プロローグ
はじめて書きます。
よろしくお願いします。
皆が寝静まった頃、とある侯爵邸の一室から煌々と明かりが漏れる。
部屋からはカリカリと執筆する音と少女の小さな呟きが深夜にわたるまで続く。
今日も少女が夜な夜な日記を書く。
悩みのすべてを日記にぶつけるように。
「・・・まさか、・・・あの時のあれが気に入らなくて?
いやいや、あれ位で・・・一国の王子がそんなこと一々気に留めているとも思えないし。」
頭を抱えて今日起こったことを思い出す。
はっと顔を上げ宙を見上げる。
「じゃあ、・・・あれが?でもあれ位日常的に起こることよね?」
いてもたってもいられないと、椅子から立ち上がり左手を右手の肘にあて、右手を口元にあてる。
ソワソワと部屋の中を歩きながら。
「でもでもっ、気になる事は人それぞれ違うから、絶対はないわよね!
・・・そうなると、・・・・・」
今日起こった出来事を日記に書きながら、自分が今どういう状況に置かれているか考えるのだが、理由がさっぱり分からないのだ。
それ故に些細なことが気になり、普通では考えられないことまで理由として考えてしまい、負のスパイラルに陥った挙句、結局理由は分からない。
ああでもないこうでもないと、呟きは止まらない。
この時間に日記を書くのは、その姿を誰にも見つかりたくないからだった。
「お父様やお母様、いつもよくしてくれる屋敷の皆には心配をかけたくない。それに学園に入ってまだ2か月足らずだもの。きっと自分で何とかしてみせるわ。」
少女は、追い詰められた自分をなんとか奮い立たたせた。
少女の名前はミシェル・リンベール。15歳のリンベール侯爵家の跡取り娘である。




