第D話
「グッモーニング、皆さん。バックアップ所属の楯無紬希です。そして!」
「おはこんばんはー。バックアップ所属、一期生の恋空クレアだよ。そして!」
「おはこんばんはでふ。バックアップ所属の恋空リースです」
・ グッモーニング!
・ おはこんばんはー
・ 先日のサモンズ見ました!
「ありがとー。最後は色々とあったけど、リー君のおかげで楽しい1日になったよ」
「ほんと、エー君がいなかったら、どうなっていたことやら……」
「えっと、リー君にエー君?」
「あ、紬希ちゃんは知らなかったけ? リー君は騎士さんのことだよ」
・ 護衛騎士、随分と可愛くなって草
・ リッターとエクイテスだっけ? 両方とも騎士って意味だったな
「ふふ。エー君、騎士さんにはちゃんと許可をとりましたから大丈夫ですからね」
「あの騎士さんが? てか、二人とも随分と仲良くなったみたいだね」
「もちろん! また、Summon WORLDを手伝ってもらうのとか他のWORLDも遊んでくれるって約束してくれたんだよ!」
・ 護衛騎士、第一期生をコンプリートか
・ あいつ、何でも手を出しているよな
「えー。それは困るよ! 騎士さんには紬希の配信に出て貰うだから!」
「紬希さん。あまりエー君を困らせるのはどうかと思うわよ」
「リースまで!? けど! ちゃんと紬希と会社の許可を取ってよ!?」
「はーい」
「それは大丈夫ですよ」
・ 衛の件は大丈夫だったの?
「あっ。聞いたよ! ユニバースの人とトラブルになったって!? 大丈夫だったの?」
「うん。リー君が守ってくれたから大丈夫。あの時のエー君、かっこよかったなぁ。もう、キュンキュンしちゃった」
「クレアじゃないけど、あの時のエー君は勇ましかったですね。その……私も少しときめいちゃったと言いますか」
「二人とも!? だ、ダメだよ。騎士さんは紬希の騎士さんなんだから」
・ お、修羅場か?
・ 修羅場だな
・ 今のどころは紬希ちゃん一強か?
・ 愛ちゃんも負けていないぞ
・ タマちゃんも何だかんだで馬が合ってそうだなぁ
・ 護衛騎士を取り合う、バックアップ。悪くないな
・ 騎士の胃の穴が開きそうだけどな笑
「いっそのこと、リー君もバックアップにいれちゃわない?」
・ ついにか!?
・ 騎士、V-TUBERか。悪くないな
「んー。騎士さん、そういうのは興味ないって言っていたからなぁ」
「そうですね。昨日もなるつもりないって言っていましたし」
・ 社会人だしなぁ
・ 会社によっては副業は難しいかもな
・ けど、社会人で配信者だっているぞ
・ ↑趣味の範囲ではな
「リー君。何の仕事をしているの?」
「それは……。わかんないけど」
「クレア。あまりリアルについて言及したらダメよ」
・ 護衛騎士のリアルか
・ 実は女の子だったりなw
・ それはそれでありだ
「どうなんだろうね。騎士さん、あまり自分のことは話さないから」
・ 結局、ユニバースの件はどうなったの?
・ それ気になる
・ 護衛騎士の勝利で配信が終わったからなぁ
「そうだったね。あれから、ユニバースの偉い人が来てね。衛を連れていったんだよ」
「話していいのかなぁ、それ」
「まあ、内緒にしても直にわかることだし、大丈夫だと思うわ。その後、マネージャー同士で話しあったみたいだけど……」
・ その衛についてSNSが投稿されていたぞ
「え、ほんと!?」
「なになに? 今回の件につきまして、天堂衛との契約を切る形となりました!?」
「まぁ。そんなことになったんですね」
・ 当然だな
・ むしろそれ以外はありえないな
「今回の件について弊社は重く捉え、今後一層、V-TUBER達の教育に力をかける所存……だって」
「よかったぁ。正直、衛君に関しては困っていたから、これで安心できるわ」
「そうだね、お姉ちゃん」
「大変だったね、二人とも。けど、これで騎士さんの知名度がもっとあがりそうだなぁ」
・ その護衛騎士ならSpeed WORLDで見たぞ
・ アレイオーンに乗っていたの、やはり騎士か!?
「え!? なにそれ」
・ Speed WORLDってことは
・ ホースカップか
・ アレイオーンって馬だったしなぁ
・ あいつ、どこを目指すつもりなんだ?
「み、みたいみたい! お姉ちゃん!」
「うん。見に行こうか」
「……あ、ちょっと二人とも! まだ配信は続いているんだよ!? ……行っちゃった」
・ 紬希ちゃんはいかないの?
