第七話 やはり読みは甘かったようです
アンジェリーナが魔寄せの力を解除して振り向いたとき、ラシムール公爵子息は剣を抜いていた。
肩で息をして余裕のない顔はしていたけれど、きっちり業者と獲物の山を守り抜いたところはさすがだ。
瞳の色が紫に戻っていることを確認して、アンジェリーナはラシムール公爵子息に近づいた。
手を伸ばして、彼の頬についた赤紫色の傷に手を伸ばす。ジクジクとした膿んだ痛みが消え、魔法が使われたことに気がついたのだろう。ラシムール公爵子息は静かに瞳を伏せた。
「ありがとう、それからすまなかった」
「お役に立てたのであれば光栄なことです」
強気なところばかり目立つけれど、素直なところもあるのだな。
アンジェリーナは柔らかく笑って背を向けると、傷ついた兵士を介助するジルベルトの元へと走った。
そしてこの日の出来事を境にしてセザイア帝国の兵士達がアンジェリーナを見る目が変わったように思う。
無能で役立たずというのが作られた噂だと聞いてはいても、どこまでが本当なのか。
自分が逆の立場だったら半信半疑になるのも理解できる。警戒する気持ちがアンジェリーナに向けられた刺すような視線につながった。
そんな兵士達が疑似的に魔獣の大移動を体験し、どれだけ過酷なのかを思い知ることになった。さらに怪我のひどい者にはアンジェリーナ特製の霊薬が配られたのだ。赤紫色に変色した傷がたちどころに霊薬一本で元どおり。
ついでに後遺症に長く苦しむとされている咬傷は刻戻しの魔法でアンジェリーナが自ら治したのだから、彼らのアンジェリーナに対する評価と見る目が変わるのは当然だろう。
「まあ、それだけではないが」
「そうなのですか?」
「ラシムール公爵子息の私兵は一昨日、武器にアンジュの魔法を付与されて戦っているだろう。それで昨日は魔法なしだ。実際に戦って魔法の補助による攻撃力の違いを実感したはずだ」
特にカメは同じ種とは思えないくらい表皮が固いと感じたらしい。
「彼らは間違いなくラシムール公爵子息に報告しただろう。アンジュの魔法は攻撃でも使えると」
アンジェリーナの評価はさらに上方修正された。
そうかー、それでアンジェリーナを見る目がああなったわけか。
「ゴツゴツしたワンコが五匹、かまってもらいたくてこっちを見ている感じですね!」
「なんでだか腹立つな、シメるか」
「いやいや、一緒に戦った仲ですよね。生き物は大切にしましょう⁉︎」
どちらにしろ、評価が上向いたのは喜ばしいことだ。
今回、魔寄せの力を使った副産物で陸に棲む魔獣や魔物までが寄せられてしまったわけだけれど、アンジェリーナが寄せた魔物には希少な種も含まれていたそうで、海の魔物が減少し収益が落ち込んでいたセザイア帝国の魔物素材市場が活性化、再び賑わいを取り戻したそうだ。
いやー、本当によかった。
「そういえば手紙がきてフェレスは直接交渉ができて喜んでいたぞ。ついでにラシムール公爵子息もずいぶんとはしゃいでいたそうだ」
「でしょうねー」
言葉だけ聞いていると楽しそうなのですが状況はお察しのとおりでした。
奇跡的に搬送者は出なかったものの、胃痛と腹痛で医務室のお世話になった文官と特務部隊隊員がいたそうだ。
胃薬と腹痛に効く薬の素材って何だったか……追加で送ってあげようかな、うん。
まあいろいろあったが、交渉の結果、リゾルド=ロバルディア王国には魔法薬用の素材と武器や防具に使える価値の高いものが優先的に運ばれたという。セザイア帝国が介入したことで輸送費や作業手数料は抑えられて、帝国だけでなく王国にとっても満足のいく取引となったそうだ。
喜んだ国王様からは調薬の聖女特製治癒薬とともに褒賞金までいただきました。添えたお手紙には「体調に気をつけて、ジルベルトとおいしいものでも食べなさい(意訳)」と書いてあって、折々に気遣ってくれるところがジルベルト様とよく似ている。
ありがとうございます、全力で期待に応えてみせます!
