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V-TUBER戦記  作者: 柊柳
夢乃愛
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第1話

 夢乃愛。バックアップ社の期待の新人とゲーム上とはいえ会ったルークが最初に感じた印象は子犬だった。


「おはアーイ、バックアップ所属の夢乃愛です。今回は大有名なMMORPG、Different World、通称D-WORLDを始めたいと思います。本当はキャラメイクとか最初にやらないといけないと事が色々とあったんですが、長くなっちゃうので、その辺は全て裏でやっちゃいました。テヘ」


 ・ おはアーイ

 ・ ガワも揃えたんだ


「がわ? なんて知りませーん。私は私のままだよ。このゲーム、もともとある3Dデータをそのまま変換することができるからすごいよね」


 ・ 有料だけどね

 ・ このゲームの凄いところの一つだな

 ・ 写真データさえあれば、3Dデータに落とせるんだから凄い時代だ


「そうなんだ? 私はパソコンとかゲームってあまりやったことないから色々と教えてくれると助かるなぁ」


 ・ 了解

 ・ 任せてくれ

 ・ 伊達にパソコンとゲームばかりやっていないからな


「ありがとうございます。さて、今回は同じバックアップ所属の楯無紬希先輩が来てくれる予定だったんですが、体調が崩れちゃったみたいで、お休みになりました。先輩のリスナーの皆さんはごめんなさい」


 ・ マジか

 ・ 唐突だな

 ・ SNSにも上がっていなかったから心配だね


「先輩はちょっと女のこの日が強くて、いまさっき連絡が来ました。けど、大丈夫です! 今回はこの人にも来てもらいましたので。ささ、騎士様」

「様はやめてくれませんかね。それに、俺は配信者ではないんだから、挨拶や自己紹介する必要はないんだが」


 ・ 暇だな護衛騎士

 ・ お前、毎日仕事しなくて何してるの?

 ・ 遊ぶ暇あるなら仕事を探しなさい


「オカンか、己ら。そもそも今日は土曜日だ。仕事は休みだから問題ないな。……はぁ、俺は護衛騎士なんて呼ばれている。誰だよ、こんな名前をつけたやつ。いたら出てこい」

「まあまあま、騎士様。今日は騎士様達にD-WORLDについて説明していただこうと考えていたんですが、よろしいでしょうか? 本当には先輩にも説明していただきたかったんですが」

「体調不良なら仕方ないだろ。本当に体調不良ならばな」

「と、いいますと?」

「アイツ、どっきりとか言って俺の尾行なんかしたことがある」


 ・ あったな、そんなの

 ・ 護衛騎士の正体を暴こうってアレか

 ・ アレはアレで面白かったよな

 ・ リークしたの俺らだがな


「あの時はサンキューな。けど、流石にあれはやりすぎたから次は勘弁な」

「それってカップルが多いマッチングWORLDでしたね。先輩、たくさんの男のプレイヤーにナンパされていたやつの」

「知っていたか。マッチングWORLDなんて呼ばれているが、本当は自分の家や牧場等を経営してのんびりやるのが目的のやつ何だかな。いつの間にかマッチングWORLDなんて呼ばれるようになったんだ」


 ・ アレで護衛騎士の趣味がばれたんだよな


「おいおい。AIをアイツに似せろと言ったのはお前らだぞ」


 ・ そうだっけ?

 ・ 俺らは巨乳としか指定していないぞ


「仕方がないだろ。キャラメイクなんて面倒なんだから。モデルがアイツしかいなかったんだ」

「騎士様は先輩みたいな子がタイプなんですか?」

「俺は家庭的な子だな」

「なるほど。家庭的な子か」


 ・ 抽象的w

 ・ そこは見た目を言えよ


「コホン。んなことより、そろそろ始めようか」

「クスクス。別にここでお話ししても大丈夫ですよ」

「そうは言うが回りがな」


 周囲に目配せすると何人かが二人の様子を観察している。初めての夢乃愛はともかく護衛騎士であるルークはそれなりに外見が知れ渡っていた。いつもならば装備品を変えて合流するのだが、今日は紬希がいないため、分かりやすいようにお馴染みの鎧を装着している。そのためか、彼を知るプレイヤーが野次馬目的で遠目から見ているのであった。