「行きたいけど、みんなを放っていけないよ」
・ キュン
・ キュン
・ 今ので俺達の好感度が上がっただと!?
「こほん。気を取り直して続けようか。そうそう、もうすぐフォロワー数も10万人になるんだよ!」
・ おめでとう!
・ ついにか
・ 何かやるの?
「本当は3Dライブとかいいかなーって考えていたんだけど」
・ ライブ、いいね
・ ありきたりか?
・ 紬希ちゃんだからなぁ
「紬希としては、視聴者さんともっと楽しめたらって考えていてね。なんと! Craft WORLDでバックアップ社VS視聴者のディスドラ討伐大会をしたいと思います!」
・ おー!?
・ なんと豪勢な!!
・ いつ募集するんですか!?
「募集開始は紬希の登録者数が10万人を超えてから一週間。募集人数は限られているので、みんなちゃんとチェックして募集してね」
・ 腕がなるな
・ 二期生は出るんですか?
「今回は一期生のみだよ。詳細のルールとかはSNSにあげるから、それをチェックしてね」
・ 勝ったら何か商品とかありますか?
「ふふ。紬希達に勝てるかな? みんなが勝ったら、紬希達の声が詰まったCDをプレゼントしちゃいます。内容は勝った時のお楽しみだよ。あ、騎士さんも参加させるので楽しみにしていてね」
・ 《護衛騎士》聞いていないぞ、そんなこと
・ 騎士w
・ おまえ、ちゃっかりと聞いていたんだな笑
「うん! いま言ったから。ちゃんと予定を開けておいてね」
・ 《護衛騎士》……わかった。全力でお前らに勝てばいいんだな
「なんでよ! 騎士さんは紬希達と同じバックアップ社の一員として出てもらうんだから」
・ 《護衛騎士》それこそなんでだよ
・ あの護衛騎士と戦えるか
・ 騎士、ウォーロックスターはなしだからな!
・ 《護衛騎士》なんでお前らの敵認定とされているんだ?
・ 俺達が勝てば騎士の生声入りCDがもらえるのか。ジュルル
・ みんな、アップを始めるぞ!!
・ 《護衛騎士》え、おい! 待て待て! 怖い怖い!! なんでそれまで俺が適用されるんだ!?
・ はぁ!? お前もバックアップ社で出るんだろ!
・ 《護衛騎士》違う違う。なんでそうなるんだ!?
「もう! 騎士さんも諦めなよ。騎士さんもバックアップの一員みたいなんだから」
・ 《護衛騎士》勝手に入れるなよ。参加しても一般側だ!
「そんなのは認めません!」
・ 《護衛騎士》認める認ないの問題じゃないだろ
「ともかく! 紬希、10万人達成記念配信はCraft WORLDにて開催する予定だよ! みんな奮ってご参加してね!」
※
「…………まじかよ」
まさかのイベント強制参加にルークは頭が痛くなった。
イベントの参加はまだいい。しかし、それが主催者側で参加するのはよろしくない。
「モテモテでよかったわね、護衛騎士」
「あいつ、御前の担当TUBERだろ。どうにかしろよ」
「可愛いじゃないの。若い女の子にモテるなんて早々ないわよ」
「あれは楽しんでいるだけだろ。てか、速度を落とせ! カーブに入る前にアクセルを踏むバカがどこにいる!!」
視界が驚くべき速度で走り去る。
いま、ルークは紬希達のマネージャーであり、高校時代のクラスメイトであるポーリーが運転する車の助手席に乗っている。
「コース取りをしろ! コーナーに入る前に内側に入ってどうする!? そこはアウトからインに攻めるんだ!」
横から指示を飛ばす。お世辞にもポーリーの運転技術は上手くなかった。気がつけば後ろから首位の車が勢いよく横から抜け出し、ポーリー達は周回遅れに陥っている。
「もう! なんなのよ、あれ! 騎士! オプションで邪魔しなさいよ!」
「無茶言うな! 純粋のレースカップでオプションなんか使ったら反則敗けだ!」
「ぐぬぬ」
「……おい、待て! その先はUターンだぞ!? 速度を落とせ! 回りきれなくなるぞ!?」
聞いていなかった。周回遅れになったのが癪に触ったのだろう。ポーリーはアクセルを全開させて、直前でサイドブレーキを切ってハンドルを回す。
まさかのドリフトターンでこの場をやり過ごそうとするのだが、ポーリーの運転技術でドリフトを制御することなどできなかった。勢いを殺すことができなかったポーリーの車はそのままスリップして、コースの外に流れていくのであった。その後、盛大にクラッシュしてしまい、二人は強制的にレースから退出させられてしまう。
