020 - 巫女の神託 -
あけましておめでとうございます!!(ドンドンパフパフ)はい、いつも通り遅くなった真理雪です。三ヶ日もいつの間にか過ぎ去り、仕事も始まり、すっごく波に乗り遅れた気がしなくもないですが。今年もどうぞよろしくお願いいたします!前は休止したりしていたのであまり二回目の年越しのようには思えないのですが…いつの間にかこんなにも月日がたっていたのですね…前の年は仕事に追われ何も出来なかったのですが…今年は楽しいと思えるような年にしたいです。皆様も変わらず良い年でありますように願っております。
では!前座はこのくらいにして物語のほうにいきましょうか!それでは、どうぞ!
「巫女の神託?」
俺はその聞き慣れない言葉を反芻する。
目の前の蒼い髪の女性。ルシエラ・ディオーネはそうよ、と言うないなや口を開く。
「狐の里は知ってるわよね?そこにいる巫女…あちらでは神子と言われる狐族の長たる人物が神から受け取った情報?…まあ、そんな感じの神のお告げの様なものを巫女の神託とわたし達は呼んでいるのよ」
「はぁ…なるほど…」
俺は彼女の説明に相槌を打ちつつ、考えを巡らす。
「もしかして、その神託と言うものに私が出てきたんですか?」
俺は彼女に疑問を投げ掛ける。
果たして、彼女の答えはどっちともつかずの返答だった。
「出てきたとも言えるし出てきてないとも言えるわね」
「???」
俺はその答えに怪訝な表情をし、尻尾をパタパタと動かす。
「まあまあ落ち着きなさいな。急いては事を仕損じるわよ?」
「貴女はマイペース過ぎだと思いますが…」
「セーラは真面目すぎなのよ」
ニヤリと口角を吊り上げながらルシエラさんは自身の隣に座るもう一人の女性、セーラ・アルタイルにことなしげに言う。
それを聞き彼女は盛大にため息をつき、彼女の態度に諦めたようにお茶を入れ直してきます、と言って席を立つ。
「あ、セーラわたしコーヒーにしておいて!ブラックでね!」
「分かりました…キュレアさんはどうされますか?」
「あ、いえ。私は大丈夫です」
俺は彼女の言葉を断ると分かりました、と自分のコップと彼女のコップを持ちこの部屋から出て行く。
「さて、えーと…アレはどこにいったかなーと?」
「? アレ…ですか?」
「そ、アレよ。ま、見たら分かるわよ。見たら」
と彼女は言いながらその場を立ち、自分の机の中をゴソゴソと漁っている。そしてあったあった、と彼女は何か手紙のような書簡を手に戻ってきた。
「はいこれ。見てみなさいな」
と気軽に彼女は俺にそれを渡す。
「これは…?」
俺は彼女に聞き返すが彼女は見たらわかると言う風にそれを顎で指し読むように催促する。
俺は仕方なしにそれを開け中の手紙を確認してみる。そこには────
────王都アルテミスに告げる。今宵、我ら敬愛する神からの神託がなされた。それをここに記す。
『勇者の助けとなる救世主、カノンの地に降り立つ。心せよ、世界は消滅の危機に瀕している』─────
俺はこれを二度読み直し、そして彼女を驚愕の表情で見つめる。
「こっこれは!?」
「王都に送られてきた巫女からの手紙ね。当然、写しだけど」
なっなんだこれ…俺は何も聞かされてないぞ…どう言うことだ…?
