エンドレスカルチャーデイ
今晩は。お休みなさい。お早う御座います。今日は。
今回は私の欲望をテーマに書いてみました。
時:11月3日、月曜日(祝日)21時55分
場所:自室
「あー…明日なんて来なければいいのに。」
そう、僕は呟いた。
「明日ですか?」
「そう。明日。」
「では、貴方の明日、奪ってあげましょうか?」
「どなた?」
今さらながら何者かの存在に気付く。
「いやだなぁ…貴方が呼んだのに。」
「なんのことやらさっぱりです。」
新手の詐欺だろうか。突然部屋の中に現れるなんて。
「私、怪盗ムーンライトと申します。昨日、貴方が行われた儀式によって参上致しました。」
あー。確かやった気がする。満月の夜に魔法陣を書いて真ん中で祈るやつ…どうせ来ないだろうけど暇つぶしがてらにやった気がする。
「あー。昨日の。本当だったんですね。」
「本当ですよ。では話も早いですね。奪うモノは貴方の『明日』でよろしいでしょうか?」
「何を言っているのかさっぱり…」
僕が知っているのは召喚術だけで結局何をしてくれるやつが出てくるかは知らなかった。
「詳しくわからずにやったんですか?気を付けてくださいよ。たまにとんでもないことになりますから。さて、前置きはさておき、先程も申した通り私は怪盗です。ですから貴方のモノを一つだけ何でも奪うことができます。それで今回、ご所望なのは『明日』でよろしいですか?」
何でも?それにしても怪し過ぎる。少年の身長に金髪碧眼。格好は黒のシルクハットに黒のタキシード、ハットに巻いてある布みたいなのは鮮やかな黄色でタキシードの中に着ているシャツも黄色。日本では、まず職務質問ものだ。
「なんです?その人を疑うような目は。信じてもらう為、何かお試しで奪っても良いのですが面倒なので、取り敢えず信じてください。」
「投げやりな事を言うな。信じられるかよ。僕の明日を奪うなんて。」
「そうですか。では私帰ります。もう二度とそんな気軽に呼ばないでくださいね。」
「あっ!ちょっと待って!」
「…待ちましょう。」
出来るかわからないがやってみる価値はある。
「やっぱり僕の明日を奪ってくれない?」
「分かりました。」
怪盗はハットの中から蓋つきの赤い箱を取り出した。
「あ。貴方のお名前を教えていただいてよろしいですか?呪文に必要なので。」
名前か…ちょっと気恥ずかしいな…特にこの季節は。
「……柿谷 栗太。」
「いいですね。秋の味覚満載じゃないですか。それでは準備は宜しいですか?」
野郎…
「ゴク…」
怪盗は箱の蓋を取ってトントンと叩く。
「柿谷 栗太の明日よ。この時より我のモノとなれ。」
怪盗が呪文らしきものを唱えるとハットからするするとリボンが出てきて怪盗が閉じた蓋を蝶結びで結ぶ。
僕の身体には何も起きず果たして効果があったのかすら分からない。
「はい。これで貴方の明日を奪わせていただきました。それでは。」
怪盗がそう言うと突然後ろに扉が現れ怪盗はその中へ入っていった。扉は閉じるとポンと音と煙をたてて消えた。
なんだったんだ…
その夜、特に実感の湧かない僕は明日の準備をして寝た。
次の日になってしまった。目覚ましが鳴る。
リリリリリリリリ…ガチン!
僕はそれを乱暴にボタンを叩いて止める。
さて今の時間は…
「8時!?」
やばい。遅刻だ!今まで一応守ってきた皆勤記録が破られる!
「あら?どうしたの栗太。」
「どうしたじゃないよ!母さん!なんで7時に起こしてくれないの?!遅刻だよ遅刻!」
「あれー?今日は休日よー。」
何を言って…
「え?なんで父さんいるの?」
「今日は文化の日だからな。仕事はない。」
わかった。ドッキリだな。でも残念。いくら両親が言ったってテレビは正直だぞ!
