MURDER
「久也っ」
誰かに呼ばれた気がして、俺は振り向いた。
今いる場所が、何処(交差点のど真ん中)かという事も考えずに。
ドンッ
一瞬、何がおきたのか理解出来なかった。
身体が宙に浮く。
急激な痛みが襲い、俺は意識を失った。
クスクスっ
誰かの笑い声が聞こえた気がした。
───目を開ける。
俺を見下ろす女が見えた。
「久也、あなたもこれで、私と同じだね」
その女が言った。
「留美…」
俺は思わず、その名を呼んだ。
1年前、俺が殺した筈の女。
好きだといつも、まとわりついていた。
目障りで、うっとうしくて俺が殺した女。
「お前…何で…?」
留美が笑う。
「何言ってるの? 久也。 あなた、死んだのよ」
留美は笑い続ける。
俺が───死んだ?
「何言ってんだよ? 俺は…」
───そう言って、思い出した。
俺は、車に跳ねられて…。
「好きよ久也。 これからは、また一緒にいられるね」
留美がいっそう微笑んだ。
交差点で俺を呼び止め、俺を殺した女。
もう2度と、会う事もないだろうと思っていたのに…。
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【MURDER ESS】
夏の午後。
交差点の真ん中で、貴方を待つ。
強い日差しも、焼けるような暑さも感じなくなってしまったこの身体で。
「あぢ~」
手を団扇代わりにしながら、貴方が来た。
今も愛しい、そして、誰よりも憎い貴方。
「久也っ」
こちらに向かって来るのを見計らって、私は声をかける。
貴方の耳に、ちゃんと届くように、強く願いながら。
貴方は立ち止まり、そして…
私は貴方に、再び会う事に成功した。
これからは、また一緒にいられるね。
「好きよ、久也」
私は、呆然とする久也の前で、クスクスと笑い続けた。
ESSは、女性側視点でのお話になります。
短すぎて別々に投稿出来なかったので一緒に載せました。




