021 - 言えぬ喪失感 -
お久しぶりです…丁度二ヶ月…音沙汰なく申し訳ありませんでした…。いや、もうね時間が無さすぎ…あ、言い訳は入りませんねすみません…。ホントこのスローペースをどうにかしたい…。
ゴホンッ言い訳はこれくらいにして…今回も短めですが楽しんでくれたら嬉しいです!では、どうぞ!
世界に生まれ落ちた一つの命。神でも人でも魔獣でもそれは同じだ。私にだってそれは当てはまる。私はこの世界で産まれ生き、成長してきた。しかし、それはこの世界の神である私だらかこそ言えることだ。魂の在り方とかよく分からないし、考え方の問題だと言われればそれまでだが…。自分はいつもこう考えてしまうのだ。『俺』は何者なのだろかと─────
「……キュ……キュレアさん。キュレアさんっ聞こえていますか?」
はっと俺は辺りを見渡す。そこはカノンの街のメインストリートから少し外れた路地裏で、俺の回りには心配そうにしている四人の視線があった。セーラさんにステラさん、それにルナさんにギンさんが俺を見つめていた。
「あっいえ…ええっと…すみません。少し考え事をしていて…」
「そうですか?どこか具合が悪いとかでは…」
セーラさんは念を押すように聞いてくるが俺は何でもないと再度首を振る。そこまでいってからやっとセーラさんは納得したよに分かりましたと頷いた。
「それで…えーと、何の話してましたっけ…」
「ああ、やはり聞こえていませんでしたか…。では、もう一度説明しますね」
セーラさんは少し嘆息しながらもしっかりと説明してくれる。
彼女によるとカノンの街には冒険者や商人など旅人向けの宿が多くある。一昔前までは小さな村程度しかなかったこの街は今では来る旅人にもたらされた恩恵により賑わい、そこいらの街に劣らないほどに発展を遂げた。その発展により比例して増えたものの一つが旅人向けの宿である。その多くの宿の中で彼女たちがオススメというほどの宿と言うのが────
「羽兎…ですか?」
「はい、羽兎亭です」
俺はその言葉に影響を受け、時折ピョコピョコ動く目の前の彼女の白く長い耳を見つめる。
「兎…ですね」
「いや、私は関係ないのですが…」
「あ、すみません…つい…」
彼女はゴホンッと仕切り直すように咳払いしてから再度口を開く。
「羽兎亭と言うのは私達が今宿泊している基本冒険者向けの旅亭のことです。少し古いですが、朝食付でリーズナブルな価格なのでお薦めです」
彼女の言葉に俺はなるほど、と相槌をうつ。
「それでいいと思います」
「悩まないのですね。着いてから決めても大丈夫ですよ?」
「いえ、別に凝った宿屋を探しているわけでもありませんので…セーラさんたちが推すぐらいですから間違いないでしょう」
「そう…ですか。分かりました。それでは案内します。行きましょうか」
そう言って彼女はこちらですと一言口にしてから案内するように手招きする。
今俺たちは色々あった冒険者ギルドを後にし、彼女ら───セーラさん達に宿屋に案内してもらっている所だった。
ーーー
そこは確かに古い木造の建物で少し暗い印象を与える換わりに風情があり年代物であることが伺えるものだった。
「ここが羽兎亭ですか」
俺はその宿を見て言葉を紡ぐ。
「はい、そうです。見た目は古そうに見えますが中は普通ですよ。ここは元々冒険者だった方が結婚を期に始めたもので、今はもう三代目らしいです」
俺はセーラさんの話を聞きながら彼女らについて中へと入っていく。確かに予め言われていた通り内側の内装はしっかりとしていて、表側の雰囲気はない。
しかし、余り流行っていないのかエントランスから入ってすぐそこにある併設されている酒場には人気が少なく寂しい。
俺は首を傾げるが、彼女らはそれにお構い無くずんずんと奥へと入ってゆきカウンターに置いてあるベルを鳴らす。
「はいはーい!少し待っておくれ!すぐいくよ!」
奥からハキハキとした女性の声が飛んでくる。少し待っているとカウンターに出てくる女性が見えた。
「はいはい。待たせて悪かったね…ってあら、あんたたち帰ってきてたのかい!怪我とかしてないかい?」
「はい、大丈夫です。ご心配お掛けしました」
「そうかい。ならよかったよ。あんたたちも元気そうだね」
その少し白髪混じりの女性はその気が強そうな性格とは裏腹に心底安心したように笑みを作りステラさんたちにも言葉をかける。
「ところで、この可愛らしい娘はどうしたんだい?あんたたちのパーティにこんな娘いなかったはずだよ」
そして、彼女は俺に目を向け首を傾げながらセーラさんに聞く。
「はいそうですね。こちらはキュレアさんと言います。偶然、依頼先で会いカノンの街を目指していると聞いたのでここまで一緒に連れてきた次第です」
