031 - 降魔を討つ者 -
とりゃー二連投稿!!
「では、ルナさん。貴女は魔術の精度の良さが自慢といってましたよね?」
「え?ええ、そうよ。正しくは精度と魔力量だけどね」
ルナさんはふふんっと得意気に胸を張り俺の言葉を正す。何処からそんな自信が来るのかは分からないが今はその自信が頼もしくもある。
俺は口に手を当て考え出した戦略を彼女に伝える。戦略と言ってもそこまで難しいものでもないのだが。
「ルナさんにはその魔術で降魔から弱点を抉り出してもらいたいのです」
「えっ抉り出す!?」
「はい。降魔には基本的に魔法や魔術は効きません。しかし、降魔を構成している魔力を霧散させる事は出来るのです。それを使います」
降魔は歪んだ魔力で出来た存在である。心臓である降天球は魔法魔術では破壊することが出来ないが魔力で出来た身体は散らすことができるのだ。
と言っても魔力は霧散させるだけで結局は寄り集まって元の形に戻ってしまうらしいのだが…まあそれは今はいいだろう。
「狙う場所は降魔の胸骨です。あれの胸に牙のようなものが集まり網目になっている箇所があります。それを吹き飛ばして欲しいのです」
「もしかして…その中に弱点がある?」
「イエスです。弱点を覆っている牙は強度があると推測出来るのでかなり強力な魔術が必要になってくると思います。私一人ではどうしようかと思っていましたが…魔術に長けているルナさんなら問題ないですよね?」
俺は意地悪くにっこりと微笑みながら彼女に問い掛ける。
「うぐっ。…えっええ!任せなさいっ。あたしが必ずやってやるわ」
「頼もしいお答えありがとうございます。ルナさんなら大丈夫ですよ。信じています」
少し詰まりながらも彼女はしっかりと言い切ってくれる。そんな彼女に俺は微笑みながら激励を贈った。
「だけど…。そんなに精度の高い魔術だと流石に時間がかかってしまうわよ。上手く破壊できたとしてもキュレアちゃんとも連携を取らないと意味がないでしょうし…そこら辺はちょっと自信がないわね…」
「大丈夫です。時間稼ぎは私がしますし、連携も私が合わせますから問題はないです。それぐらいは私に任せてください。ルナさんは魔術にのみ意識しておいてくれればいいです。貴女は私が必ず守りますので」
先ほどの自信は何処へやら自信なさげに言う彼女に今度は俺がはっきりと“心配ない”と告げる。それに彼女は一瞬きょとんとするがすぐにいつもの勝ち気な表情に戻った。
「そうね…。ええっ…やってやろうじゃないっ。良く分からない不気味な化物だけどキュレアちゃんとなら怖くないわねっ」
「ふふっ。その意気です────流石に時間を掛けすぎましたか」
一瞬で雰囲気が変わった俺に彼女はついていけず疑問符を浮かべる。
────キィィィィィィィィィィッッッ!!!!!!!!────
突然、奇声を上げて飛んでくる黒い影。いの一番に気づいた俺はそれをものの見事に回し蹴りで跳ね返しあらぬ方向へと飛んで行く。
「なっ!?なになにっっ!!?何よもうっ!!」
「何だ今のは!!??」
彼女は驚き飛んでいった方へと視線を移し、大男は訳がわからず視線をさまよわせている。
「見つかってしまいましたね。動かないかと思っていましたが…流石に考えが甘かったようです」
俺はさっと自身の右袖から一枚の紙を取り出す。
「ルナさんにこれを渡しておきます。持っておいてください」
「え…これって。もしかして術符!?キュレアちゃん何でこんなものを!?巫女じゃないって───」
彼女はそのお札を受け取り驚愕の表情を見せる。驚かれるのは分かっていたが…用心はやはりしておいた方がいいよね。
俺は彼女の言葉に何も言わず申し訳なさそうな表情で口に人差し指を当てる仕草をする。それを見た彼女は「はぁー」と一つ盛大なため息をついた後、納得したように頷いた。
「分かったわよ。今は聞かないわ。キュレアちゃんが只者ではないとは思っていたけど…今はそれで納得しておいてあげる」
「すみません…」
「だけど…。キュレアちゃんが何者かはまあこの際いいわ。いつか話せるときが来たら言いなさいよね。待ってるから」
「……分かりました」
「うん、よしっ。ならさっさとあれを片付けましょうか!気を付けなさいよキュレアちゃんっ」
「それはお互い様ですよ。…では、いってきます」
俺は彼女に微笑むとばっと身を翻し、化物の方へと駆け出した。
◆◆◆
「…………」
ここはギルドマスターの執務室。ここの主たる彼女、ルシエラ・ディオーネは窓の外を眺め沈黙を保っていた。
「失礼します」
コンコンとノックの音が聞こえ、一泊おいてからドアが開く音がする。
ルシエラは入ってきた人物に声をかけた。
「どう?大体は準備出来たかしら?」
「はい、大方準備は整いました。…ですが急だった為、呼べた人数は多くはありません…」
「まあそれは仕方ないわね。こちらがどうにかする他ないか…」
ルシエラその特徴的な蒼い髪を払いのけ、顎に手を当て考える素振りを見せる。
「所でルナちゃんとキュレアちゃんは見つかった?」
「いえ…まだです…。ルナさんは教会に行っていると聞きましたがキュレアさんは何も…商店街に行くとは言っていたのですが捜しても見つからなく…」
「そ…。まあ彼女なら心配ないでしょう…。本当はいてほしかったところなんだけどね…。で?あの後の報告はどうなってるのかしら」
ルシエラは椅子に腰掛け置いていた珈琲に口をつける。
「今のところは報告はありません。ですが…脅威の魔力に当てられ魔獣たちが活発化しているようです」
「魔獣の活発化か…。…何の冗談かと思ったけど…もし本当に“黒い脅威”が出現したとなれば…、この街は…壊滅するかもしれないわ」
彼女は目を細め声のトーンを一層低くして物騒な言葉を呟く。机越しに立っていた兎の女性、セーラ・アルタイルはそんな彼女に何も言わずその沈黙で同意を示した。
二人はその脅威を知っていた。壊滅という言葉は何の比喩でもなく本当にそのままの意味だと。
一度…目の前で…本当に壊滅させられた町を見た彼女たちはその重大性を理解していた。
「……とにかく、わたしはここを離れられない。外のことは貴女に任せたわよセーラ」
「はい。承知しました」
そう言うとセーラは一礼してから踵を返し部屋を出ていく。
そうして一人になった部屋でルシエラはまた窓の外に目を向ける。
「もう…やらせはしないわ」
彼女の決意の言葉は小さく。誰の耳にも届かずに消えていった。
どうでしたでしょうか…?よかったらご感想よろしくお願いいたします。いつでも待ってますよ!w
そう言えば新しい物語を書き出したのでそれの宣伝を…。
『レベマで駆け抜ける異世界転生!!』
というものなんですが…簡単に説明するとゲームに酷似した世界でネカマプレイヤーの主人公が世界を救うお話です。…多分…恐らく…そうなるかと…。
この物語が好みな方は気に入るかと思います!自分の性癖さらけ出しまくってます!うわーっ恥ずかしいっw
ご興味があればよろしくお願いします!挨拶が遅れましたが…今回もここまで読んでくれてありがとうございました!今年もどうかキュレアたちをよろしくお願いいたします。では、また次回!