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窓口係は世界最強  作者: キミマロ
第一章 窓口係のお仕事
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第二十四話 フレースヴェルグ号

 ロマニウムは二千年以上の歴史を誇る古都である。

 かつて大陸全土を支配した空前絶後の大帝国、ロマニウムの首都として建造されたこの都市は、帝国崩壊以降も宗教都市として長きに渡って繁栄を極めてきた。

 旧市街地には今なお帝国時代の石造建築が多数残り、地下にはかつての水道設備がそのまま放置されているともされる。


 この都市の歴史と繁栄を象徴する建造物の一つが、大闘技場だ。

 時の皇帝が国の威信をかけて建設させたとされるこの大建築は、十万人収容と言う日本のスタジアム以上の規模を誇る。

 今なお崩れることなく悠然とたたずむその姿は、天国からでも見えると称されるほどだ。

 また、その真円の形から『帝国の出べそ』などとも呼ばれている。


「いつみても、すっごいですよねえ」

「ああ。ちょっと感動するよな」

「まったく、あんたたちはいつまでたっても田舎者ねえ。あたしなんて、もう慣れちゃったわ」


 リューネさんに連れられて、俺たちはなぜかこの大闘技場の前に来ていた。

 ギルド自慢のフレースヴェルグ号とやらを見せてもらうはずだったんだが……影も形もない。

 遥か古の巨大建築と、ごった返す観光客の姿だけが見える。


「マスター、そのフレース――」

「静かに。こっちや」


 俺の言葉を打ち切ると、リューネさんはクッと手招きをした。

 彼女はそのまま大闘技場の入口へと向かうと、チケットのもぎりをしている係員に黒の免罪符をちらりと見せる。

 男は慌てて敬礼をすると、すぐさま近くの『関係者以外立ち入り禁止』と書かれたドアを開いた。


「この奥や」

「はあ……こんなところに?」

「ホントにこの中?」

「ええから、はよう!」


 笑うリューネさんに促されて、戸惑いながらもドアの奥へと入る。

 四畳ほどの酷く殺風景な部屋が、そこにはあった。

 完全な行き止まりで、石組の壁だけが見える。

 リューネさんはその壁の一角に手をやると、指先に力を込めて押した。

 たちまち石組の一つが陥没し、何かのスイッチが入ったようなカチッという音が響く。


「うおッ!?」

「動き出した!」

「隠しエレベーターや。ま、驚くのはまだまだこれからやで」


 動揺する俺たちをよそに、平然とした口調で告げるリューネさん。

 こうしてガタゴトと一分ほど部屋が揺れたのち、壁の一角が耳障りな摩擦音とともに滑り落ちた。

 たちまち開ける視界。

 ゆっくりと部屋を出れば、俺たちの目の前に恐ろしく巨大な地下空間が姿を現す。


「こ、これが……!」

「嘘でしょ……!」

「い、いつの間にこんなものを!?」


 地下の薄明の中に浮かぶ、巨大な紡錘形の船体。

 視界の大半をどっしりと占めるそれは、長さが数百メートルはあるように見えた。

 高層ビルを横倒しにしたような、とてつもない質量。

 緩やかな弧を描く船体下部が、こちらにせり出してきたかのような圧迫感すら覚える。

 俺たち三人は、思わずその場で仰け反ってしまった。

 一方、リューネさんは驚く俺たちにいよいよ胸を張って誇らしげにする。


「ははは、どうや! これが我がギルドが誇る超快速飛行船フレースヴェルグッ!! 全長百八十メルト、速力驚異の毎時二百三十リーグ! さらに、土龍から抽出したアダマナイト合金のコーティングで実現した、圧倒的防御力ッ!! まさに最速最強の船や!!」