俺は彼女の言葉を聞き、少しの間沈黙する。その間頭の中に色々な考えが浮かぶが今一つ納得できそうなものは出てこない。
「これは…もしや王都への奇襲の前から既にあったんですか…?」
「…そうねぇ。あったわよ。そもそも、その神託があったからこそわたし達はカノンの街をここまで整えていられたんだからね」
「整える…。なるほど…あの試験はその為のものだったんですね。通りで…強力過ぎると思いました…」
「まあ、ミゼルには詳しいことはちゃんと言ってなかったんだけど…。楽しかったでしょ?」
「楽しかった…というか何と言うか…。ですが、やはりあの騒ぎは始めからそうなるように仕向けていたんですね」
「ああ、バギーの件?そうね、ミゼルからはどんな子かは聞いてなかったんだけど貴女が一番異彩を放ってたからねー。それに、試験に受かったとはいえ肝心なわたしが見れてなかったしいい機会だと思ってね」
彼女はニコニコしながらそう言う。
「あそこまで盛大になるとは思わなかったけど」
「……まあ、今さらどうのこうの言うつもりもありませんが…。ですが、これで私を気にする意味が分かりました」
俺はその手紙を封筒に戻し、彼女に渡す。
「ですが、私が救世主なのかと問われれば否と答えるしかないでしょうね」
「ふむ…一応、理由を聞いていいかしら?」
彼女はそのスラッとした足を組み直し、俺にその蒼い瞳を向ける。
「そもそも、それにはカノンの地に降り立つとは書いていますが肝心の名前や特徴が書いていませんし、奇襲の前からあったと言うならその救世主とやらはもう王都にいても可笑しくありません。今さら出てきたところで奇襲の後ではどうにもならないではないですか」
その神…誰かは分からないが…もしその神が奇襲の前にそれが分かっていたと言うならそれに間に合わすようにするはず…もし私ならそうするだろうと思う。それなら、その救世主とやらはもう既にここにはおらず王都にいる筈なのだ。
「なるほど…確かにそう言う考え方もあるわね。わたしもそう考えなかったこともなかったわ」
ルシエラさんは右手を口に当て考えるように言った。そしてでもね、と彼女は続ける。
「その神様の考えは分からないけど…わたしはこう考えてるのよ。その神託は魔王の奇襲とか侵略のことではなく、言葉そのまま世界の消滅の事を言ってるのではないかってね」
「…………」
「まあ、そう考えているのはわたし含め極少数なんだけどね…。今の重鎮さん達は魔王の侵略こそが世界の消滅に繋がると思ってるみたい。確かにそこには名前も特徴も書いてないから救世主様というのがどんな人か…そもそも人なのかすら分からないわ。けど…ね」
そこまで言うと彼女は言葉を切る。彼女は俺の言葉を待っているのか、その蒼い瞳を俺に向け、それ以上何も言わず沈黙を保っている。
「……そうですね。貴女の考えは分からなくもないです。確かにそう考えれば私が怪しくなってくるのは確かですが…。世界の消滅と言われても私は何も出来ませんし、そんな力も持ち合わせてはいません。精々、そこら辺の弱い魔獣を倒すぐらいです。とても、世界を救うとか勇者を助けるとかそんなこと出来るはずないじゃないですか」
俺はそう言うと席を立ち、その話は終わりだと言うようにその場から背を向ける。俺は何だかこれ以上話せばこの女性に全てを見透かされそうで…少し不安、いや怖くなりその場から逃げる様に離れる。?……怖い…?その理由も分からずに。
「あらら、もう少し話したかったんだけど…」
「私にはこれ以上話すことはありませんので」
「そっか…。ま、仕方ないわね。話せることだけでいいと言ったのはこちらだし。今日のところはここらで打ちきりにしましょうか」
「その言い方だとまだあるように聞こえますが…」
「そう思うなら、そうなるかも知れないわねー?」
俺は相変わらず何を考えているか分からないニコニコと不適な笑みを湛えた彼女。ギルドマスターたるルシエラさんを見、ため息をついてから失礼します、と一礼してからその部屋を後にした。
ーーー
「あまり聞かなかったようですけど、大丈夫だったのですか?」
狐の少女が出ていった部屋。その後に入れ違いの様に入ってきた兎の女性が疑問を口にする。
「ええ、あれで良かったのよ。大体のことは確信できたから。それに、あれ以上聞いてもわたし達にはどうにもならないでしょうしね」
「……そうですか…?あの『黒い脅威』のこと…聞かなくて良かったのですか?」
「ええ。まあ、聞こうかとも思ったんだけどね…答えてくれそうもなかったしね。それに今さら聞いても多分…どうしようもないわよ。知ってるとも限らないしね。ここはいいところで終わっておく方がいいのよ」
