◇◇◇ -(異)世界の平穏-
いつでもこんにちは。真理雪です。
今回は過去の話になります。主人公が死ぬ前ですね。言い回しが難しい…です。拙い文章ですが少しでも皆さんの楽しみになってくれれば幸いです。
では、どうぞ。
耳鳴りがするほどの雑音の中、明々と容赦なく照りつける太陽の光が地面を焦がす。
夏…セミがなき温度が著しく上がるこの季節は社会人にはなかなかに厳しい季節だろうが俺たち学生、特に高校生には待ちに待った季節と言っても過言ではないはずだ。まあ、その前にある試練があるんだがそれはさておき。夏休みと言う言葉は今のいや、いつの時代の学生だって楽しみの一つであったに違いない。
「それにしてもあっついなぁ…もう少し遠慮してくれよ太陽…」
「あはは…確かに暑いね~もう汗でびしょびしょだよ~」
俺の隣にいる艶やかな黒髪を腰まで伸ばした美少女が学生服の裾をあげ健康的な太股があらわになる。彼女は猫の可愛らしいうちわでパタパタと風をおくっていた。
確かに暑いのか汗ばんだ彼女のその白い額にはその綺麗な黒髪が張り付いており、男の俺がいるにも関わらず美少女が無防備な姿をさらしている様はなかなかに来るものがある…がいかせんそうは問屋は下ろさず、この俺の隣で歩いている黒髪の美少女は俺の妹であった。
「って何見てるの~?私の顔に何かついてるかな?」
とぱっちりとした青みがかった瞳を俺に向け可愛く首をかしげる妹。こいつ誰に対してもこんなに無防備なのだろうか…。まさかそんなことないとは───言えなかったわ、うん…。
うだうだと悩ましい表情をしながら無意味なことを考え、彼女の言葉に何でもないよと適当に相槌を打った俺は視線を前に向ける。そこには白い校舎に校門、我が学舎たる学園が見えておりほっと息を吐く。
やっと学校が見えてきた…もうすぐこの容赦なく照りつける日光から解放されるな…。
そう思いながら歩みを少し早めた俺は目的地を目指す。今日も何もなく普通の、いつも通りの日常が始まろうとしていた。
ーーー
「なあ、彼方。夏休みに海にでもいかないか?」
思いがけないその言葉に俺はは?と頓狂な声を出す。
「海!?行きたい行きたい!行こうよ3人で!」
それに答えたのは俺ではなく目の前の席を占領していた妹、遥だった。
「叫ばなくても聞こえてるから少し音量を下げろ遥…。まあ、でも海かぁ…この頃行ってないよなぁ…」
「うん。もう俺ら高校生なんだしさ?この3人でもいいし、勿論いろいろ誘ってみてもいいしね。いい思い出になると思うんだ。どうだい?彼方」
俺の言葉を聞きむすっとする黒髪の美少女を見、困ったように笑いながら目の前のイケメン…じゃなかった俺の悪友もとい親友である霧崎勇二が俺に向け言ってくる。
「うーん…まあ、俺は別に構わないんだけど…勇二は行けるのか?薙刀部だったろ?」
「大丈夫…とはまあ、いかないけど…試合の後にちょうど休みが少しだけあるんだ。本当は自主練とかした方がいいのかもしれないけど…俺もやっぱり遊びたいしね。練習漬けになるのはちょっと…」
ははは…と申し訳なさそうに笑いながら勇二はそう言ってくる。
本当にイケメンがやると何でも絵になるよなうん。こんな何でもない仕草でも…ってまあ今さらだったな…。
「まあ、確かに練習漬けは嫌なもんだよな…俺も中学の時の剣道部はなかなかに嫌なもんだったよ。今は帰宅部だけどさ」
「私も帰宅部だよー」
「わざわざ言わなくても分かってるよ。まあ、気分転換もいいかもしれないしな。その試合後の休みってたぶんあの部長が作ってくれたんだろ?ってことはそうさせるためにしたのかもな」
「うん。あの部長は優しすぎるからね…怒ったら凄く怖いけど」
と苦笑しながら言うイケメンくん。
「なら問題は俺のバイトか…つっても別に大丈夫だと思うぞ。早めに言ってくれさえしたらな」
