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天才の言っていることがわからない。断じて私の理解度が低い訳じゃない。

 青い空に花弁を撒き散らす桜。そんな豪華なセットを背景に立つ青年。


 身長は私の頭1つ上ぐらいで結構高め。全体的に筋肉が無いのかひょろりとしている。柔らかそうな生地の貴族服は例の如く高そうである。売りたい。……ってそれじゃ追い剥ぎか。

 しかし、その高価そうな服に反して首に巻かれた黄緑色のマフラー?厚手のスカーフ?はところどころ焼け焦げ、ボロボロである。

 髪は暗の黒。寝癖だろう、至る所の髪が重力に逆らってはねている。簡単に言うとボサボサ。少し長めの前髪から覗く探究心に煌めく目。その瞳の色は昼間の鮮やかな森を映した、泉の碧。

 そして例の如く、イケメンである。……滅びろ。

 そして、最悪なことに私はコイツを知っている。



【ダニエル・スワチュード】

 この世界を反映した乙ゲー『キミだけを救う』の攻略キャラクターの1人。自称ではなく、あらゆる人から認められ、賞賛される『天才魔法研究学者』。ちなみに、私が付けたアダ名は『ナヨっと眼鏡』である。



「…?大丈夫かい?」


 はい!早速出ました!私の大ッ嫌いなイケメン動作~!

 小首を傾げるだけでなく、目尻もついでに少し下げる。更には小さい笑顔付けて、優しさ溢れる声で「大丈夫?」と聞く。

 いやぁー、イラッとするねぇー。小首傾げるだけででも、イラッとするのに、目尻と微笑みをトッピングした三コンボ。破壊力はコンボで3乗。私のイラッとポイントも、3乗!更には、慈愛を含んだ少し低めのボイスで「大丈夫?」と囁く。

 まるで『イケメンが貴女のこと心配してやってるぞー、嬉しいだろー』って言う副音声が聞こえてくるよ。ムカッとくるわぁー。


「本当に、大丈夫?」はーい、お代わり入りマース。

「だっ、大丈夫、ですッ!」


 勘弁してよ……。いや、この世界の舞台が『キミだけを救う』がベースだって気づいた時から覚悟はしてたけどさぁ!

 私本当にイケメン苦手だし、嫌いなんだよ。なんか、背景にその桜の花弁が舞っているみたいなキラキラオーラ。……って本当に桜の花弁舞踊ってるし。春だし、タマタマだよね?

 とにかく、そのキラキラオーラ浴びてるとさ、なんか、自分のひん曲がった根性やら、性格やらが明るみに晒されてる気分になってくるんだよ。イケメン共が放つオーラは明る過ぎるんだよ。私の暗さが余計目立っちゃうじゃんか!


「なら、いいのだけど。それよりも、キミもこの炎の美しさがわかるんだね?」

「いえ、わかりません」早く話終われオーラを放ちつつ

「いや、キミは気付いているよ。このElement比の美しさにっ!」


 なんだよ。わかんないって言ってるだろ。……だから嫌いなんだよ。イケメン。『ボク、貴女のことわかってあげてるよー』感出してるから。あと、人の話聞かないし。


「なぜなら、キミとボク以外の人々この炎をは目の端に映すだけで、そのまま去って行ってしまう。だけど、キミだけは違うっ!好奇心の向くままに近寄り、じっくりその鏡のような瞳にコレを焼き付けている。それはつまり、炎に隠された壮大な真実に気が付いた、そういうことだよ」


 ……どういうことだよ。それにしても話なっがいなぁー。地味にテンションも高いし。てか、さっきから『立ち去れ立ち去れ早く立ち去れ』オーラ全力で迸らせてんのに、全っ然、気が付いてないよ。空気も読めないのかこのイケメンは。


「コレを造ったヤツは凄いよ。魔法の作用と理論はAndersことをちゃんと理解している。わかるかい?魔法の持つLogikと作用、のそして想像力3つの関係をSubjektivに完全に近い形で観て、そこにInstabiles Molekülを見出し、安定させるために炎と風、2つのMagische Kraftを完璧かつ、美しいElement比で…………etc.」


 やっべー、何言ってんのか全くもってわからない。何語だよ。専門用語?

 さすが『天才魔法研究学者』の名は伊達じゃないね。天才の言ってることは意味不明だわ。

 そしてやっぱり話なげぇー。ここもイケメンの悪いとこだよね。自分に盲目的な自信があるから、自分の話を絶対ちゃんと聞いてるって誤解してるところ。

 ていうか、コイツの出会いイベントこんなに長めかったっけ?確かにベラベラと喋ってた記憶はあるけれど、こんなに長くは無かったし、言ってることこんなに意味不明じゃなかったような?それに、コイツは確か銀の丸眼鏡をかけてたような……?


「……で、と近く素晴らしい大型固定魔法なんだよ。……っと、ついつい話過ぎちゃったみたいだね」

「いえいえ、結構興味深い話でした」すっごい嘘。

「長らく引き留めてしまってごめんね」本当だよ。

「もう、入らないと入学式が始まってしまう」誰のせいだよ。

「キミは見たところ新入生だろう?」

「はい、そうです」

「やっはりね、入学おめでとう。このバッチをつけて。……うん。似合うよ、可愛らしい」

「これは、星?」

「そうシリウス、この世で太陽を除けば1番明るい星。このジーニャス魔法学園の紋章だ」


 あぁ、ゲームにもこのマークあったな。校紋だったのか。1番明るい太陽は王様で、月が王女様。星は国民。そしてシリウス含む一等星がこの学園。この国が数多の星の中で1番明るい、つまり、


「『シリウス、星の中で1番に輝かんことを』この学園に入った誉れのひとつ。たくさんの人、たくさんの才のなかでも1番であれ、って意味だよ」


 そう言って、眼鏡かけてなかったが、通称『ナヨっと野郎』は桜吹雪の中に消えていった。

 私もその背から全力で目をそらしつつ、学園のチョー豪華な昇降口を潜ったのであった。


 ___こうして、私の反乱混乱錯乱でめちゃくちゃ、でも、めちゃくちゃ面白い、ジーニャス魔法学園生活の幕が上がった。


ナヨっと眼鏡、桜の花弁に紛れつつ一言。


「ボク、新入生案内係だったけど、結局1人しか案内出来なかったな……」


天才だが、使えない先輩であった。

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