「おお……!! よ、よくわからないけど凄い……!」

「これさえあれば、たとえグラッグ山脈の頂上でもひとっ飛びやで! わはははッ!!」


 両手を腰に当て、背中を思いっきり反らせて笑うリューネさん。

 どこぞの悪徳貴族のような気配を出しているが、まあ実際凄い。

 まさか、この世界でこれだけのものを造ってしまうとは……ギルド驚異の技術力だ。

 何より、お金がかかっていそうだ。

 これだけのものとなると、軽く数百億ジュエルはかかっているに違いない。


 俺たちが呆然とフレースヴェルグの巨体を眺めていると、白衣の少女が近づいてきた。

 ミラさんである。

 彼女は作業員たちに指示を飛ばしながらも、リューネさんにぺこっと頭を下げる。


「お、ミラか。進捗状況はどうや?」

「順調。夕方には問題なく飛ばせる」

「さすがやな! そうなると、今夜中にはグラッグ山脈へ到着可能か」

「もちのろん。それで、グラッグに出現した悪魔らしき魔物だけど……どうやら土龍の一件ともかかわりがあるみたい」

「どういうことや?」

「これを見て」


 そういうと、懐から一枚の地図を取り出すミラ。

 等高線が年輪のように描かれたそれは、グラッグ山脈の地図のようだ。

 そのうねうねとした山の輪郭の一部に、バツ印が二つ記されている。

 両者の距離は近く、くっついてしまいそうなほどだ。


「今回、モリソンさんとロスフォンスさんが向かっていたのがこのポイント。そして、こちらが土龍の堀ったトンネルの出口です」

「これは、依頼書に乗ってたん?」

「はい。ギルドの保管室ですぐに見つかりました」

「近いなあ……。ひょっとすると、あの土龍は悪魔から逃げ出した可能性があるってことか」


 顎に手を押し当てると、唸り始めるリューネさん。

 眉間に深いしわが寄り、目つきが鋭くなる。


「龍っていうのはめちゃくちゃプライドの高い生き物や。ちょっとやそっとのことでは逃げ出したりせえへん。それが逃げたとなると……相手はかなりの大物ってことやな」

「うーん……厄介ね。オウカは呼び戻せないの?」

「無理や。オウカはオウカで、ベリルの悪魔の対応をしてもらっとる。いつ出るかわからん以上、離れるわけにはいかんのや」

「では、私たちだけで対応するしかないってことですね……。おお神よ、どうかご加護を……!」


 目を閉じて、熱心にお祈りを始めるヘレナ。

 俺は彼女の姿を横目で見ながら、この間の土龍を思い出す。

 あれほどの巨体と力を誇る生物が、なすすべもなく逃げ出すような悪魔。

 想像しただけでも、体が震えてきてしまう。

 土龍の時だってとっさに幽気に覚醒しなければヤバかったのだ。


「……まあ、とにかく私たちに出来るのは万全を尽くすことや。今日の仕事はもうええから、各自、仮眠を取るなどして体調を整えておくように!」

「了解!」


 揃って敬礼をすると、一旦その場から離れようとする俺たち三人。

 だがここで、不意に服の裾がクイッと引っ張られる。

 見れば、ミラが俺の顔を覗き込んでいた。


「ラルフには、出発前に聖遺物を持て貰わないと」

「なんですか、それ?」

「私たちが持っている武器」


 そういうと、ミラさんはどこからか愛用のボウガンを取り出した。

 白く輝くそれは、神聖な気配に満ちている。

 なるほど、戦いに赴くなら俺にも武器が必要というわけか。


「わかりました、行きましょう」

「ええ。男の幽気使いがどんな武器に選ばれるのか……楽しみ。観察のし甲斐がある」

「はは、ははは……。どうか、お手柔らかに」


 ミラの瞳から感じる、マッドな気配。

 それに怯えつつも、俺はミラと共に聖遺物を見に向かったのだった――。


秘密組織が秘密基地を持つのは、伝統だと思うんだ。

ついでに、秘密組織なのにやたら派手なメカを持っていることも……!

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