「それじゃあ!」
遥が俺の机に身を乗り出し言う。ふわっと女の子特有の香りがするほど近くなる。
てか、近いんだが…言っても聞かないんだろうけど…。
「ああ、まあまだまだ決めないといけないことばかりだけど…一応、行けそうだな」
「うん。まだ時間はあるし、追々決めていこう」
「そうだな」
なんだかいきなり決まった予定だが…楽しそうだしまあ、いいか…さて、どうしますかね~。
俺はバイトばかりになるだろうと思っていた夏休みに予想外な楽しみができ、その時の自分は分かっていなかったが少し鬱だった気分が軽くなっていたのはたぶん、これのお陰だろうと今になって思うのだった。
ーーー
やっと…………み…け……────────
「はい?何か言ったか?遥」
俺は首をかしげながら隣で歩く遥に声をかける。
??とクエスチョンマークを出しながら艶やかな黒髪を耳に引っかけ、彼女は俺と同じ仕草をする。
「え?何も言ってないけど…どうかしたの?お兄ちゃん?」
「いや……気のせい…か…?」
「ん?どうかした?彼方」
俺の言葉にジュースを飲んでいた勇二が不思議そうに見やる。
「いや、まあ気のせいだったわ、うん。気にするな」
「そう?」
「うん?」
俺のなげやりな言葉に二人が訝しみながらも返答する。
うーん?何か声が聞こえた気がするけど…まあ、民家が回りにあるしな。そこから聞こえただけかもしれないし、普通に空耳だったのかもしれないしな。ま、大丈夫だろ。
「で、勇二。今日は部活大丈夫だったのか?」
俺は話を変え、気になっていたことを聞く。
「うん?ああ、大丈夫だよ。そろそろテスト前だからね。早く帰って勉強しろーだってさ」
「ああ…そっそうか…」
「む、もしやお兄ちゃんテストのこと忘れてたね?」
じとーっと半眼で見てくる遥からの視線を俺は顔を背けることで対応する。
「いや、わっ忘れてた訳じゃないぞ…思い出す時間がなかっただけで…」
「それは、忘れてたってことだよねお兄ちゃん…」
も~と腰に手をあて嘆息しながら俺の妹が言う。美少女な遥がやると可愛さが倍増するな…とかそんな関係ないことを考えながら、悪い…と俺は呟いた。
「まあ、仕方ないんじゃないかな?バイトが忙しいんだよね?」
「えーと……そんなところかな…」
「それじゃ、3人で勉強会しないかい?俺ももう一度一通り復習しないといけないし、分からないところがあるなら教えてあげられるよ?遥ちゃんもいるしね」
勇二はそう提案する。それに、即座に食いつく人物が一人…。
「いいねそれ!やろうよ♪お兄ちゃん♪私も分からないところとか聞きたいしね~♪」
「え…遥…お前が分からないところとかあったのか…?いつも上位争いしてるお前が…?珍しい…」
「いや、私にも分からないところとか一つや二つ普通にあるからね!」
プンスカ!と言う擬音が合っているような感じに怒りだす遥。
勉強が本分な高校生にとっても、どうしても分からない所や解けない問題があるのは仕方がないことである。だがしかし…俺の妹…遥だったり、目の前のイケメンくんこと勇二は例外だと今まで付き合ってきた俺はそう思わずに入られない。いや、だってね…コイツらのスペックの高さは本当にどうにかなってますよ?テストの点なんかいつも学年で上位五位に食い込んでるし、遥なんていつも一位争いしてますよ。勇二はめんどくさがってしてないけど…それでも上位五位の中にいるし…運動すれば何でもできる…遥なんて帰宅部なのによく助っ人で運動部に助けを求められてるぞ。いい加減何処かに入ればいいのにな。しかも、コイツらはイケメン&美少女ときた、これでモテない筈がない…まあ、もう俺は諦めましたけどね…あと、コイツらといたら何だか悲しくなってくるんだよねうん。もう慣れたけどね!って何長々と語ってんだ俺…。