「すっかり有名人ですね」


 それを察した愛がクスクスと笑う。


「別に有名人になりたいとは思わなかったんだがなぁ」


 ・ 諦めろw

 ・ 始まりの地で鎧なんか着こんでいるからだ

 ・ Bullet WORLDでも騎士鎧だったもんな

 ・ Summon WORLDでもそうだったぜ

 ・ 見た目ぐらい変えたらどうなんだよw


「いいだろ。別に」

「騎士様はどこに行っても騎士様なんですね」

「基本はFantasy WORLDしかやっていないからな。アイツと会うようになってから色々と連れ回された結果だ」

「じゃあ、経験豊富の騎士様。今日はエスコートの方を宜しくお願いします」

「了解した、まずはこのゲームの概要についてだな」

「異なる世界(ゲーム)を一つに統一させたゲームでしたね」

「そうだ。MMORPGでお馴染みの剣と魔法の世界、召喚して魔物を戦わせる世界、レースが主な世界やのんびりとスローライフを楽しむ世界、ありとあらゆる世界に分かれていて、あらゆるニーズに対応させた超巨大なネット世界がDifferent Worldのコンセプトだ」

「色々なゲームを一つに!? それは凄いですね」

「噂では色んな会社を吸収合併させて得意な分野の会社に経営を任せているらしい」

「たくさんあるから、管理するのも大変そう」


 Different Worldは元々は剣と魔法の世界、Fantasy WORLDのみであった。しかし、あまりユーザー数が稼げなく、次に始めたのが魔物を使役させて戦わせる仕様を増やしたのであるが、あまりにもバグが多すぎて対応も遅かったので、別会社に委託したのが始まりであった。どうせならば、世界観を分けて簡単に世界を行き来できる仕様にして、それぞれのゲーム仕様を単純化させよう。そのぶん、ゲームバランスやグラフィックに力を入れてアップデートも小まめにするようにしたら、爆発的にユーザー数が増えたのであった。


「今ではいくつぐらいの世界があるんですか?」

「9つだな剣と魔法の世界、重火器の世界、スローライフの世界、召喚の世界、レースの世界、物作りの世界、アイドルの世界、対戦格闘の世界、カードゲームの世界。近々ロボットものの世界も追加されるらしい」


 ・ ありすぎだよな

 ・ 一つの世界を遊ぶだけでも時間が足りないのに

 ・ 今では配信者の巣窟となっているもんな


「リスナー達の言う通り、ちょくちょく配信者を見かけるな。掲示板もあるから、それを使って多人数企画を募集していることも珍しくはない」

「多すぎて迷っちゃいますね」

「まあな。まず、どの辺から見たいんだ? 簡単でいいなら説明するが」

「んー。ちなみにアイドルの世界って何をするんです? プレイヤーが歌って踊るとかですか?」

「あれか。あれは言い換えれば育成ゲームだな。AIを育成して自分の理想なアイドルを育てて好きな歌を歌わせたり、踊ってもらうんだ」

「楽しそうですね」

「その代わり課金ゲームとも言われている。好きな衣装とかは自分で作ることができるんだが、それをするには別のWORLDであるCraft WORLDで作る必要がある。素材もものによっては他の世界から入手する必要があるから、結構面倒だったりするんだ」

「た、大変そう」


 ・ Idol WORLDと言えばウグイス四姉妹は欠かせないよな

 ・ 歌姫と言えばアリアだろ

 ・ いーや。サムシングこそ至高です!

 ・ 最近台頭したココちゃんも可愛いよね


「ま、確かに大変だな。多くの人はギルドに所属して仲間に手伝ってもらったりしているらしい」

「楽しそうですけど、もう少しやってから始めた方が良さそうですね」

「自分でクエストを発注させることもできるから、そうやって素材を集めているやつもいるみたいだぞ。あと商人ギルドみたいのもあるから、そこで対価払えば購入することも可能だ」

「ちなみに騎士様はやっているんですか?」

「俺か? あー。実はさっき言っていた、マッチング云々って話しがあっただろ。あれ、Idol Worldでキャラメイクしたやつなんだ」


 ・ キズナちゃんか、懐かしい

 ・ 護衛騎士はマネージャーもしていたのか


「凄い凄い。……あれ? でも、その子は別のワールドにいるんですよね?」

「自分がキャラメイクしたAIも別の世界に移動させることもできるんだ。有料だけどな。今は農作業とか一緒にやってもらっている」


 ・ アイドルに農作業w

 ・ どこのダッシュ街だよ

 ・ ちゃんとデビューさせてあげろよ


「みたいみたい! 騎士様のアイドル、見に行きたいです」

「え? いいのか? まだ、他の世界について何一つ説明していないんだが」

「それはまた今度にします! またエスコートしてもらいたいですから」

「ちゃっかりしているな、おまえさんは。……わかった。なら、行き先はスローライフの世界だな」

「楽しみです」


 ルークは画面を操作して行き先を指定する。


「それじゃあ行くぞ。スローライフの世界、場所は辺境の街テラスタルだ」

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