017 - 一波乱 2 -
いつでもこんにちは!真理雪です!
二週間ぶりですね…いや、それ以上でしょうか…。遅くて申し訳ないです…。
と、言うことでさっさといってしまいましょう!今回も少し少な目になっているのですが…少しでも楽しんでくれれば嬉しいです!では、どうぞ!
飛んできたものを切り落とす。蒼い刃を閃かせ長い薙刀をクルクルと手足のように扱う様は舞を踊る踊り子のようで…美しく舞う蒼い髪が日の光を跳ね返し、幻想的な光景を作り出していた。
彼女の蒼色の瞳が敵を捉える。
「───隼歩」
敵は素早い。しかし、彼女は一言で魔術を発動させる。
森の中を難なく動き回る敵。彼女は静かにそれに標準を定め、そして────跳んだ。
「ギギイッ!?」
敵の悲鳴のような驚きと困惑が入り交じった声。
交錯は一瞬。しかし、その瞬く間に勝負は片がついていた。
ずれる敵の太い首筋…驚きの表情を張り付けたままその頭はずれてゆき、そして重量感がある二つの音が同時に響いた。
「ふうっ…これで最後ね~あ~疲れた」
彼女は持っていた薙刀を背中に挿し、疲れたように肩を回す。
「もう、歳かしらね~…ってまだまだわたしはピチピチよ!」
ビシッと誰もいない空間に突っ込みを入れる彼女。
「……………虚しい……やっぱり誰かつれてくるべきだったわね…。あ~でも、この頃あの案件がらみが多いから仕方ないかな~…」
ぽんぽんと蒼い軽装の鎧を叩き適当に砂や木葉を落としながら彼女は街の方角へと歩きだす。
とそこへ光るものが舞い降りてきた。
「ピュイピュイッ」
「ん?あら、ヘカテーじゃない。どうかした?」
それは小さな小鳥。しかし、それは普通ではなかった。ヘカテーと呼ばれたそれは────透明であった。
「え?ミゼルから連絡?わたし何かしたかしら……?」
彼女は手を口に当てうーん?と頭の上にクエスチョンマークを出す。
ヘカテーと言われるそれはただの小鳥ではない。そもそも、小鳥のような形をしているだけで鳥でも動物でもないのだ。
「ピュイピュイ!」
「ええっ!?そもそも貴女は怒られることしかしてないですって!?そんなことないわよ!てか、何で怒られるの前提にしてるのよ!」
何故か森の中で喧嘩しだす蒼い美女と透明な何か…。もしここに第三者がいれば呆気に囚われるのは必至であろう。
「ピュイピュイピュイピュイ!」
「え?そんなことどうでもいいから早く出ろって?…えー気が乗らないわね…」
はぁ…と盛大なため息をつきながら彼女は右の手のひらを広げ言う。。
「ハイハイ、出ればいいんでしょ。出れば」
「ピュイッ」
小鳥は一言返事するように鳴くと、その形が崩れ…無形物のような透明な液体のようになり、それが円形の形を取る。一言で説明するなら円形の鏡。小鳥は一瞬にして、鏡のようなモノに変化したのだ。
『相変わらず出るのが遅いな…ルシエラ・ディオーネ』
「ハローミゼル。相変わらずの渋面ねー元気だった?」
『お前にはこれが元気そうに見えるのか?』
「いつもどうりに見えるわね、うん」
『…………』
その鏡から発された声は紛れもなくミゼル・ラケルタ───カノンの街の副ギルドマスターであった。
「で、珍しいじゃない?貴方がこの回線で発信してくるの。そんなにわたしが恋しかったのかなー?」
『──ツ───ツ───ツ────』
「……………切られた!?」
彼女が冗談を言った瞬間、回線が切られてしまった。
回線が切れたことに気づいた彼女は慌ててかけ直す。
「ちょっと!何で切るのよ!」
『お前がうざかったからだな』
「ちょっと!?上司にハッキリ言い過ぎじゃないかしら!?もう少しオブラートに包みなさい!」
