032 - 降魔を討つ者 2 -
こんにちは!真理雪でございますです!はい!
バトルパートなのでかっこよく書こうとしたらんですが…何でしょう…これじゃない感が半端ないです…。これが私の限界なのか………。いやいやっまだまだです!まだこれからの筈!では、どうぞ!
俺はいつも一人だった。この世界に来てからと言うもの霊峰で籠ってばかりで一向に外に出ようとしなかった。外の世界に興味がなかった訳ではなく、ただ単純に嫌だっただけだ。もう関わりたくない───そう思ってしまった。
誰もいなかった訳ではない。あのアホ神やこの霊峰の守護獣たる赤竜もいた。しかし、彼らは人間と言う種族ではない。それを言うなら自分だってもう人間とは言えないのではないか。そう言われてしまえばその通りであろう。否定は出来ない。だが、俺と言う…美凪彼方と言う人物はそんな事で諦められるほど出来てはいなかった。
人生の終わりは唐突だ。自身の終焉を決められる人などそうはいないだろう。あんな終わり方で…優柔不断で寂しがり屋で自己中心的な俺が…納得できる筈がなかったのだ。
───一人っきり。それがいつの間にか当然になってしまったのはいつ頃からだったのだろうか…。今では到底知るべくもない。
このまま一人で生きていく。俺はそう思っていたのだ。しかし───
「ふぅ…」
俺は一つため息をつき、視線を前方へと向ける。
そこには黒い影。俺たちの倒すべき敵だ。そして───
俺の人間とは異なる感覚は後ろで魔術を紡ぐ存在をはっきりと認識する。
“ルナ・エルヴィス”───紫色の髪が特徴的な魔女娘スタイルの自称魔女の子孫である少女だ。
俺と一緒に戦ってくれる仲間。
そう言葉にすれば簡単だ。しかしそれは俺に多大な心強さを与えてくれた。
「貴方なんかに負けないわ」
俺は言葉と同時に二刀の魔力刀をそれぞれの両手で抜き放つ。
『キィィィィィィィィ!!!!!!!!』
断末魔の叫び声のような奇声を放ち、化物は動く。
戦闘は唐突に始まった。
ーーー
それは黒い鞭のような触手を無数に伸ばし、ターゲットに狙いを定める。
俺は両手の二刀を構え、敵を睨み付ける。
高速で伸ばされた触手を俺は切り捨てる。右腕で払い切り、左腕で薙払い、身体ごと一回転した勢いで切り飛ばす。
それは舞う様に踊る様に。その場から最小限の動きで避け、両足の爪先にも顕現させた刃で両腕だけでは間に合わない攻撃を捌いてゆく。身体全体を使った舞。
決してここから一歩も後ろへは行かせない。
斬って切って裂いて切り伏せて───降魔の攻撃を全て捌いていく。
『グァッッッッ!!!』
「っ!」
唐突に攻撃が止まった。その瞬間、降魔は急速に接近。
化物は一向に倒れない俺に焦れったくなったのか直接的な攻撃に変更したようだ。
俺はそれに真っ向から受けてたち黒い両腕で捕まえようとしてくる降魔の腕を逆に捕まえ、背中の触手を使われる前に勢いよく前方へと蹴り飛ばす。
それでも触手を伸ばしてくる降魔に俺は即座に顕現させた二刀を投げつけ切り飛ばした。
「ふぅ…。…不味いわね…」
そんな戦闘をしながら俺は焦りを感じていた。
降魔は確実に成長してきている。腕だけだったあの黒い影が今やここまで動けるまでに成長しているのだ。呑み込まれた人間がどうなるかは知らないが…呑まれた人間の魔力を使われているのはもはや確定的だった。
早くどうにかしなきゃいけないんだけど…。
チラッと俺は後ろに視線を移す。
ルナさんはまだ瞳を閉じ集中しながら魔術を詠唱している。
まだかかるか…?
俺は自問自答するが流石に集中している彼女に聴く訳にはいかなかった。
───油断していた訳ではなかった。しかし、自分から隙を見せてしまったのは俺の失態だ。
シュル…───そんな音が聞こえた時は既に遅かった。
ガクッと身体が引っ張られ宙を舞う。重力とは違う力が右足を引き上げ、俺はあらぬ方向に飛ばされてしまう。
方向は右側。いつの間にか近づいた黒い触手が俺の右足を掴み投げ飛ばしたらしい。
「くっ」
俺は途中いくつかの木々を薙ぎ倒すが、どうにか空中で体勢を立て直しちょうど飛ぶ方向にあった大木に上手く着地する。
大分距離を開けられてしまった俺は瞬時に足に魔力を溜めその距離を精算させようとする。しかしその瞬間、魔力の流れが変わった。
──!!。これはルナさんか!
