第九章 悔いを残さないために 1 生きている全ての瞬間を大切にする②
「死にたい」となってしまうのは自然なことだと思う。人生つらいこと、乗り切れそうにないこともたくさんあるから。
しかし、そこで「でも…」「だけど…」って思うことは実は非常に重要なこと。それがなければ、今頃私はいなかったかもしれない。
その「でも」や「だけど」に当てはまった当時の私の思いは、「せっかく医学部で単位がとれる科目がいくつかあるんだから、頑張って医学部を続けよう」とか「親友が遊びに誘ってくれた。私は一人じゃないんだ」というものであった。
それに、本当に死んでしまってはいけない理由として当時私が考えていたのは、この体は神様からの借り物で、決して自ら傷つけてはいけないこと、周りの人がどれだけ悲しむかを思うとやはり自分の命を自ら絶ってしまっては絶対にいけないこと、であった。
せっかくなら楽しく生きたい。でも、たとえ楽しくないような、気分を害するようなこと、つらくてしんどいことがあったとしても、めげずに生きていたい。病気になることで、私はそんな風に決心した上で毎日を過ごせるようになった。
病気になる前の人生は確かに恵まれていた。でも、今もそんなに悪くない。どんな困難があっても乗り越えたい。恵まれている時はそこまで考えるに至らなかったが、病気になった今は人生にもっと感謝できるようになったし、改めて「これからもずっと生きていきたい、自然に寿命が来るまで絶対に自ら命を絶つなんてことはしたくない」と思えるようになったのである。




