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『高そうな味だね』って美味しいと褒めているのだろうか、不味いと言っているのか?

 どこをどう逃げたかは、忘れてしまったけれど、どうにかティナちゃんの後ろ姿を見つけ、合流することが出来た。

 これは、私のささやかな特技だったりする。どんなに時間がかかっても、望んだ場所に絶対に辿り着けるのだ!つまり、迷わない体質!母親いわく『野生の勘が鋭いのよ』らしい。

 そのまま、この学園の寮がある建物につき、同じ部屋に入った。期待を裏切らない豪華さだった。もちろん、家具も備え付けで、例の如く高価そうだ。そして、めちゃくちゃ広かった。さらに、部屋の脇にメイドさんが立っていた!!

 学校の教室ぐらいあるよたぶん!しかし、ティナちゃんいわく、


「うーん、思ってたよりも狭いわ。クローゼットも小さいですし」

「いや、このクローゼットどう見たって大人4人ぐらい余裕で入って、ぶつからないでラジオ体操出来るぐらい大きいよ?!もう、部屋レベルだよ!?」

「ラジオ体操って何ですか。狭いわよ、これではドレスを12着入れるのが限界ですし……」


 ドレス12着。多いのか、少ないのか?私のドレス多分これだけだし、多いのかな?

 その1着しかないドレスも、袖が引きちぎられてるんだけどね。これ、新しいファッションにしてはさすがに最新鋭過ぎるし、これを繕えるほど女子力ないし。


「はぁ、明日からドレスどうしよう」

「あっ、いいことを思い付きましたわ!」


 部屋を点検していたティナちゃんはそう言って手をパチンとあわせた。いちいち動作が可愛い。


「貴女のクローゼット私に貸してくださらない?」

「えっ?確か2つあるけれど……」

「わたくしのドレスを1着あげますから」


 いや、ドレスくれなくても、ティナちゃんの頼みだったら私、無条件で叶えてあげるからね!

 1着くれるのか、ありがたい。これで明日のドレス問題も解決だ。


「いいよ!ドレスもくれるの?ありがとう!」

「ありがと!そのみすぼらしい姿に合うかはわかりませんが……レイナ!」

「はい」


 グサぁッ!キレッキレだね。

 佐々木ヒナタ、心に大ダメージを貰った。……ん?レイナ?


「ドレスを1番最初に入れてちょうだい」

「かしこまりました」

絨毯(じゅうたん)は花柄がいいわ。カーテンも。あぁ、ノドが渇いたわね」

「かしこまりました。ロイアル・ロンドンのセイロンが届いておりますが、いかがですか?」

「何度も言わせないで、わたくしは、アッサム以外飲まないわ」

「失礼いたしました。では、直ちに御用意させていただきます、」

「ミルクもよ。あとこの子の為に(くし)を」

「かしこまりました」


 うわぁー、なんか、ウン。凄い貴族っぽい。ティナちゃん凄いお嬢様だ!……セイロンって何だろう?セロリの仲間?

 そして、レイナさんのカッコイイ。ずっと部屋の脇に控えてた人だよね?

 ティナちゃんの要望にスラスラ答えてる。……これがメイドか!……鋭い切れ長の青い目、お団子にした茶色の髪とか、颯爽を翻るスカート、仕事人って感じだ。


「ほら、ここに座って」

「えっ?あっ、はい」

「まったく、女性としてこの髪を(さら)して歩くとか、有り得ないわ。恥ずかしくないの?」


 そう言って、レイナさんが持ってきた櫛で私の髪をグイグイと()いていく。いたい、痛い。どうやら予想以上に絡まってるみたい。


「老婆の様な髪の色ね。けど、どうしてかしら?何故か美しく見える」


 まぁ、乙女ゲームの主人公ちゃんだからね。美しくないとね。キャラ落とせないから。

 ……あのイケメン共と戦えないから。



 そのまま、髪を綺麗に梳かれ終わった頃ちょうど、レイナさんがお茶を運んできた。ありがたく頂戴した。夢にまで見た水分だ。久しぶりの水分だ。私は涙をながしながら美味しくお茶を頂いた。高級な味がした。


「平民は、水分もロクに取れない生活をしているのかしら?かわいそうね。ほら、もっとお飲みなさい」


 なんか、スゴい哀れみの視線と共におかわりも貰った。ティナちゃんがとても優しかった。



 ドレスを選んで貰ったり、お菓子も貰ったり。あと、たくさん話した。久しぶりの女子トークだった。私の心が強くなった。もう、何度でも(よみがえ)れる。

 なんだかんだ、あって夜になった。ゲーマーの時間だ。ティナちゃんはもう寝ている。レイナさんも先ほど、出ていった。隣のベットに眠った天使がいる。いけないイタズラをしてしまいそうだ。


「に、してもお腹すいた」


 そう、お腹空いた。ティナちゃんはお菓子でお腹いっぱいになったのか、レイナさんに、


「今日の晩餐は要らないわ、シャワーを浴びるから準備しなさい」

「かしこまりました、パジャマを御用意しておきます」


 って言う会話をしていた。ティナちゃんのお(こぼ)れで『貴族のディナー食べれるかも!』という算段もあっさり砕けた。

 豪華なご飯をいっぱい食べたい。誰かの奢りで高い肉食べまくりたい。


「なーんか、ないかなー?」


 一類の望みを掛けてカバンひとつ分しかない自分の荷物を漁る。カバンひとつ分って、普通に少ないね。


「……あっ、マドレーヌ」


 もっと腹に溜まる物が良かったけど仕方ない、これ食べよ。

 ん?ってこれ!あの噂のマドレーヌじゃない?攻略キャラとの好感度が上がると主人公ちゃんが作るお菓子!1人を除いて大絶賛されるんだよね。確か。


「てっことは、最初で最後のマドレーヌじゃない?これって」


 そうなのだ。これは多分、主人公ちゃんが私になる前に作ったものだろう。だけど、もう私になってしまった。主人公ちゃんは、もうお菓子を作れないのだっ!

 ちなみに、私の料理レベルはLv2。カップ麺のお湯を沸かせるレベルである。マドレーヌを作るなんて夢のまた、夢。


「食べる音とかで起こしちゃうといけないし、外で食べるか」


 そうと決まれば早速外へ。

 私はそろぉーりと部屋を抜け出した。


仕事人レイナさん、お茶を準備しながら一言。


「以前、アッサムと言ってセイロンお出ししても気が付かなかったのに……」


ティナちゃんのメイドは地味に闇がある方だった。

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