第一章 とらわれとその解除 1 「疲れた」「もうダメだ」と思うことによって引き起こされる悪循環⑤
私たちは嬉しい時も悲しい時も必ず呼吸をしている。もちろん、同時に心臓も動いているし、腸管もしっかり運動してくれているし、脳も働いている。しかし、私たちは内臓を自らコントロールすることはできないし、肺ももちろんその例外ではない。(厳密にいえば、呼吸筋は自分で動かせるが、血液内で酸素を取り込んだり二酸化炭素を排出したりすることは自分ではできない)。でもよく考えてみると、体の運動や呼吸の仕方であれば、私たちは意識すれば変えることができるではないか。そして慣れてくればコントロールすることだってできるようになるはずだ。
そう、いつまでも考えばかりにとらわれていると、悪循環を抜け出せないし、状況は変わらないのである。人間は動物であり、「動く」生き物なのである。だからじっと考え事をしているだけでは元気を失って当然である。
運動するのは負担になったり、状況によってはしづらい場面もあると思うが、呼吸の仕方はどこにいてもいつでも調整できる。リラックス効果があるので、疲れることもそんなになさそうだ。さらに、人畜無害であり、誰にも迷惑がかからないし、副作用もないわけである。
呼吸を意識しているうちに、頭の中でグルグルしている思考や心臓のドキドキが自然に治まってくることを、私自身何度も経験している。




