二章 "夢"の意味
ちょっとだけスランプ抜けてきましたどうも。
ってもなかなか上手くは行かないもんですねえ…
とにかく、本編どうぞ。
「さあ、冒険に出発だー!…と思ったんだけどさ。」
意気揚々と掛け声をあげたヒュプノスだったが、ふと深刻な顔で雨音を見る。
「君の仲間さん達…どこにいるの?」
「いや、今さらでござるなあ…。ほら、こっちでござるよ。」
そういってヒュプノスを先導する雨音。
彼女は呆れ声ながらも、先ほどまでの暗い雰囲気は消えていた。
「はあ?協力?」
開口一番のその一言だけで、そこらの大気が凍てついたのを感じる。
「ま、まあ…そんなに怖い顔しないd」
「やっぱりここらで首でも飛ばしてやるのが正解かな?」
「ヒエッ」
なまじ本当に首一つ程度なら簡単に飛ばすことができる為、正しく一手間違えば惨事を見る危険物を扱っている状況。
その場は背筋に稲妻が走るような緊張に支配されていた。
そんな中おもむろに口を開いたのは、雨音だった。
「気持ちはわかるけど…今は落ち着いてくれないかな…?」
「っ…。」
雨音のその口調から、いつもの謎のノリが消えている事に気づいた雅は、立ち上る殺気を僅かに抑える。
「確かに前の事とか、今の状況とか、色々あって彼を信用できないのはわかる。けど…。」
そういって、ちらりとヒュプノスの目を見て。
「悪意のある人がこんな悲しそうな目をするとは、僕にはどうにも思えないんだ。」
「…」
「雅ちゃんなら、今じゃなくたって彼を行動不能にするくらいなら出来るだろうし、今決めるのは早いと思う。」
雅は、雨音の目を見た。
その目は、眩しいくらいに真っ直ぐだった。
「…わかったよ。でも…」
彼女は、キッとヒュプノスを睨み付けて。
「僕の仲間に何かしたら、絶対に許さないから。」
「知ってるでしょ?僕は無駄な事はしない主義なんだ。」
「ふん…くれぐれも後で後悔させない事だね。」
「肝に命じておくよ。」
「そのいけすかない態度、いちいちイライラさせてくるね。」
「え?ご、ごめん…。そんなつもりはなかったんだけど…。」
「…素直に謝られると余計変な感覚になるからやめてくれないかい?」
「え、う、うん…」
「…ねえ雨音ちゃん。さっきから思ってたんだけどさ。」
「うん…。」
「「もしかしてこの二人、案外仲良くない…?」」
まさか見透かされるなんて、思っても見なかったな。
「悪意のある人がこんな悲しそうな目をするとは、僕にはどうにも思えないんだ。」
姉さんが僕を置いていってからの数千年の間、誰にもこんなこと言われたことなんてなかったのに…。
ああ、人間達が夢なんかにすがる理由が、ここに来てなんとなくわかった気がするよ。
きっと皆、本当じゃなくてもいいから、誰かにわかってほしいんだ。自分の事を…。
僕にもわかるだろうか。
永い時間の中で、身も心も歪んでしまった僕にも。
今の僕にはまだわからない。でも…
「アンタにだって、じきにわかる日が来るわよ。この気持ちが。」
あの時あんなにもわかりたくなかったその気持ち。
今は少しだけ、わかってみたい気がした。
続く…