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人間の助力

「はあ……」


ため息をつく俺の横で一ノ瀬はコーヒーを飲んでいる。

試しに頬をつねってみたが目は覚めなかった、今の状態が良くも悪くも、夢ではないことを理解するしかない。


「意外と美味しいわね」


人の入れたコーヒーに少々失礼ともとれる発言をする彼女が目に映る。


「そろそろ説明してくれないか、先の石像とか、一ノ瀬が取りだした剣のことか」


俺の話を聞いて飲みかけのコーヒーをテーブルに置いた。


「あなた同じクラスの一原和也よね、まずはお礼を言うは、ありがとう」


玄関から彼女を運ぶ以外に何かをした記憶はないのでお礼を言われると少し戸惑う。


「そっちは一ノ瀬千咲で合ってるよな?」


念のために聞いた。


「ええ、それで説明よね……」


頭を抑えて少しの間止まっていた。


「大丈夫か?」

「少しね……気にしないで。私、魔法使いなのよ……、あの石造のオオカミは私を捕まえるために放たれた追手、ってまあこんな事を言ってすぐに信じてくれる人はなかなかいないんだけどね」


確かに他人が聞いたら訳の分からないことかもしれないが俺は違う。


「俺は信じる」

「えっ?」


予想外の返しに再びコーヒーカップを取ろうとした彼女の手が途中で止まった。


「珍しいわね、それは和也が私の事好きだから?いつも学校で授業の時とかに私の事見てるでしょ」

「ち、違うよ確かに一ノ瀬のことは見てたけどそれは雰囲気が爺ちゃんと似てたから」

「お爺さん……?」


いけないことを言ってしまったのか、彼女の表情が薄っすら曇った。


「実は俺の爺ちゃんも魔法使いだったんだ。小さいころに幾つか魔法を見せてもらったよ、水の玉が空中に浮いたり、庭に在った木の枝が形を変えるものとか。だから俺は魔法使いってのは信じてるんだ」

「そうだったの——」

「でも爺ちゃんが死んでからまた魔法使いに会うなんて思わなかったよ」

「いつ亡くなったの?」

「俺が中学二年の時だった」

「そう……」

「そういえばさっき玄関会った時、その、一ノ瀬が覚えてるかは分からないけどお前の体が血まみれだったんだ。でも今はかすり傷をした後すら見当たらない、一体何があったんだ?」

「答えたら和也の持ってるその力、私に貸してくれる?」

「力……もしかしてあの石造の攻撃を防いだ光の板みたいなやつのことか?」

「そう、和也の精霊の力を」


精霊の力?それに関する記憶は考えたが無い。

彼女は俺の考えを察したように「もしかして知らなかったの?」と尋ねてきた。

俺は首を横に振った。

彼女はそんな事があるのか?と、言いたげな顔をしてから説明を始めた。


「精霊ってのは端的に言うと魔法の上位存在的な存在」

「上位的?」

「そう、精霊には四種類いて、水の民であるウィンディーネ、地の民であるノーム、火の民であるサラマンダ―、風の民であるシルフ、それぞれが基本的に魔法界——魔法使いが住む世界——に存在しているのよ」

「そんなのがどうして俺の家に?」

「精霊は魔法使いと契約することで進化を得られるの。だから精霊が強い魔法使いの傍に居ることはあっても、魔法が使えない者の傍に居ることも、まして人間界に精霊が居ること自体が普通じゃないの」

「じゃあなんで」

「可能性があるとすれば一つだけ、精霊がアナタと契約してることかしら」

「え、俺が精霊と契約?」

「そう、じゃないとおかしいわ、それにさっきから貴方の方から風属性の力が溢れ出てる」


言われて自分の体を見て見たが特に普段との変化は無い。どうやら視覚的には捉えられないらしい。


「それより本題は私が血だらけでアナタの家の玄関に居た理由だったわね。その前にコーヒーおかわり貰ってもいい?」

「あ、うん」

「私が狙われているのはこの体にある魔力が原因なの。一ノ瀬、私の家系は昔、魔法界で兵器を作る一族だった。でも百五十年くらい前の魔界戦争で各国と平和協定を結んでから戦争が亡くなって一族の繁栄は絶たれていった。戦争が無いって言うのはいい事なんだけどね」


新たなコーヒーを飲んで彼女は話を続けた。


「それから一族は前に比べて貧しくはなった、それでも静かに楽しく暮らしていた。事件が起きたのは四か月くらい前、魔法界の方の日本で突然国のお偉いさんが戦争をしだそうとしたの、でも今回は人間界と戦争しようってことになったらしい。理由はよく分からないわ、ただその計画で使う兵器が昔、一ノ瀬家が開発した物だったの」

「それでどう一ノ瀬がそう関わってくるんだ?ここまでだとお前とその兵器の関係は家系ぐらいしか見当たらないけど」

「私もそれだけならよかったんだけどね……こればっかりは御先祖様を恨みたくなるわ。一ノ瀬家の兵器にはいくつかのランクに分けられてるの、その中でも使用が制限されるくらい、かなりヤバイやつがある、それらは安全性のために一ノ瀬家の血を引く誰かが一定量の魔力を流し込まないと発動できない仕組みになってる。ここまで説明すればわかる?」


理解したと同時に、目の前の少女が自身の立場を理解したうえでの今の落ち着きようを保っていると思い背筋が震えた。


「つまり一ノ瀬は御先祖様が作ってしまった兵器を発動させないためにさっきの石像と戦ってるっていうのか?」

「そういうこと……どう、今の聞いて手伝ってくれる気になった?」


言うのは簡単だ〈手伝う〉そう口から音を発するだけ。

見かねられたわけではない、そう考えることにした。

彼女はコーヒーを飲み終えてただ「美味しかった、ありがとう」とだけ言って部屋をでて行く。



「……待って!」



気が付いた時には声が出ていた。


「俺も手伝う!」


それを聞いた彼女の顔、どこかが目立って変わったわけではない。ただ周りの張り詰めていた雰囲気が消えた。


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