『僕』から『君』へのメッセージ
『今にも壊れそうなほど人間は脆く、そして儚く美しい。僕には想像もつかないほどにね。だから人と人とは触れ合うには弱過ぎるよ。すぐに壊れてしまう。君のようにね。正直僕らはもう期待なんてしていないよ。だから、そんなに緊張する事無いのにな。もう制限時間なんて無いんだからさ。第一、終わる前に終わる奴が多過ぎるよ。そんなんでよくここに来ようなんて思うよな。考えが無さ過ぎるよ。』
指に引っ掛けた鍵をくるくると回しながら、長い白髪の少女は言った。
「はあ……そうですか。来たくて来た訳じゃないので、そのような考えは分かりません。」
短い黒髪を風になびかせながら、抑揚の無い無気力な声で、青年は言う。
『全く君は大した奴だよ。壊れることを気にも留めず、終わりに向かって走っていたものね。』
「早く死にたかっただけですよ。まあ最初はそうは思っていませんでしたがね。やはり心の何処かでそう思っていたのかも知れませんね。」
そう言うと青年は、自分の腹に刺さっていた剣を抜き、前に立つ少女に向けた。
『もう行く気かい?気が早いね君は。』
「もういい加減終わらせたいんですよ。面倒臭いし。」
その言葉を少女は笑いながらこう言った。
『面白いね君は。残念ながら僕が消えてもこの連鎖は終わらないよ。終わらないし終われない。僕が消えても僕が居る。美しいだろ?この世界は。』
「僕には酷く濁って見えますよ。さようなら。そして、おめでとう。」
青年は少女に剣を突き刺しながらそう言った。
『君も早くこっちに来れるといいね。君の子孫によろしく。』
そう言い残して、少女は消えていった。
「僕の子孫か。僕の代で終わらせたいね、こんな世界は間違ってるよ。」