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それぞれの場所(9)
翌日目が覚めると、もう翔太はいなかった。富貴は呆けたように、布団を片付けると、須恵見の様子を見に行った。
「お母さん、今日も外に出ますか?」
「外? いいねえ」
六月になり、日差しが強く感じることもあったが、風は涼やかだった。まだ庭で過せるだろう。
お気に入りの揺り椅子を外に出しながら、富貴は身体全体がふわふわと実態がないような、感覚になった。
揺り椅子に須恵見を座らせながら、
「お義母さん、環がね、見つかったんですよ」
と言った。
「タマキ?」
「そう」
「タヌキ?」
と須恵見がトンチンカンに繰り返したので、富貴は噴き出した。
「違う、タ・マ・キ」
力を込めて言うと、須恵見もふっと微笑んで
「そう、良かったね」
と言った。
「翔太さんがね、見つけてくれたんです」
「そう、あの子はね、いろいろ見つけてくれるのよ」
「ほんとね」
「ほんとよ」
朝食は、庭で須恵見と一緒に食べた。
それから須恵見の見える所に自分も座って、またキルトを作り始めた。




