028 -カノンの教会-
いつでもこんにちは!真理雪でございます!お久しぶりですね!
生きていたのか!と思われる方もいらっしゃるでしょうが…生きてました!はい!申し訳ありませんっ(汗)
子供たちが騒がしい食堂の中、この教会を管理し切り盛りしているシスターに勧められた席に座り、俺は物珍しそうに辺りを見回した。
食堂と言ってもそれほど大きくはなく小さくはない程度。その中に大きめのテーブルが2つ置かれ、子供たちがわいわいと席を取り合いながら食事が運ばれてくるのを待っていた。と言ってもシスター一人だけでは流石にこの人数分の食事を運ぶのは厳しいらしく、年齢が高い子達は率先して手伝いにいっているようだった。
「この人数を一人で管理しているんですか…」
と俺はつい言葉に出してしまう。
それに答えたのは隣で子供たちの相手をしていたルナさんだった。
「あの人は何と言うか…とにかく凄い人だからね…。もともとここは廃墟同然の教会だったらしいわよ?今はそんなところ見る影もないけどね」
「マジですか…」
俺はルナさんの言葉にただただ驚くばかり。世の中には凄い人もいるもんだな…歴史に残る人たちはやっぱり…これぐらい違うものなのかもしれないね…。
「そこまで驚くこともございませんよ?ここがここまで復興したのは街の皆様のお陰ですからね」
ルナさんと話していると横から声がかかる。声をした方へ顔を向けると件の彼女は相変わらずの微笑みをたたえこちらへ歩み寄るところだった。
「皇国から配属された時は本当に大変でございました…ですが、この街の村長たちによくしてもらいどうにかこうにかここまで復興できたのです」
彼女は頬に手を当てその時のことを思い出したのか彼女らしからぬ困った顔をする。しかしそれも一瞬。すぐにいつもの微笑みに戻り、口を開く。
「それよりもわたくしとしたことが…自己紹介がまだでしたね♪こほんっ…。わたくしはマリナ・カニス・テレス。見ての通りしがない教会のシスターです。よろしくお願いいたしますね?」
「あ。はい。えーと…私はキュレアです。その…こちらこそよろしく…お願いします」
にっこりと微笑みながら自己紹介する彼女に対してたじたじになりながらもどうにか返す俺。その様子が可笑しかったのか横に座るルナさんが肩を震わして笑っていた。
「む、笑わないでくださいルナさん」
「ふふっごめんごめん…。まあ、この人と初めて話すとそうなるわよね。分かるわよ~?その気持ち。あたしもそうだったからね。何だか気圧されるのよね~シスターの笑顔が…なんだか…えーとその────」
ルナさんは半笑いで俺に謝罪をし、自身の体験談を話すが途中から居たたまれなくなったのか視線をずらしながら顔を背けてゆく。
「はい~?どういうことでございましょう?ルナさん~♪」
楽しそうな声色で質問するシスター。しかし、何かどす黒いオーラのようなものが見えた。
「目が笑ってないわよ!?」
ひぃぃっ!?とルナさんが一瞬で謝るのを見て、俺はこの人には逆らわないようにしようと思った。
「ま、それはそれとしまして。ルナさん?少し手伝って貰ってもいいでしょうか?また調子が悪くなってしまったようでして…」
「え……ああ。また?何日か前にも見たわよ?」
「はい。そうなのですが…」
「仕方ないわね…」
シスターことマリナさんは申し訳なさそうにルナさんに言う。それにルナさんは肩をすくめ仕方なさそうに椅子から立ち上がった。
「? どうしたんですか?」
話についていけてなかった俺は首をかしげ、立ち上がったルナさんを下から見上げるようにして見つめる。
「うぐっ…。破壊力抜群…」
「え…?あの…ルナさん??」
ばっと口に手を添え身体ごと視線を避けるルナさんに俺は困惑する。
「べっ…別に何でもないわよ!何でも!悪いけどちょっとシスターと厨房の方に行ってくるわ。子供たちのこと頼むわね」
「あ、はい…?わかりました」
彼女は顔を隠すように直接見ずにマリナさんを伴って厨房に消えていった。
「……なんだったの…?」
俺は彼女らが入っていった扉を見ながら首をかしげるしかできなかった。
(じ───────っ)
「ん?」
と俺は視線を感じ、後方に視線を向ける。そこには数人の子供たちその無垢な瞳でこちらを見つめていた。
「えっと…。どうしたの?」
俺はなるべく怖くならないように笑顔で彼らに声をかける。
彼らは少しの間考えるように仲間と視線を合わせていたが意を決したように一人の女の子が口を開く。
「あの…。尻尾…」
「へ?尻尾…?」
「触らして貰ってもいいですか!」
「えええっ!!??」
俺は少女の言葉に驚き、咄嗟に席を立って尻尾を守るように正面を向く。
「いやいやいやっ。ダメよ…ダメです!その…珍しいのは分かるけど…尻尾はやめてね…」
俺は笑顔をひきつらせながらも彼らに努めて平静を装いながら言う。
俺の尻尾は何故か凄く敏感なのだ。自身で触れても反応してしまうほど…。あのアホ神はすぐ馴れるよ!って笑顔で言っていたが結局、この今まで馴れずじまいだった…。そもそも元々なかったものに馴れろって言うのが可笑しいのだ。今は身体を洗うとき以外はなるべく触れないようにしていた。
「そっそうですか…」
しゅんっと彼らは残念そうに言う。
「ごめんね…。私の尻尾はちょっと敏感でね。触れられると驚いちゃうの。分かってね?」
そういうと彼らは分かってくれたようで口々に肯定の意を示す。俺はそれに笑顔でありがとうとお礼を口にした。
しかし、そう問屋が卸さないのが子供のいいところでもあり悪いところだ。
目の前の彼らは分かってくれたがそれはこの子たちだからだ。子供たちはまだたくさんいる。そしてその子供が一人───
「ぴゃうっっ!?!?!?」
俺はその場で奇声をあげ、言葉通りに飛び跳ねる。
「わーー!ふかふかだぁー」
「ホントだホントだー!」
「ボクもさわる~」
「ちょっ!?やっやめてっ」
俺の制止の声も聞かずに子供たちはわらわらと群がってくる。
「あっ…そこはっ…もっもうやめてーーー!?」
結局、解放されたのはルナさんたちが用事を済ませ彼女たちが止めるまで続いたのだった。