こうして副次的に発生した陸の素材収穫作戦(仮称)は順風満帆、もともと高かった指揮官としてのジルベルト様の評価もさらに上がって、今では交代で兵士達が対魔戦の訓練を受けに来ている。
ただ、そんなうれしい誤算とは逆にアンジェリーナの受けた仕事のほうは暗礁に乗り上げていた。
アンジェリーナの挑戦が始まって、一週間。
「やっぱり読みが甘かったなー」
思わず愚痴が出てしまうのは、今日の獲物が虫だからという理由だけではない。背後でギチギチ、シャーシャーと顎や歯を鳴らすが聞こえるたびに背中を這い上がる悪寒を我慢しているけれど、それは対魔戦では当たり前のことなので、まだなんとか我慢できる。
「問題は、あと少しで覚書にある項目が終わりそうということなのよ」
ばさりと紙の束をさばいて、アンジェリーナは頭を抱えた。
つまり、ここから先は完全に手探りで進まなくてはならない。正直なところこれだけあればひとつくらい大当たりがあるのではないかなー、なんて甘くみていたのよね。
ラシムール公爵子息に教えてもらうまで、海には深海という未知の領域があって、魔物の数が桁違いだということを知らなかった。
完全に勉強不足だわ、恥ずかしい。
目の前にある水の罠には、薄茶色と灰色混じりの斑点が表皮に浮かぶ半透明の何かがふよふよと漂っている。
遠方に放り投げて、アンジェリーナは深々と息を吐いた。
「苦戦しているようですね」
「見苦しい姿をお見せして申し訳ありません、ラシムール公爵子息」
どこからどう見てもうまくいっていないのが丸わかりだものね。
あれだけ自信たっぷりにできますとか言っておきながら、この状況は情けない。
「まだ一週間でしょう、音を上げるには早すぎませんか?」
「そうなのですが……」
これからは広く浅い場所を探るのではなく、範囲を絞って深くまで潜るべきだ。さらなる未知の領域を突き進むには、この道で間違いないと裏付ける何かがほしかった。
ただその何かが、アンジェリーナには思い当たるものがない。組み合わせを試していくにしても圧倒的に時間が足りなかった。途方に暮れた顔でアンジェリーナは天を仰ぐ。
彼女の不安そうな、幼さを感じさせる横顔にジャミルはほんの少しだけ目を見開いた。
そうだった、ずいぶんと大人びて見えるけれど彼女は十代の少女だ。すべてにおいて完璧を求めるのは酷か。
そう思い直して深々と息を吐く。
――――ああもう、しょうがない。
「たとえば専門家に相談するのも良いかもしれませんね」
「専門家……あ、もしかしてファハド先生ですか!」
たしかに意見を聞くというのはありだ。間違いなくアンジェリーナの知らない知識を持ち合わせているだろう。
「私から先生に連絡をとることはできますか?」
「それには及びません。こちらで手配しましょう」
「ありがとうございます!」
勢いよく振り向いたアンジェリーナの瞳がキラキラと輝きだす。思いがけず貴重な美術品を見つけてしまったときのように、ジャミルはその輝きに魅入られた。
口調も態度も。はぐらかして翻弄するくせに瞳だけは素直に感情を表すのか。なんとも深みのある不思議な色だ、底が見えず計り知れなくて。衝動のままにのぞき込むと、もっと奥まで吸い込まれそうになる。
途端になぜか羞恥と居心地の悪さを感じてジャミルはあわてて視線をそらした。
「勘違いしないでください。別にあなたのためではありません。ファハド先生は海に棲む魔物が専門ではありますが、陸に棲息する魔獣や魔物にも詳しい。今回、変異種が見つかったので繁殖地や変異した経緯などの意見を聞きたいためにお招きしようと思っていたところなのです。ですから、断じてあなたのためにではありませんよ。あなたのはついでに、です」