「へぇ…依頼先でねぇ」
「キュレアさん。こちらはここのオーナーであるナズナさんです。ご主人と二人でここを経営してるのですが…」
そう言うとセーラさんはチラッとナズナさんの方を見る。
「ん?ああ、すまないね。アイツは今手が離せなくてね。料理のことになると他のことはてんでしないんだからホント困ったもんだよ」
彼女はやれやれと両手を上げ嘆息する。
「はぁ…そんなんですか。えーと、セーラさんが紹介してくれましたが、キュレアと言います。よろしくお願いします」
「はは、小さいのに礼儀がいいんだねぇ。ああ、よろしくキュレア。ところでここに来たってことは泊まりかい?それとも食事かい?」
「あ、はい。宿泊でお願いします」
俺がそう返すと、はいよと言って何か名簿の様なものをだし、それに何かを書きながら言葉を紡ぐ。
「一泊300ルピーだけど…もしかしてあんたも冒険者かい?」
「はい、そうです。これがギルドカードです」
俺は用意していたギルドカードを彼女に見せるようにして差し出す。
「ふむ…。へぇ、見かけによらないもんだねぇ。ああ、もう直していいよ」
チラッと見た後、彼女はつい漏らしてしまったらしい呟きを隠そうともせず名簿に書き足しながら言う。
「なら、冒険者用の値段にしておくよ。二日以上泊まってくれるならもう少し安くできるけど、どうするね?」
「二日以上ですか…」
そこで俺は考える。別にお金はないわけではない。しかし、路銀は必要でやはり使うなら必要最低限にしたいと言う思考が頭を過る。貧乏臭いとか言われそうだがそれが性分なのだから仕方ない。家が家だったのだ、いつの間にかチマチマと貯めチマチマと使うようになってしまっていたのだ。
「別にそこまで気負うことはないさ。一日だけになっても一日だけの値段で払ってもらうことになるだけさね。冒険者なんて定住するやつらの方が珍しいんだから」
そう言うと彼女は名簿を置き、どうするさね?と再度尋ねてくる。
「分かりました。では、それでお願いします」
「あいわかった。ほら、これが部屋の鍵だよ。っとそういえば一人部屋でよかったかい?この子たちと一緒にもできるよ?」
ナズナさんは目線だけで俺の隣にいたステラさんたちを指し尋ねてくる。
「それいいわねっ。キュレアちゃん一緒に寝ましょ!あたしのベッドで!」
「やめておきます」
俺はルナさんの提案に即座に答えた。ルナさんが目に見えて落ち込むが、また昨日のように抱き枕にされては敵わない。苦しいのもあるけど、こんな美少女に抱きつかれながら寝れるわけがないだろう。凄く寝苦しかった…。
「ははは…仕方ないよね。わたしも少し残念だけど…ルナちゃん寝相悪いし」
「あたしのせいなの!?」
ステラさんが苦笑をもらしながら言い、ルナさんが納得いかないと言う風に言い訳をしている。それをナズナさんが馴れたような表情でスルーしながら俺に向かって言ってくる。
「それじゃあ、渡したそれを使いな。部屋は二階の205番だよ。ちょうどこの子たちの隣の部屋だね」
「分かりました。あの…お金はどうすれば?」
「ああ、それは後払いでいいよ。何日まで泊まるか決めてないんだろう?出ていくときに払ってくれさえすれば何だっていいさ」
「すっすみません…ありがとうございます」
俺がお礼を言うと彼女はしっしっと手を振る仕草をし、早く部屋を見てきなと続ける。
「話は纏まったようですね。では、私たちも部屋に戻りましょうか」
「はーい。分かりました」
「腹減ったな…」
「あんたはいつもそれね。この時間になったら」
「うるせー」
ガヤガヤと彼女たちは二階へと上がる階段に向かい登って行く。そして、それを見ながら俺は一歩遅めに後について行く。
────貴女は何者なの?
その言葉が何故か頭から離れない。いつも付きまとう違和感と喪失感、そしてそれに伴う焦燥感。
俺はあの目の前にある人達とは違う。似てはいるが異なる存在だ。それなら…それならば、俺は何だと言うのだろう────
いろいろあった長い一日。日がどんどんと落ちていく中、俺の心中ではもどかしさだけが募っていた。
今回でやっと一日が経過しましたね。おっそ!遅すぎるよ!と思われてるかと思います。自分も思います。はい。
次回は登場人物紹介をしようかと思っております。まあ、思ってるだけなのでどうするかはその時にならないと分からないのですが…随分前よりも増えてしまったので、ここらで纏めたものを出そうかと…。
どうにか投稿ペースを早めていきたいと思いつつ、今回もありがとうございました!次回も見てくれると嬉しいです!では、また!