俺は視線を彼女に向け魔術の発動を視認する。
ルナさんの足元に紫色の魔方陣が描かれ、そこから余剰魔力が迸る。
“ライトニング”───彼女は突き出した右手の杖から魔術を放つ。ルナさんが選択したのは雷属性の上級魔術。
その閃光は光の速さを持って一直線に化物の胸に吸い込まれる。一瞬の出来事。瞬く間の攻撃。それは着弾した直後、爆散し化物の胸をピンポイントに破壊する。
『ギャャャャャャャャャャッッッッーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!』
正真正銘の断末魔の悲鳴。痛がる降魔は天を仰ぎ奇声を上げる。我を忘れたように暴れまくった化物は弱点を狙った彼女を狙い駆け出す。
───まだだ。我慢しろ…。
彼女は疲れたように膝をつき、肩で息をしている。しかし視線は前を向いたままだ。
降魔は速度を上げ、射程圏内に入った彼女に向けて飛びかかる。
俺は深呼吸し、息を整えその時を待つ。───もう既に用意は出来ていた。
普通なら恐ろしい筈の彼女は目を背けずに事のあらましを見続ける。
降魔が彼女の目前へとたどり着き、勢いよく手を伸ばした。その瞬間───ドゴッと壁にぶつかったような音が響いた。
それを簡単に説明するなら透明な壁。符術の人理結界と呼ばれる。対象者を仇なす者から守る術であった。
俺はありったけの魔力を爆発させ、数十メートルあった距離を一瞬で詰め寄り無様に壁に張り付く化物に跳び蹴りを放つ。
その勢いは止まることを知らず、俺は化物を伴ってルナさんの目の前を一瞬で通り過ぎていった。
「キュレアちゃん!!?」
彼女は咄嗟に俺の名を呼ぶが俺は化物に乗った状態のまま遠退いていく。
「見つけたわっ」
『ギャギャギャッッ!?!?』
俺は目の前にある赤く暗く、鈍く輝く球を見据え叫ぶ。
「桜!出番よっ!」
───我が呼ぶは一本の刀の名。その威名は一刀の妖刀の名。抜き放つ刀身は紅色に輝き、飛び散る乱光は桜が散る花弁如く────
俺はその降天球に向け、刃を振りかざす。
一突き───紅の刃がそれに当たる直前、何か壁のようなものに阻まれ燐光が飛び散る。
「っっ!?」
『ギャギャッッッ!!!』
最後の抵抗。その化物はこちらに大きな口を開け威嚇するように咆哮する。
千載一遇の好機。ここを逃がしてしまえばもうないだろう。ルナさんが作ってくれた機会。絶対に逃すわけにはいかないっ。
俺は両手で柄を持ち、気合いと共に力を込める。
「はぁぁぁぁぁぁぁっっっっーーーー!!!!」
火花の様に激しく飛び散る光は置いて行かれるように後方へと消えていく。
蹴りつけた勢いのまま空中を滑る様に飛ぶ狐と化物。
化物の一部が地面を引っ掻き地面を抉るが数十メートルを一瞬で精算したその勢いはその程度では止まらない。
空中での命をかけた競り合いをしながら二つの影は宙を舞う。
それは唐突に始まり突如として終わる。長いように思われたその命のやり取りは第三の衝撃で終わることになる。
森にある太く大きな巨大な木。
轟音を発てながらぶつかった彼らは辺りに砂塵を撒き散らし静止する。
紅い刃はその結界を撃ち破り赤い球にその切っ先を沈み混ませていた。
ピシッ───と亀裂が走る音がする。
その赤い球はその割れた場所から数本ものひびが入り、パシンッと予想外に軽快な音を発てながら砕け散った。
───キャァァァァァァァァァァーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!─────
刹那、耳をつんざくような悲鳴が響く。
目の前にいた俺はばっと後ろに飛び退き、我慢できずに頭の上にある耳を押さえた。
「………何よ今のは…」
壊れた降天球から放たれたような腹の底にまで響く断末魔の高い悲鳴。それは降天球の最後の抵抗なのか…それは解りはしないが、今ので降魔が死んだことは理解できた。
大木に張り付けられた降魔の身体がバラバラと崩れ落ちていく。そこから二人の顔が見えた事で俺はこの戦いが終わったことを確信した。
崩れ落ちた影が空中に消えた所で俺は二人の容態を確かめる。
「息は…しているわね。命は別状なさそう…回復魔術は必要ないわね…。あとは…目を覚ましてからしか分からないか…」
身体の方はなんともなさそうだが…精神的なものは流石に起きてみてからでないと分からない。
俺が二人を見ていると後ろから二人分の気配が近づいてくるのが分かった。