「……もう! なんで回りきれないのよ! 制御系が壊れているでしょ、あれ!」
「おばか。あれは御前のせいだ! おまえがUターンに入る前に加速なんかさせたから、車体制御ができなくなったんだ!」
「ならそう言いいなよ! これだからぼっち君は」
「……帰っていいか?」
そもそも今回は白雪菜月にタマ子の件のお礼と恋空姉妹に関しての謝罪で呼び出されただけだった。
それなのに菜月ことポーリーは合流するなり「レースにでしょう!」なんて言い出したのである。目的は自分の愛車の資金集め。Speed WORLDでは様々な種類にてレースをすることが可能だ。
「まだ付き合いなさいよ。限定色のボルギーニ、欲しいんだから」
「だからアレイオーンで出馬したじゃないか」
「それだけじゃ足りないの! それともなに!? あの子達とは付き合って私とは付き合ってくれないわけ?」
「おい。誤解を招く事を大声で言うな」
「誤解も何も事実じゃない」
回りの視線が鋭くなるのを感じる。事実、二人のやり取りを見ていたプレイヤー達はルークとポーリーのやり取りを見て「痴話喧嘩?」「男が浮気したんだな」「ひどいわね」なんて口にしている。
「……はぁ。そもそも俺はタマ子の件と恋空達の件で呼ばれたはずなんだが?」
「だからこうやってお礼をしているんじゃない」
「…………なんて?」
はて、と首を傾げる。ルークは呼ばれてポーリーと合流するなり「付き合いなさい」と言われてSpeed WORLDに連れてこられ、レースに出る羽目になったに過ぎない。
アレイオーンと共に駆け抜けたホースカップに関しては楽しかったが、ポーリーと参加した四菱カップはさんざんだった。これのどこがタマ子の件のお礼に繋がるのか意味不明であった。
「ほら、あんたって陰キャじゃない。私みたいな陽キャとデートできるとかお礼もいいところじゃない」
「あれをデートと呼ぶにはいささか無理があると思うが?」
どちらかと言えば紬希達と似た感じ手伝っているに変わりない。
「うるさいわね。こうやって遊ぶのも立派なデートでしょ」
「そう言うのは彼氏に頼めよ。おまえなら一人や二人、当然いるんだろ?」
「いないわよ! 彼氏なんて一人もできたことないわよ」
「へー。意外だな」
「なによ。いなくて悪い?」
「悪くはないが、学生時代、彼氏がどうのこうのっていっつも話していたじゃないか?」
「うわ、きっも。私達の話しを盗み聞きしてたの、あんた」
「するか! あんなバカでかい声で話していれば、耳に入るんだよ」
事実、菜月達のグループはクラスの中でも上のカーストに値するグループであった。派手めな格好の者が多く、菜月も見た目でギャルだとわかる姿をしていた。
「女の子には色々とあるのよ。特にうちのグループはほぼ彼氏持ちだったから、話しを合わせるのが大変だったのよ」
「さいですか。そりゃあ、難儀なことで」
「そう言うあんたこそ、彼女とかいないの? 休みの日、だいたいうちの子らと一緒にゲームしているみたいだけど」
「いるわけないだろ。あー。安心しろ。彼女達に手を出すような真似だけはしない、と約束する」
「どうだかね。うちの子ら、リアルの姿も可愛い子ばかりだし。案外、会ったらころっといっちゃうんじゃない?」
「俺は年上派なのでね。年下のあいつらは妹ぐらいの認識しかない」
「あー。あんた、清楚系お姉さんとか好きそうだもんね」
「偏見も甚だしい。もういいか? たまの休みぐらいゆっくりしろよ」
「いやよ! リアルでは運転させてくれないから、ここで思いっきり運転するの! ねえ、今度はあんたも参加しなよ。車ぐらい持っているんでしょ?」
「Speed WORLDは課金勢が多いから勝てるレースなんて少ないぞ?」
「ホースカップは勝ったじゃない! ねえ、いいでしょ? 限定色のボルギーニ欲しいのぉ」
「わかった。わかったから、近寄ってくるな! あざといから」
「やりぃ! 勝ったらリアルでもデートしてあげるわ」
「それは遠慮しとく」
「なんでよ!」
それからルークは車、船、バイクと様々なレースに参加させられ、大半を上位の成績を納めることになる。
入賞した懸賞金で色違いのボルギーニを貰ったポーリーは子供のようにはしゃぎ、試運転でタイヤをバーストさせるのであった。