「はい、わかっておりますよ?」
そう繰り返し言わなくても。そこで自分のためにと思うほどおめでたい脳はしていないはずですが。
理由がどうであれ、貴重な機会であることは間違いない。ラシムール公爵子息が連絡をとると、ファハド先生も興味を引かれたようで、本日の午後、急遽来てくれるということになった。
「それで何か私に聞きたいことがあるとのことですが」
「はい、是非知識をお借りしたいことがあります」
興味津々という顔つきでやってきたファハド先生に結界越しでアンジェリーナは魔寄せの力を使ってみせた。
「詳細な説明は省きますが、海に棲む魔物を特定の種だけ選別して捕獲できないか試しているところです」
「……は?」
ジルベルト様と同じだな。そんなことが本当にできるのか、という表情だった。アンジェリーナは小さく笑って、視線だけは海へと向けた。試しにと魔物を捕まえてみせる。
「水の罠」
まずは蛇種、トカゲ、カメに熊、犬、猪、鳥、そして虫と。アンジェリーナは魔力を放出して陸の魔獣や魔物を寄せてみせる。相対する海の魔物は蛇や蛟、鮫、クラゲ、魚に虫と。アンジェリーナが知らないだけで、別種が混じっているかもしれない。
「これはすごいな!」
「こうしてさまざまな種を捕らえました。ですが、目的であるシーサーペントにたどり着くことができません。何か大事なことを見逃しているように思えてならないのです」
興奮した顔で振り向いたファハド先生とは対照的に、アンジェリーナは困った顔で眉を下げた。これだ、という自信が持てないということはそういうことだろう。
「大海蛇と呼ばれるのですから、やはり蛇なのですよね」
試しにと、蛇の項目からひとつ適当に選んだものを捕まえてみせた。黒光する体に、焦茶や白で縞のように柄が浮かんでいる。魔寄せの力に惹かれて、真っ赤に濁った瞳がアンジェリーナをじっと見つめている。
「アメニシキですね、鱗の波のような模様が特徴です。蛇の魔物は例外なく鋭い牙と体内に毒を持っています」
「牙だけでも危険なのに、毒もですか!」
「それだけ海には蛇にとって強敵が多いのですよ」
蛇は威嚇するように大きく口を開いた。記憶に残るシーサーペントの姿を重ねて、アンジェリーナは首をかしげる。口の端からのぞく二本の鋭く長い歯が牙、そういえばこんなふうに牙が生えていただろうか?
「なんだかシーサーペントとは容姿の特徴が異なるような気がするのですが」
「ああ、それはシーサーペントが魚類だからですよ」
「は、魚⁉︎」
「ええ、一般的にウミヘビと呼ばれるものには蛇に属するものと魚に分類されるものがいます。今目の前に浮かんでいるのは蛇種ですね。それに対してシーサーペントは蛇のように体の長い魚ということになりますか。大昔の人にはそういう知識がなかったのでシーサーペントを大海蛇と名付けたと考えられています」
魚だから牙はなく、鱗に蛇のような光沢はないとのことだった。アンジェリーナは呆然として言葉を失った。
そんな、蛇じゃなかったのか。それではいつまで経っても正解にたどりつかないはずだよ!
アンジェリーナはあわてて覚書をめくった。たしか魚の魔物を捕獲できる魔力の配合があったはずだ。紙をめくり、項目名を見て、アンジェリーナはガックリと肩を落とした。
「……やっぱり虫か」
そんな予感はしていた!
