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幕間 エリザベス&ヴィンセント

久しぶりの投稿なのに本編から外れててすいません。

多分次回も幕間の予定です。

 重苦しい空気のお茶会は終わって令嬢達は、内心逸物かかえているだろうが婚約者にエスコートされて帰っていった。


 今残っているのは公爵家の双子の兄妹とエリザベスのみ。


 美味しい物を食べるのが好きなエリザベスが今はその手を止めて、視線を彷徨わせている。

心なしかその顔色は赤い。

と言うのも、先ほどの茶会とは打って変わってヴィンセントの距離が驚くほど近いのだ。


「あの・・・ヴィンセント様? ・・・。」


「なんだい、エリザベス?」


 恥ずかし過ぎて上手く言葉が出てこないエリザベスを愛おし気に見つめながら、ヴィンセントが彼女の髪の毛を一房掬い上げると口づけをした。


「・・・・・・!!!」


 大きく肩を跳ねさせると、エリザベスは林檎のように顔色を変えヴィンセントを凝視した。


『ヴィンセント様は、先ほどの私の発言に怒っておられるのだわ。』


 先ほどまでとは顔色を変え、少し暗くなった顔を俯けエリザベスが悲し気に眉毛を下げた。

ヴィンセントがこのようにエリザベスに過剰に接するときは、いつでも彼女が我を通し身分や状況を逸脱した意見を発した後であった。

異性に慣れていないエリザベスは、男性に親し気な行為をされるとどうして良いか分からなくなった。

ましてやヴィンセントはエリザベスの想い人であったし、今の距離は婚約者と言えど近すぎた。

この行為をエリザベスはヴィンセントなりのお仕置きなのだと感じている。


 人々が温和な地域にある領地で育ったエリザベスではあるが、その母が辺境伯の長女である一本筋の通った人格者でもあった。

母親は数年前に病気を患い無くなってしまったが、エリザベスはこの母の気質を兄弟の中でも一番色濃く受け継いで育った。

見た目の柔和さからはかけ離れた一面が、どう頑張っても出てしまう。

母のように辺境伯領や現在の自領で辣腕を振るった実績があるわけでもない自分が。


 今日の件にしても王子であるグレイグに差し出がましいことを言った自覚はあった。

エリザベスもカレンの事など好きではない。

が、知らず命がけの大業を果たしているのに、何も知らされていない理不尽につい言葉が口をついて出た。


「差し出がましい事を致しました・・・。」


 いつかこの癖がヴィンセントに迷惑をかけるのではないかと、今まで何度も考えた不安にエリザベスの顔が歪む。


「・・・・・・。」


 ヴィンセントからの返事は無かった。

やっぱり迷惑をかけてしまったのだとエリザベスの瞳に涙が滲み始めた頃、ヴィンセントが優しくエリザベスの顔に手を触れた。

思わず見上げてぶつかりあった視線に、エリザベスは瞠目する。

ヴィンセントの顔は驚くほど優しい。

いや、それよりももっと・・・。


「ヴィンセント様・・・?」


「エリザベスは今のままで良いんだよ。君はいつも正しい。」


「・・・っ!!」


 ヴィンセントは甘く蕩けるような顔をゆっくり、しかしどんどんとエリザベスに近づけていく。


「ごほんっ!・・・ごほんっごほん!!」


 アナベラの咳払いに先ほどまでとは打って変わった苦い顔をしたヴィンセントが苦言を漏らした。


「気を利かせて俺たちを二人きりにしてやろうと言う優しさがお前にはないのか?」


「ないわ!! って言うか私がいるの知ってていちゃつこうとするの止めてくれるかしら。しかも咳払い聞こえてるんだから、一回で止めなさいよ。」


「なんで止めないといけないんだ。やっと婚約式が済んだのに。」


「あのねぇ、婚約者になったからって何しても良い訳じゃないのよ。侯爵に顔向け出来ないことは止めてちょうだい。」


 これにはヴィンセントも痛い所をつかれたという顔をするがそれも一瞬の事。


「さっきのグレイグの話で分かったろ。しょうがないからグレイグに付き合ってるけど、そのせいでエリザベスが足りないんだ。」


 今まで罰で触れ合っているのだと思い込んでいたエリザベスは、この言葉を理解すると全身火を噴くほどに赤らめ硬直した。

さっきまで兄弟喧嘩をしていた二人がその変化を察した時、アナベラは焦燥をヴィンセントは愉悦の色を顔に滲ませた。


「エリザベス、ここは騒がしくて話辛いから俺の部屋で話そう。それに今日はもう遅い、家へ泊って行くと良いよ。侯爵家には俺から使いを出すから。」


 そう言いながらエリザベスの手を取り連れて行こうとするヴィンセントの手を、アナベラが手刀で叩き落す。


「エリザベス、しっかりなさい。今日はあなたは私の部屋に泊るのよ、いいわねヴィンセント!」


「アナベラッ!!」


 文句を言いたそうなヴィンセントを残してアナベラはエリザベスを引っ張って自室へと連れて行く。


「私、アナベラが羨ましい。私もヴィンセント様にもっと素直に話せたらいいのに。」


 心底羨ましそうに自分を見るエリザベスに、アナベラは顔を引きつらせた。


「そんなこと言っていられるのは今のうちだけよ。王家の血を引く男は執着が強いんだから。」


 厄介だと言わんばかりにアナベラは吐き捨てたが、そうなら嬉しいのにとエリザベスは微笑んだ。


新作「冤罪で処刑された令嬢は嗤う」を投稿しています。

良かったらそちらもどうぞ。

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