「ああ、分かった分かったよ…俺が悪かった」
「もう…私だって普通の高校生なんだからね…」
俺の謝罪に遥はそう言ってため息をつく。
「まあまあ、その辺で…ね?あ、そうだちょっとコンビニによってもいいかな?買っとかないといけないものがあったんだったよ」
「ん?それじゃ、いつものスーパーに行かないか?今日はちょうど買い出しの日なんだ」
「そうなのか。なら手伝うよ人手は多いに越したことはないでしょ?」
「え?いいのか?」
俺の問いに勇二は当然のようにうんと頷きながら、その場で歩みを止める。
「なら、先に道路を渡っておいた方がいいね」
「あ、青になったよ~渡ろ渡ろ~」
その信号は待っていたかのように青になり、盲目の人用の音楽が鳴り出す。
「悪いな、今日は溜まってて多かったんだよ」
「ありがとね!勇二くん」
「いや、まだ着いてもないのにお礼なんて…まあ、友達が苦労してるなら助けてあげるのは当然のことだよ。気にしないで」
本当にこいつはいいやつだな。こいつに出会うまでイケメンなんて爆発しろ!とか思ってたんだよな俺…。俺もイケメンだったらよかったのになぁ…。まあ、仕方ないけども…。
俺はそんなことを考えながら横を見る。
そこには大型のトラック。少しスピードが出過ぎている気がするそれは真っ直ぐ信号へと向かってくる。それに何故だか嫌な予感がした。普通なら赤信号で止まるであろうそれを見て寒気がしたのだ。悪寒とでも言えばいいのだろうか?それは俺の背筋を駆け抜け自身の足を早める要因になった。
「ほらっお前ら早く行けよっ信号赤になっちまうだろ」
「わわっ押さないでよ~お兄ちゃん」
「はは、まあ早くいって済まそうか。勉強もあるし、ね?彼方?」
「なぜ俺に言う…」
他愛も無い話をしながら俺らは横断歩道を渡りきる。自身の考えは杞憂に終わったらしく、それに安心した俺はほっと胸を撫で下ろした。後は、道に沿って歩くだけだ。少しかかるが危険はないだろうと思えた。
俺はふとトラックはどうなったのかと視線を道路に向ける。その時だった。
キキィィィィィッッッッ────────────!!!!
鉄と鉄が擦れる耳障りな音。それが、俺たちのすぐ近くで駆け巡った。
「え?」
「何だ!?」
「っ!」
二人はその音に気づき、顔をそちらに向ける。
そして、俺。美凪彼方だけは先に行動に出ていた。視線を変えたその先。トラックが何故か不自然に間近でこちらへ進路を変えたのを見たからである。
ガードレールが弾き飛ばされ鉄と鉄とが削り合う音が鳴り響くなか俺は二人を咄嗟に突き飛ばした。
流石に二人を一人で助けるのには無理があった。俺の頭の中ではそれが最善の選択だと思い行動に移したのだ。
確認なんてしてられなかった。どうしても助けたいと考えた結果の行動だった。しかし、突き飛ばした俺はトラックの進路上に残ったまま身動きが取れない。それに気付いた遥は俺に手を伸ばす、何かを叫びながら。しかしそれも耳をつんざく音で掻き消され何を言っているのか分からない。俺はそれに手を伸ばした。しかし───それは遅すぎた。横から殴り付けるような衝撃。それが一瞬で身体中を駆け巡り俺の意識を刈り取る。最後に見た光景は───涙を浮かべ叫んでいる妹の悲痛な表情だった。
どっどうでしたでしょうか?
一応、まだプロローグ的な感じなので短め?なのかな?これくらいかな~とは思ってるんですが…皆さんはどれぐらいがちょうどよいのでしょうか?
できたらでいいので感想よろしくお願いします。アドバイスとかなら泣いて喜びます。
次回も大体書けているのでそれほどかからないかと…では、また。
12/7に少し書き換えました。言い回しや誤字を修正しただけなのでストーリーは変わっていません。一度読んでくれた人は読み直さなくても大丈夫です。
6/19 弓道部→薙刀部に修正しました。