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僕の町には龍がいる

作者: あるまじろう

 授業中教室の窓から空を見上げると今日も龍が漂っていた。龍がこの町を訪れるようになってから10年がたった。

その前には中国に35年間居て、その前はロシアに150年間ぐらいいたらしい。最初に発見されたのはずっとずっと昔のことで、その時はみんなで龍を退治しようとあの手この手を使っていたようだけれど、龍は僕たち人間、この地球上の自然の力全ての力を束ねても傷一つつかず漂っていた。

 

僕はそれを聞いたとき無敵のクラゲじゃんと思った。空に浮かんでいる無敵クラゲ、それがこの町を漂う龍の感想である。でもそんなことを言うと周りから馬鹿にされてしまうのはもう分かっているから僕は黙っている。


 僕がきっと一人称が俺になって、もっと大人になったらお父さんみたいに自分のことを私というようになってもきっと龍は漂っているだろう。この町にいるかどうかはわからないけれど。龍がこの町に発見されるようになってから世界中の龍研究者はこの町を訪れては首をひねって帰っていく。この町に特別不思議なことはなんにもないのだ。


 首をひねった人たちはなんとなくみんな、渋い顔をして町の特産品の沢庵と梅干をかじって帰っていくのである。


 僕にとってこの町に龍がいる理由はどうでもよくて、ただ暇な授業の時間をつぶせるからいいなと思っていた。


三角みすみくん!またぼーっとしていたでしょ。」


 先生が僕の名前を呼んだ。


「いいえ、ちゃんと聞いていました。次のページの三行目から読めばいいでしょうか。」


 僕の視線は空を見上げているけれど、耳はちゃんと先生の授業を聞いているし、黒板を書くチョークの音がしたら黒板に目を向けてノートだって取る。


「その通りです。ちゃんと授業を前向いて授業を聞いてください。」


 先生は龍研究者が思った成果を上げられなくてする顔と同じ顔をして僕の方を見る。授業の聞き方なんて自由なのに先生は頭が固い、僕のことを不真面目な子だと思う。ちゃんと、テストの点は取っているんだけれどな。


「すみっこ野郎!また先生の話を聞かなくていけないんだ!」


 三角みすみという苗字は僕がクラスの隅でジッとしているからついた名前だ。すみっこ野郎、その通りだ。小学校に入って六年生にまでなったはいいもの未だに友達らしい友達がいない。僕は特に気にしていないのだが、こうしたクラスの冷やかしが面倒くさい。


 気にしなければいいのに、と思うけれどそんなこと言った日には嫌がらせを受けるに決まっていた。

 僕もあの龍みたいに漂っていたんだけどなぁ。なぁ龍、君はどんな気持ちなんだい。全人類からいじめられたり崇められたりして、好き勝手思われてどんな気持ちなんだい。

 

「別に。」


頭上から低く響き渡るような声が聞こえた。慌てて空に浮かぶ龍を見た。 


龍は変わらず空を漂っている。


 気のせいだろうか、いや違う、あれは龍の声だ。間違いない。

 

龍よ、あぁ龍よ、僕はやっぱり君になりたいよ。

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― 新着の感想 ―
[一言] 龍様の ≫「別に」 …すごく納得です ーーー 漂いたいです (*´ω`*)
[一言] クラゲかぁ。なんかわかるなあ。龍になって漂えたら楽しいでしょうね。
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