早速テレビを見る。
「11月3日月曜日、今日は文化の日です。」
須磨さん…ジッピの須磨さんが…
え?じゃあつまり今日は…
「休日!」
時:11月3日、月曜日8時3分
場所:自宅のリビング
「なんだ?栗太。そんなに文化の日が嬉しいのか?」
「あぁ。父さん。とっても嬉しいよ!」
「そうか。そうか。良かったな。」
怪盗は嘘を付かなかったようだ。泥棒の癖に。
よし!俺は今日と言う日を存分に楽しむぞ!
僕はその日を一生忘れることはないだろう。友と全力で遊び、飽きるまで食べ、家族と楽しく語らった。そして寝る。
寝る前に思った。
「明日も月曜日だろうか」
と。
とどのつまり次の日も月曜日、文化の日だった。だからって来年の文化の日って訳でもないし、ましてや去年の文化の日になった訳でもない。
僕は何日も文化の日を楽しんだ。何日も何日も。そして僕は気付いたことがある。
それは
「他の人の言動が毎日同じ」
ということ。自分自身は好きなように行動発言できるが他の人に昨日の文化の日と同じことを聞くと昨日と同じ言葉が返される。
だから毎日違う友達と遊んで一日を過ごしていた。これは自ら行うことだから何とか楽しめている。
しかし辛いのは食事だ。言動が同じということは母が作る料理のメニューも同じということだ。自分は料理を作れないし冷蔵庫に入っているものから料理をするので食材を買ってきても来るはずのない明日に持ち越される…
僕はいい加減この生活に飽きてきた。
だからもう一度呼ぶことにした。怪盗を。
怪盗は儀式を行った明日にやってくる。だからもしかしたら怪盗は僕のところへ来ないのかもしれない。僕は月の明るい夜、公園で魔法陣を書いて祈った。
「怪盗ムーンライト様、来てください。」
本来は「怪盗ムーンライト様、私のモノを奪ってください。」なのだがこの場合、返してほしいのでこう祈った。大丈夫なのだろうかと後で不安になった。でも来なかったらまた次の日の月曜日にやれば良い。でも…
次の日の月曜日。もう何回目の文化の日だか忘れてしまった。僕は目覚ましではなく重みによって起こされた。
「重い…」
「あ!お早うございます。」
この声は怪盗のものだった。
「早くどいて。」
怪盗は僕のお腹を枕に横になっていた。
「あ、はいはい。」
怪盗は起き上がる。
「来てくれてありがとう。もしかたら来ないんじゃないかと思ってたよ。」
「それは心外ですね。呼ばれたら来ますよ。大体は。」
「大体なんだ。」
「それでご用件は?」
「僕の明日を返して欲しい。」
「明日を?」
「うん。だめなのか?」
「まぁ元々貴方のモノですから返しますよ。少々お待ちください。」
なんだ。よかった。代償として命を頂くとかそういう流れにならなくて。
怪盗はシルクハットの中から見覚えのある赤の箱を取り出してこれをトントン叩く。
「柿谷 栗太の明日よ。持ち主の元へ帰りたまえ。」
するとパンっと箱が破裂してしまった。
「はい。これで貴方は明日、明日を迎えることができるでしょうね。」
「本当か?」
「本当ですとも。私は怪盗であって泥棒ではありません。」
「何が違うんだ?」
「ふわぁ…私は帰って寝ます。睡魔が酷くて。」
「あぁ。わかった。じゃあな。」
「さよなら。柿谷さん。」
怪盗がそう言うと怪盗の後ろに扉が現れて怪盗はその中へ消えてった。扉は閉まると前回と同様、ポンっと音と煙をたてて消えた。
次の日、つまり火曜日。
柿谷は8時起きに慣れすぎて遅刻した。
まず先に注意書きを…
エンドレスカルチャーデイ≒永遠の文化の日ですが、英語が合っているか定かでは御座いません。申し訳ありません。m(_ _)m
英語ペラペーラに話せる様に、ドラ○もんの秘密道具「ほんやく○ンニャク」を誰か開発してほしいです。お願いします。
さて、この作品は文化の日に投稿したかったのですが思い付いたのが遅かったので…現在11月4日0時7分です。残念。
貴方様が楽しんでいただけたならば
作家冥利に尽きます。
追記:怪盗ムーンライトの登場は今回で二回目です。シリーズ設定をしましたので是非そちらの方も読んでみてください。
それでは私は寝ます。お休みなさい。
良い夢を。