「……そうですか。分かりました、ルシエラさんがそう言うなら私は何も言いません」
「そ、ありがと。ま、後はこの後にどう動くか…なのよね…」
邪魔になった蒼い髪を彼女はひょいっと払い持ってきてもらったコーヒーに口をつける。
「そういえば、報告があったのよね?どうする?先に用を済ましてきてからでもいいわよ。わたしはここで仕事してるから」
彼女は思い出したように隣に立つ女性に言う。
「そうですね…。分かりました。少し遅くなりますが先にあの子を送ってきます。宿を紹介すると言っているので」
「ええ。分かったわ。宿っていつもの?」
「はい、そうです。ここでは一番整っているところでしょう?」
「ま、そうね。いいんじゃない?」
彼女は軽く流すと自分のコーヒーを再度口にする。
「では、失礼します」
それを見てから兎族の女性は一礼し、踵を返す。
「あ、そうだ。最後にもう一つ。セーラはあの時…どう思った?」
唐突に後ろから彼女が言う。
その質問でセーラはやはりか…、と確信し少し沈黙してから答える。
「…………。はぁ…貴女は本当に嫌な人ですね。やはりあれはわざと…ですか…」
「ごめんごめん。ちょっとこう言う仕事柄やっぱり用心に越したことはないかなーと思ってね」
いやーと彼女は頭をかきながら片手で手のひらを立て謝ってくる。やはりこう言うところは妹とそっくりですね、いや逆ですか、と心のなかだけで呟きながらセーラは言う。
「そうですね。色々溜め込んでいる…と言うよりは…あれは何と言うか…自分のことを分かっていなさそうでしたね…。…あの娘と一緒ですか…」
あの時…ルシエラが小さな彼女に何者か尋ねた時。普通なら何かしら反応があるはずの言葉に彼女は────無表情だった。
只只、無表情。怪訝な顔も不安な顔も嫌そうな顔も驚いた顔も何一つせず、あの瞬間、あの時だけ彼女は無表情だったのだ。
「そっか…貴女もそう言う結論なのね。ホント貴女は厄介な娘ばっかり連れてくるわね?類は友を呼ぶってやつかしら」
「いや、私ではないと思うのですが…ルシエラさんでしょう。私は連れてこられた側です」
「いやいや冗談。そんなわけないじゃない。こんないい加減な女性、なかなかいないわよ?」
「それは小さい頃から知っていますよ」
「あ、否定してくれないのね…」
その言葉にダメージを受けたのかズーンとルシエラはソファにしなだれかかっている。がセーラはそれをスルーし、では行きますね、と呟き部屋を出る。後ろからあの娘のことよろしくね、と言う言葉を聞きながら。
ーーー
「伝達魔方陣展開。位置は王都の王宮。暗号はVictoria。発動」
閑散とした室内。執務机に座った蒼い髪の女性が静かに呟く。それは、自身の手のひらに浮かんだ光を歪ませ魔力が既に描かれていた魔方陣の形へと変化して行く。
『─────暗号認証──Victoria───魔力回路正常───信号伝達───』
描かれた魔方陣から人ではない何かの音声が聞こえ、一瞬途絶えたかと思うとそこから今度はしっかりとした声が聞こえた。
『久しぶりね、ルシエラ。元気だった?』
「ええ、そりゃあもう元気だったわよ?貴女に連絡いれることを忘れるぐらいね。そちらはどう、アリア?」
彼女は久しい友の変わらぬ声を聞き、少し安心したように笑みを作りながら話す。
『こちらはこの一週間てんてこ舞だったわよ勇者達の入学手続きとかその他もろもろ…何故戦いにしか役に立たない私にそんな仕事を持ってくるんだか…姫様も困ったものね』
「へぇ…なるほど。そちらに行ってどうなることかと思ったけど、よくやっているじゃない?流石、お人好しね」
『はいはい、誉め言葉として受け取っておくわよ。で?どうしたのよ。もしかしてまた親友の声が聞きたくなったーとか言わないわよね?』
「ま、それもあるわね」
ルシエラは言葉を切り、魔方陣の先にいるであろう女性がそれも?、と疑問を投げ掛けてくるのを聞き取る。それから、少し沈黙してから彼女はこう口にした。
「見つけたわよ。鍵をね」
はい、ころころと場面が変わるのは許してください…。どうも癖のようでどうしようか悩み中です…アドバイスなどありましたら是非お願いいたします。
今回も少し少なめですが…少しは物語が動いたのではないでしょうかね…主人公のこととかその他もろもろ…。そういえば王都の名前を始めて出した気がします。
いつも通りで申し訳ないです。今年も変わらずちょこちょこと更新して行きますのでどうか今年も変わらず見てやってください。今回も本当にありがとうございました。次回もよろしくお願いします!