『切ってもいいか?』
「直球過ぎて理由が分からないわよ!」
『ブッーツ──ツ──ツ────』
「ちょっと!?」
この後また二、三回ほどこれが続いたのであった。
ーーー
「で?本当に何なのよ。貴方のことだから用事もなしにこれを使うことなんてしないでしょ」
『ああ、そうだな…。用事と言うか…何と言えばいいか…』
「はい?何なのよ?」
彼女はこの魔術(鏡)の先にいるであろう渋面顔のイケメンに訝しみながら訊く。
「珍しいわね。貴方が言い渋るなんて。そんなに貴方の予測に外れたことが起きたのかしら?」
『…………』
彼は彼女の問いかけに沈黙し、少ししてから答える。
『ああ、そうだ。面倒だから簡単に言うぞ』
「ええどうぞ?」
『あの試験に受かった奴が出た。私は武術の専門ではないから何とも言えないが…奴は突破できない筈の試験に受かったのだ。巫女の予言か神託かは分からないが、これで一つ目は当たったことになるな』
彼は彼女にそう伝える。
「…………本当に勝ったの…?アレに…」
彼女はもう一度そう訊くと『そうだ』と短く簡潔に返答が返ってきた。
「そう……。まさか本当に当たるとはね…。分かったわ。すぐにそちらに戻るから、その子は今は何処に?」
『分からんな。だが、小娘にはギルドカードを発行させている。普通ならばギルドで待っていると思うが』
「そう…ありがとう助かったわ。それじゃ、また後で会いましょ」
彼女はそう言うと通信を切り、一段落したように長い髪を払ってから大きく深呼吸する。
「…一つ目があたったか…じゃあ二つ目も可能性が高くなったってことよね……。……まさか本当に…」
───世界の終焉が近づいているってこと?───
「…………。勇者召喚が成功したときは冗談半分に思ってたんだけど…ここまで来ては信じるしかない…わね…」
彼女は目を細め、何事かを考える。
そして、また二回目の大きな溜め息をつきながら彼女は歩み出す。カノンの街の方角へと。
「ヘカテーあれだしてあれ」
『!』
彼女が鏡だったモノに言うとそれはまたもや形を変化させ次は袋のようなものになる。
「よいしょっと」
彼女はそれに手を突っ込み何かを勢いよく取り出して、一息にそれを羽織る。それは灰の色をした長いコート。戦闘中は邪魔なので極力ヘカテーの能力を使用ししまっているのだ。
「さて、どうにかしましょうか。…もう、賽は投げられているわ…今はまず最善の手を打たないとね」
目指すは自身の大切な街。
蒼い薙刀を持ち、美しい美貌を持った灰色のコートに蒼い鎧の彼女……
カノンの街のギルドマスター、ルシエラ・ディオーネはその方角へと勢い良く駆け出した。
◆◆◆
「わたしが審判をしてあげるから貴女たちは存分にやりなさいな。多少怪我をしてもわたしが直してあげるからね」
そう言うのは目の前の蒼い美しい女性。その蒼く長い髪を払いながら彼女は俺たちに言う。
「そりゃいい!このガキに立場と言うものを分からせねぇといかねぇからなぁ~?」
隣の大男は彼女の提案にすぐさま乗っかり、俺にニヤニヤとした嫌な視線を送ってくる。
「当然、負けたらペナルティを付けても構わないよな?」
「は!?貴方何を言い出すのですか!?」
負けると微塵も思ってないらしい男は自分からも提案を持ち掛ける。彼の思いもよらない考えにギリギリで耐えていたセーラさんが驚きながらも言葉を発する。
「それはそうだろうがセーラさんよ?俺たちは冒険者なんだよ。文字どうり命をかけて働いているんだ。負けたら何かしらペナルティがあるのは当然のことだろうが?」
「くっそれは……」