「キュレアちゃん!!大丈夫!?!?」
俺の姿を見つけたルナさんは開口一番俺の心配をしてきた。
「私は大丈夫ですよ。どうにか降魔も討ち取れましたし…二人の容態も命には別状なさそうです。あとは目を覚ましてからしか分かりませんね」
「そっそうか…。悪いな。その…助かった。礼を…させてくれ」
「別に、私はしたいことをした迄です。お礼は必要ありません。するならルナさんへ」
「へっ?あたし!?」
剥げた頭を下げてくる大男に俺はルナさんに話を振る。彼女は唐突に話を振られたことに戸惑い驚いた表情を見せる。
「そっそれよりもさっきの悲鳴みたいなのは何だったのよキュレアちゃん!凄い声だったけど…」
「それは……」
彼女はこの状況に居たたまれなくなったのか話を変えて聞き返してくる。その疑問に俺は少々言い淀む。
多分あれは降天球の最後の悲鳴だと…思う。しかし、俺の心中では本当にそれだけなのかと引っ掛かる部分もあった。
「………。今はそれは置いておきましょう。先にこの二人を休める場所へ。大分移動してしまいましたが…ここからなら教会が近いでしょうか…?」
「うっ…そうね。教会か…本当はこいつらを連れていきたくはないんだけど…。この際仕方ないわね…はぁ…」
彼女は俺の提案に同意しながらも溜め息をつく。確かに連れていきたくないのは分かるが…そんなことを言っていられる状況じゃないのは分かっているのだろう。
「悪いな…。俺のせいで…」
随分と殊勝になった彼は重ねて謝罪をする。
「……はぁ…。貴方にそんな態度をとられたら調子が狂っちゃうわよ…。仕方ないわ…ステラやシスターたちには悪いけどつれていきましょうか」
「ええ、そうしましょうか。えーと…一人は私が持つのでもう一人をお願いできますか?」
「いやいや、キュレアちゃんはいいわよ。あたしたちが持つから。ほらっそこの大男っ。突っ立てないで持ちなさい!怪我してても一人ぐらいならいけるでしょ!」
「ああ、そのつもりだ。その…えーと…だな…」
「キュレアです」
「…ああ、悪いな…。俺が持つからお前は見ててくれキュレア」
「…わかりました。ではお二人にお任せしますね」
俺は肩を竦めて頷く。途中、俺の名前を言い淀んだ男に助け船を出した所でルナさんに凄い剣幕で睨まれたが…まあ、それは置いておこう。
俺たちはやっとの事で森から細い街道に出るとふと街の方からくる風に乗って声が聴こえた。
「? 何か聴こえませんでしたか…?」
「え?あたしは何も…」
「俺もだな」
俺は彼らに訪ねるが二人は首を振る。
俺は獣人である。聴覚は彼らよりも秀でている。
?…聞き間違い…か?だけど、何か悲鳴のような声が………───っ悲鳴!?
「っ!しまった!そういうことですか!!」
「え?キュレアちゃん!?どうしたの??」
「ルナさん!私は街へ戻ります!後の事は任せてもいいですか!?」
「え?あ、うん」
俺の慌てように彼女はたじたじになりながらも頷く。
「ありがとうございます。ではまた後で。詳しい事はわかりませんが…。そちらも教会へ急いでください。まだ何かあるかもしれません」
「えっ?まだあるってそれは…??」
「わかりません。しかし、胸騒ぎが収まらないんです。教会はすみませんがルナさんに頼むしかありません…私も行きたいのですが…」
言いづらそうに唇を噛む俺は彼女から目を背ける。
「……なるほど…分かったわ。こちらはあたしに任せなさいっ。だから…ステラたち…街の皆は…任せたわよ」
「……ええ。また後で会いましょうっルナさん」
俺の思いを汲んでくれた彼女には感謝しかない。
俺たちは互いに頷き合って互いを信じ、互いのすべき事へと背を向けて走り出した。
どうでしたでしょうか?いつでもご感想お待ちしております。
前に感想をくれた方…ありがとうございました。凄く嬉しかったです。重ねて御礼を申し上げます。
そういえば今回は意外と文字数が多いんですよねー。何処かで切ろうかとも思ったんですが…切れなくて…。最初期くらいの多さではないでしょうか…。やはりバトルパートを書くのは楽しいです。難しいですけど…。拙いですけど…。もっと語彙力が欲しい…。
あーいつもごちゃごちゃと書くせいで長くなっちゃうんですよね…すみません。
今回も読んでくれてありがとうございました!まだまだ寒いので風邪に気を付けてくださいな!では、また次回もよろしくお願いいたします!