第一章 とらわれとその解除 2 気分を直接コントロールすることは難しいが、呼吸ならある程度コントロールできる③
このように気分をいつでも直接コントロールできるようになりたくても、それを邪魔するような要素は人間社会や人生には山ほどある。私たちは完璧にはできていないので、どうしても対人的な摩擦や環境的な問題は生じてしまうのである。(ちなみに私は、人間は完璧でないからこそ互いに寄り添える、とポジティブに捉えている)。
一方、呼吸や筋肉は車のアクセルのようなものだと思う。車のアクセルは自分で強く踏めば車は速く進み、弱く踏めば車は遅く進む。つまり、自分で調整できるのである。例えば呼吸だって、思いっきり吸ったり、強く吐いたり、ゆっくり吸って少しずつ吐いたりなど色々と自分で調整できる。筋肉も激しく動かしたり、ゆっくり動かしたり、動かさずに力を入れてみたり抜いてみたりなど同じく自分で色々と調整ができる。
さらに、呼吸にはアートのような要素もあると私は思う。呼吸を音楽だと思えば、美しく奏でるような呼吸にできるし、絵だと思えば、素敵に思い描くような呼吸もできる。つまり、自分の心を自由に表現することができるのである。
このようなセンスは磨けば磨くほど、楽しくなるし、上達するはずである。しかも、磨くチャンスはいくらでもある。夜寝る前に布団の中で自分の呼吸に意識を向けてもいいし、電車の中で座ったり立ったりしている時でもできるし、誰かに嫌なことを言われて傷ついた後でもやろうと思えばできるはず。
「そんな簡単ではない。」と思われるかもしれないが、まずは何事も試してみることから始まる。もし、自分に合わないようだったら、他の方法を探せばいい。情報をたくさん手に入れやすい世の中だから、他にも色んな選択肢はあると思う。ただ、この呼吸療法はやはり手軽で効果的であるという点では簡単には捨て難いものであると私は考えている。