ギチギチシャーシャー祭り、再び。アンジェリーナは顔面を両手で覆いながら思わず肩を震わせる。
そういえば虫の項目で妙に胴体の長い魚がいるなー、とは思っていたけれどまさかシーサーペントの仲間だとは思ってなかった。今までの傾向では仲間となる種と魔力の好みが似ていたから、尾の長い蛇に似た胴体の長い魚の好みに寄せていけばいいのね。
「どうでしょう、お役に立てそうですかな」
「大助かりです。光明が見えてきました。それでこの際ですから、そのほかにシーサーペントの生態について教えていただけることは聞かせていただけますか?」
「もちろん、遠慮はいりませんよ」
追加の情報を得たアンジェリーナがファハド先生にお礼を言うと、彼は目的を果たすために嬉々として山積みとなった虫の遺骸の山に近づいていく。アンジェリーナの苦手なものが山積み。目が合うと夢に出そうなので、あわてて視線をそらした。
そしてそらした視線の先では緑青色の瞳がこちらを見つめている。
――――あなたは正解にたどり着くだろうか。
油断はできないけれど、少なくとも悪い人ではないみたいだ。
「あの厳しい態度が期待の裏返しだと思えるようにがんばらないと」
そこからがまた、試行錯誤の連続だった。アンジェリーナが魔力を手繰る日が続く。背後のギチギチ、シャーシャーという独特の音は慣れた。もはやそんなことはどうでもいいと思えるくらいに。
ファハド先生に話を聞いてから、さらに一週間。アンジェリーナは水の罠にかかった白く透明に近い何かを遠くに放り投げた。これはクラゲ、海中に浮遊して生活する魔物だとファハド先生は言っていた。
魚ではないということは割合を修正しないと。
深々と息を吐きながら白紙に魔力の割合を書き込もうとして、アンジェリーナは唐突にグシャリと紙を握った。いつになく自分が険しい表情をしているのがわかる、今はただ安易に納期を一ヶ月と切った自分がうらめしい。
あと二週間で間に合うだろうか。
正解まであともう少し。でもそのもう少しが、おそろしく遠かった。
どうしよう、どうしたらいい。これ以外で私にできることは本当に何もないの?
「……ああもう、心が折れそう」
「それは一人で悩むからだ」
落ち着いた低い声が誰のものかを教えてくれる。ジルベルト様は手に剣を持ち、装備をつけたままでアンジェリーナの隣に腰を下ろした。
「あら、虫の魔物はどうしました。他の兵士の皆さんは?」
「魔物だって無限ではない。周辺にうろついていたものは、あらかた狩り尽くしたのだろうな。ずいぶんと寄ってくる数が減っている。兵士達はすでに帰ったし、今のところ大忙しなのは業者とラシムール公爵子息くらいだ」
本当だ、いつのまにか兵士は姿を消している。そして懸命に素材を採取する業者さんの隣でラシムール公爵子息は書類を見ながら仕分けと分配の指示を出していた。相変わらずの無表情なのに、書類をのぞき込む横顔がなんだか楽しそうだ。
「人の動きにも気がつかないくらい悩んでいたということだろう。それで何に困っている」
アンジェリーナが顔を向けるとジルベルト様の装備にところどころに魔物の血が飛んでいるのが見えた。血が乾いていないのは、今までずっと戦っていたからだろう。なぜ戦っているのか、それはアンジェリーナを援護するためで、手の回らないところを支援するためだけに彼は今も戦い続けている。
それなのにこれ以上、心配かけてはいけないよね。
その思いだけでアンジェリーナはへラっと笑った。するとジルベルト様は深々と息を吐く。
「つらそうな顔をして誤魔化すな。前から言っているように困っているときはそう言えばいい」
「ですが、これは私が受けた仕事です。最後まで私が」
「アンジェリーナの意思を尊重したいから無理やり聞き出すような真似はしない。だから逆に相談してくれなければ私は手助けしたくとも手が出せないんだ。それをわかっているか?」
被せるようなジルベルト様の言葉にアンジェリーナは視線を下げた。
本当は何度も相談したいと思った、でもそれでは……。
「大丈夫だ、私は決して君を無能とか役立たずとは思わない」
アンジェリーナはハッとして顔を上げた。視界には、真摯な眼差しをしたジルベルト様がいる。
