り裂きその標的の黒い巨体に吸い込まれる様に突き刺さる。が、効いている様子はない。それどころか魔術の効果が出ていないようなのだ。


「くっ!」


 セーラはその場に止まらず幾度となく矢を放つ。


 それに鬱陶しくなったのかその黒い巨体はこちらを向き、大きな顋を開く。


「ブレスが来ます!!皆さん下がって!!!」


 彼女が叫んだ次の瞬間。


 辺りが真っ赤になった。怒濤の悲鳴と同時に受けるとてつもない熱気──それは紅蓮の…灼熱の火炎。何者も生きることを赦さない全てを焼き尽くす君臨者の技。


 その黒い巨大な魔物。それは彼の大きな翼を生やした空の魔獣。

 

 “(ドラゴン)”──飛竜や翼竜とはまた異なる。真正の竜。神の使いとまで言われ信仰の対象にまでなっている神獣。その形を…していたのだ。


「はっ…はっ…くっ…」


 それに紙一重で避けたセーラは所々に火傷と煤の跡を残しながらもどうにか体勢を立て直し敵を見据える。


 黒く焦土化した辺りからは熱気が立ち上ぼりどこもかしこも燃えている。もとは木々が生い茂っていた静かな森…そんな見る影は炭化した木の残骸に覆われとうに消えていた。


「…圧倒的…ですね…」


 彼女は歯を食い縛り目の前の敵を睨み付ける。


 敵わない──そんな言葉がセーラの心を蝕む。ここまでどうにか奴を足止めはしてきた。しかし、正直ここまでもてたのは奇跡的だった。


 ギルドの主軸となる防衛部隊はほぼ壊滅状態。回りはこの魔物に侵された魔獣だらけ。

 状態からしてこの魔物が主体となっているのは分かりきっている。だから、主要部隊で魔物を一気に落としきることが出来さえできれば…活路を見いだせる。


「その筈だったのですが…」


 セーラは自嘲気味に小さく呟く。


 油断はなかった。今の現状で出来る手は全て打った筈だった。しかし…。


「出来たのは足止め程度…ですか…」


 失敗。私達は勝つことが出来なかった。目の前の黒い魔物は嘲笑うかのようにこちらを見つめ荒い息を吐く。


 魔物の力は圧倒的だった。熟練者揃いの冒険者たちが成す術もなく殺られていった。物理的攻撃は意味がない。魔術は効かず、それは真っ黒な影の様に佇み、魔力を吸収し、魔獣たちを侵していく。そんな化物に私達は防戦するしか術がなかった。しかし、今ではそれも壊滅状態。敗退を余儀なくされた。はっきり言って…この“黒い脅威(ダークメネス)”は私達ではどうしようもない相手だったのだ。


 彼女は現状を再確認し、一つ大きく息を吐くとそれに狙いを定め、弓を引く。


「貴方がどんなに強くても…。諦める訳にはいきません。私にはまだ…守りたい人達がいますから」


 自身の信念を彼女は口に出す。それが聞いているのか聞いていないかは関係ない。それは彼女の覚悟。死んでも成し遂げる決死の覚悟だった。



 ───突如唐突に、魔物は翼を拡げる。



「!?」


 彼女は慌てて矢を放つ。しかし、それは空を切り当たることはなかった。


 その巨大を軽々と持ち上げ想定外にも身軽に空を駆ける竜。流石は空の支配者と言われているだけはある。


 その魔物は何をするでもなくセーラを一瞥してから方向を変える。


「まさか逃げる気ですかっ!」


 その魔物の意図を理解した彼女は急いで二射目を放つが効果はない。

 こんな化物をこのまま野放しにしてしまえばこの街処か世界そのものが危険に晒される。

 セーラはどうにかしてこちらに注意を向けさせようと魔術を展開させるが───


 彼女は中断しその場から飛び退く。その瞬間、セーラがいた場所に轟音と共にクレーターが出来上がった。


「くっ…こんな時にっ」


 彼女が見つめる先にはAランク級の魔獣が二体。


「…っ…(オーガ)ですかっ…」


 それは上位ランカーが苦戦するほどの魔獣。それらが雑魚どもを連れ我先にと駆けてくる。


 自分自身だけでは荷が重い相手なのは明白。彼女は辺りを見回し、誰かいないかと探るが当然見当たらない。完璧に孤立してしまったようだ。


 今や街の方向が分からぬ程に破壊され尽くした森の中で目の前に迫る強敵。


 絶望的。そんな言葉が当てはまるこの状況で───


「…来なさい…。死にたい者からかかって来なさい!」


 彼女は叫び、魔獣たちに向け弓を引いた。

 




 どうでしたでしょうか?いつでもご感想お待ちしております。


 と言っても今回はステラとセーラ視点だった訳なのですが…。多分ここからころころと視点が変わるかもしれません…。どうしても…どうしてもっ皆にスポットライトを当ててあげたいんですよね限界はあるでしょうが…。その辺申し訳ないですがご了承ください。


 今のところ良い調子で書けてますね。この調子でカノンの街を終わらせたい所なんですが…どうなることやら…。


 ここまで読んでくださってありがとうございました!感想くれた方もありがとうございます!凄く力になっております!では、また次回も…よろしくお願いします!

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