男の返答にセーラさんは唇を噛みながら耐える。確かに男の言っていることは間違いじゃない。お金を貰うために彼らは命を使い生活しているのだ。冒険者なんて皆そんなものなのだろう。
「だからってこんな小さな子に…」
それでも彼女は諦めず男に言い寄ろうとするしかし、俺はそれを引き留めた。
「大丈夫ですよ。セーラさん」
「キュレアさん…ですが…」
「そんなに心配しなくても大丈夫ですよ。負ける気は全くありませんからそれとも、私がこの人に負けると思いますか?」
「それは………」
「ほほーう。言うじゃねえかガキが。何処にそんな自信があるんだと思うぜ。ククク…」
見下ろすように言ってくる男を俺はスルーしながら蒼髪の女性に視線を向ける。
「それでいいのね?」
「はい」
俺は一も二もなく頷く。
「それで私から提案なんですが。そのペナルティ…負けた側が勝った方の言うことを何でも一つきくと言うのはどうでしょう?」
俺は相手側から先に提案されないようにいの一番に発案する。
負けた側が勝った方の言うことをきく…これならばアイツらも問題なく乗ってくる筈だ。それにこれならば────
俺はチラッと彼女らの方を盗み見る。
ステラさんは心配そうな顔で俺を見、ルナさんは心配と苛立ちと不安が入り交じったような表情でその綺麗な顔を歪ませ、ギンさんは男どもをその狼族特有の鋭利な視線で睨み付けている。そして、セーラさんにいたっては……長い髪で目を隠すように下を向き、苦虫を噛み潰さんと言うようにきつく歯を食い縛っていた。
……俺には仲間という者たちがいない。霊峰にはアホ神たちがいたが…ここにはいないし、そもそも前世の記憶を持って生まれた私は初めから疎外感を感じていた。自分だけがこの世界で異質で異物のような…不安と心配と寂しさ…それがどうしても自分自身を覆い尽くし、そんなことはないと分かっていながらも、その一人ぼっちな気持ちを消すことは出来なかった………。
だけど…違ったんだ。
ステラさんたちに出会って…会話して…笑い合って…。
こんな気持ち…久しく忘れていた……これが仲間なんだって…この人たちが教えて…いや、思い出させてくれたんだ…。
だから、俺は助けたい…恩返しとかそんなことじゃなく、ただ単純に『助けたい』。そう思ったんだ。だから───
「どうですか?そこの……大男さん」
「バギーだ!!はっ、いいだろう!俺様の強さ…見せてやろうじゃねえか!」
「それじゃ、決まりね。皆!外に出るわよ!!」
彼女の一喝で野次馬のように群がっていた冒険者たちは久しぶりの娯楽に歓声をあげ我先にと外へと飛び出す。
「キュレアちゃん…」
それを感慨深く見ていた俺にステラさんが不安そうにその名を呼ぶ。
「大丈夫ですよ、ステラさん。私は負けませんから」
俺は彼女の不安を拭うためありったけの笑顔でそう言ったのだった。
どうでしたでしょうか?何でも感想お待ちしております。
と、言うことで今回はちょっとフラグをたてようかと思いまして上手くたちましたかね?…………大丈夫だろうか……。
まっまあ、それはさておき今回はやっとこさ登場させれた人物がいます。当然ながらルシエラですね。名前は出てくるのに出てこなかった人です。因みに皆さんはわかっていると思いますが…一応言っておくとヘカテーは彼女の使い魔です。ちゃんとは書かなかったですけどね。それにこの人は…ゴホンゴホン…これ以上は今は止めておきましょうかネタバレになりかねないので。
今回もありがとうございました!10月も後一週間?ぐらいで終わりですね!本当に早いものです…。昼はまだ、いいですが…朝や夜は冷えて寒いですし、風邪を引かないよう気を付けてくださいね!では、今回はここまで!次回もよろしくお願いいたします!