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窓口係は世界最強  作者: キミマロ
第一章 窓口係のお仕事
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第五話 採用試験

一般採用が行われるのがギルド本部であるのに対して、特種採用は小さなホテルを会場としていた。

 ロマニウムの駅前から、通りを何本か奥に入ったところにある、ひっそりとした建物である。

 隠れ家的な宿と言えば、分かりやすいだろうか。

 そのこじんまりとした入り口で、係員らしき男に推薦状を見せると、すぐに中へと入れてもらえた。

 以外にも広いエントランスは、俺が来たころにはすでに受験者と思しき人で埋まっていた。

 驚いたことに、いずれも少女ばかりである。

 男の姿は全くと言っていいほどない。


「ん……? おかしいな?」


 どうしてこんなに、女の子が多いんだろう。

 場所を間違えてしまったんだろうか。

 慌てて先ほどの男に事情を聴きに行くと、怪訝な顔をされつつも場所はここであっていると言われた。

 一応安心するが、やはりどうにも落ち着かない。

 女子高にでも迷い込んでしまったようだ。

 何とも言えないアウェーな感じを誤魔化すように、ソファへと腰を下ろす。

 そうしていると、奥から泣きはらした顔をした少女が姿を現す。


「ありゃ、ヒューヌ村の聖女様じゃないか……?」


 泣いている少女は、いつか新聞で見たことのある顔だった。

 ヒューヌ村の聖女。

 神秘の力を持つなどと言われていて、俺の住んでいた地方ではちょっとした有名人である。

 そんな彼女が、何でまたこんなところに。

 そっくりさんか何かだろうか。

 思わず声を掛けようとして、やめた。

 赤っぽい眼をした彼女は、とても話しかけられるような雰囲気ではなかったから。


「いったい、何なんだ?」


 居心地の悪さを感じつつも、更に待つ。

 そうして一時間ほどが過ぎた頃。

 エントランスからほとんど人がいなくなったところで、ようやく俺の出番がやってきた。

 さっさとここから解放されるべく、待ってましたとばかりにソファから立ち上がる。

 だが、名前を呼んだ男は元気のいい俺の様子に眉をひそめた。

 その態度に、思わずむっとしてしまう。


「……なんですか?」

「いや。試験を前にしてずいぶん元気だなと」


 ずいぶんと、刺のある言い方である。

 まるで、俺が受からないとでもいいたいかのようだった。

 すぐさま反論したくなるが、グッとこらえる。

 こんなところで問題を起こしても、つまらない。


 こうして部屋に入ると、そこには妙な機械が据え付けられていた。

 パイプの入り組んだ円筒形の物体に、水晶が埋め込まれている。

 かなりの大きさと純度を持つ水晶だ。

 水晶を扱うローバーさんのところに居たから分かるが、買えば軽く数千万ジュエルはするだろう。

 庶民の年収、十年分ぐらいだ。

 明らかに高価で独特なフォルムをした機械に、思わず圧倒される。


「かけたまえ」


 機械の奥から、低い声が響いてきた。

 見れば、初老の紳士然とした男性が居た。

 立派な椅子に腰かけて、胸に燦然とギルドの紋章を輝かせている。

 人懐っこい目つきをしているが、かなり高位の職員のようだ。

 俺は姿勢を改めると、部屋の端の椅子に腰を下ろす。


「うーむ、オウカが推薦したのが男だとは聞いていたが……本当だったのだね」

「男だと何か不都合でも?」

「いや、そういうわけではないのだがね。さて、早速試験を始めよう。その水晶に触れてくれたまえ」

「これにですか?」

「そうだ、早くしたまえ」


 いったい、何を調べるというのだろう。

 不審に思いつつも、立ち上がり、水晶へと手を伸ばす。

 指先が触れた途端、吸い付くような感触があった。

 水だ。

 水の塊に触っているようである。

 心地よい感触に、思わず手に力がこもる。

 すると体の奥底から、何かが抜けていくような脱力感があった。


「うぬ?」


 水晶の色が、みるみる変わっていく。

 青から緑、緑から黄色、黄色から赤……。

 やがて水晶全体が燃え上がるように、激しい光を帯び始めた。

 その輝きの強さに、とっさに目を閉じる。

 それでもなお、まぶたを通して強烈な光が伝わってきた。


「い、いかんッ!! 手を離すのだッ!!」

「は、はいッ!」


 慌てて手を離す。

 光は急速に消え失せ、三秒もすればすっかりとおさまった。

 水晶は元のように、青の輝きを湛えている。

 残されたのは、先ほどまでとは打って変わって呆然とした顔をした面接官だけだった。

 彼は手元に置かれたメーターのような計器を見ると、頬を引きつらせる。


「……信じられん。オウカの三倍近い数字ではないか!」

「良くわからないんですけど……何か、凄いみたいですね?」

「凄いなんてものではないッ!! ギルド始まって以来のことだよ!」

「は、はあ……。それじゃあ、採用ですか?」

「もちろんだ!」


 そういうと、面接官の男性は立ち上がり、俺に握手を求めてきた。

 差し出された手を軽く握ると、彼は満面の笑みでぶんぶんと手を振ってくる。

 ちょっと信じられないぐらいのハイテンションさだ。


「頑張ってくれたまえよ! 君の活躍に、ギルドの将来はかかっているかもしれない!」

「はい! が、頑張らせていただきますッ!!」


 状況はいまいちよく理解できなかったが、お偉いさんに期待されて悪い気はしない。

 俺はビシッと敬礼を決めると、大きな声で宣言をする。

 それを聞いた面接官は、ますます笑みを深める。


「私の名前はダニスだ。普段はベリル支部を任されている。もし何かあれば、頼ってくれたまえ」

「わかりました」

「もっとも、君たちにはマスター直々にいろいろとご指図があるだろうがね」

「マスターですか? あの、大司教とギルドマスターを兼任なされている?」

「そうだ」


 ギルドのマスター、リューネ・ゼペル。

 ギルドの運営母体である教会の大司教も務める彼女は、大陸有数の実力者だ。

 そのような人物が直々に指図してくれるなんて、幹部コース一直線だ。

 さすがは、特種採用。

 ごく限られた人間しか受けられないのは、伊達ではないようだ。


「明日の朝、本部を訪れたまえ。マスターから配属先などについての話があるだろう。十中八九決まっているがね」

「かしこまりました! 明日の朝、本部へ参ります!」


 こうして採用が決まった俺は、ギルド本部を訪れることになったのであった――。


※大幅改稿済

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