1/28
序猫章
楽しんで貰えると嬉しいです(^^)
月夜の影
暗い闇
ケモノの叫び声
音も無く走る
夜闇の暗
木々の間に紛れる黒いケモノ
闇を貫き音を立てて、矢が黒いケモノをかすめる
足を止めて顔を起こした黒いケモノが、意味ありげに口角を吊り上げる
赤く鈍い光を放つ瞳
怒りと悲しみと、溢れる憎しみ
その手を前にかざし
遠い時へと続くあの深い暗黒への入り口を開く
追っ手のケモノを振り返り、意味ありげな顔・・・
その手にはケモノ達によって不印された筈の宝玉「天木宝」と対を成す聖典「天木典」
そして自らの身体を、夜を切り裂いた暗黒の隙間へと、戸惑うことなく滑り込ませる。
手に握り締めた宝玉を頼りに、遠い時へと思いを馳せて・・・
残された深い夜の闇には、獣たちの乾いた鳴き声が虚しく木霊していた。