19/19
それぞれの場所(11)
その夜、現れた翔太に連れられた環は成長していた。声も出さず、動きも緩慢なのだが、丸々と太り、それを翔太が抱きかかえていた。
「あらあら、また少し大きくなったのね、あなたはおじいさんのままなのにね。重くないですか?」
富貴が笑って翔太に問いかけると、ミロが
『へん、そんな幻に話しかけて何になるって言うんだ』
と悪態をついた。
「いいの、いいの、大きくなってくれるのなら、これからが楽しみだわ」
富貴はしばらく翔太と環の亡霊を眺めて、床についた。
あれから怖い夢を見ていない。富貴を追いかけて来るものはなくなった。
明日はまたデイサービスの日だ。須恵見には何を着せようか。それから簡単に掃除をして高田さんの所に器を作りに行こう。須恵見の茶碗はできた。真紀子が提案してくれたように、ふちの色を変え、えんじにしてみた。
今度は湯呑を作ろう。柄を描いてみようか。
とろとろと眠気がやってきて、富貴を包んだ。こうやって、次の日を思い描ける今を、とりあえずつないで行けばいい。