「アンジュが人に頼ることをためらうのはそれが理由のひとつだろう。理解してもらえない苦しみというのは目には見えなくても心に深く傷を残す。そして心に受けた傷は行動や考え方に表れるものだ。誰かに頼るのが苦手なのは、そういう過去があるから。それがわかっていたからこそ、何も言わずに裏から手を回して補助することも考えた」
ジルベルト様は手を伸ばして、アンジェリーナの固く握った手に添えた。
「でもそれではダメだ。アンジュにしかわからないその傷は君だけが治すことができる。君が強さを求めるのなら、それは君自身が乗り越えなくてはならない壁だ」
手を握って、励ますように目元を和らげる。
「まずは声にする、そうすれば迷いは言葉になるだろう。練習だと思って何に困っているのか言ってみればいい。言葉にしてくれたらきっと力になれる」
アンジェリーナはクシャリと顔を歪めた。ジルベルト様はいつも甘やかすようなことばかり言う。それに反論する言葉もない自分が情けなくて、今にも泣いてしまいそうだ。
でもこの凝り固まった気持ちが正解を阻む壁であるのならば越えてみたい。
心に溜まった澱を吐き出すように、震える声でアンジェリーナは言葉を紡いだ。
「覚書の配合はすべて試したのです。虫の項目の配合を参考にして尾の長い魚の魔物を呼び寄せるところまではできるようになりました。ですが、いまだにシーサーペントを寄せることができません。ほしいものはたった一種類なのに、どれが正解に近いものかもわからない」
「なるほどな」
言い訳にも聞こえる拙い説明を、ジルベルト様は何も言わずに聞いてくれる。
そして彼の鋭い視線が海を見据えた。
「魔力には四種類あると言っていたな。一種類ずつを使って魔法が発動できるか?」
「できます」
「では一種類ずつ、水の罠を使ってみてくれ」
「ええと、わかりました」
何がしたいのかはわからないけれど、とりあえず指示のとおりに甘味、塩味、酸味、苦味の四種類を使い、順番に水の罠を発動する。解除していいと言うまで、ジルベルト様は無言で四種類の水の塊を見つめていた。それから彼はアンジェリーナの手元にある覚書をのぞき込んだ。
「魔力の配合は全部書き留めてあるな?」
「えっと、はい。それだけは必ずと思っていたので」
「では二つ前のものと、五つ前のものを並べて水の罠を」
あわてて紙を見直したアンジェリーナはそれぞれの配合で水の罠を発動した。ふよふよと、空を漂う水の罠。アンジェリーナが目視する限り、それぞれの塊に色や濁りの違いはない。
ジルベルト様には何が見えているのだろう?
「二つ前のものの魔力の配合は?」
「おおよそですが甘味が八割、苦味が一割、酸味一割ですね」
「五つ前のものは?」
「甘味が七、塩味が一、苦味一に酸味が一ですね」
「では甘味八、塩味一、苦味一ではどうだ?」
「こんな感じですね」
「もう少し甘味寄りだ、苦味を減らして」
ジルベルト様の指示で少しずつ魔力の割合を変化させていく。
「それだ。今の配合を書き留めて」
「は……はい?」
「もうひとつ、試してみるか」
「は?」
「なんとなく、こっちもありな気がする」
アンジェリーナは言われるがままに魔力を手繰った。ジルベルト様の指示で少しずつ割合を変えながら、甘味七に塩味一、苦味を少し多めに混ぜた。
「私の勘が当たっていたら、この二種類のどちらかだ」
「ええ、そんな⁉︎」
「試してみればわかる」
なんでそんな自信に満ちた顔をしているのでしょうね⁉︎
アンジェリーナは疑問に思いながらも、割合を手元の紙に書き込んで魔法を発動した。
「水の罠」
かつてないほど激しい水音がして一際大きな水の塊ができた。
呆然としたアンジェリーナは水の塊に包まれた個体に視線が釘づけとなる。
嘘でしょう……!
そこにはシーサーペントによく似た魚が激しく体をくねらせて泳いでいた。ただ体に浮かぶ模様の大きさとヒレの色が違う。
「変異種か、ちょっと外したな」
「じゃあ、もう一つの組み合わせは……」
アンジェリーナの心拍数が一気に上がる。慎重に魔力を手繰って魔法を発動する。寄せた魔物をくるりと水の罠で囲って一気に引き上げた。
「ほら、大当たりだ」
アンジェリーナの口調を真似たジルベルト様の口角がくっきりと上がる。
鋭い歯、あらゆる種を飲み込みそうなほどに大きな口。
水の塊に包まれて逃れようと暴れるのは正真正銘、シーサーペントだった。




