つまらない授業があったら、居眠りするのではなく、「この授業は、なぜつまらないのだろうか?」と考えてみてはどうだろう?
「がーー!疲れたー!」
『かまってかまって』と言わんばかりの大声で喚く少女が1人。……そう、私である。
「喧しいですわね」
「この学園広い、上に入り組んでるし、無駄にきらびやかだから目疲れるし」
学園内なのに森とか、湖とかあるんだよ?私じゃなかったら、迷ったまま帰ってこれなかったぞ!多分。
「あー、足パンパンだよ」
「そんなことより、この部屋どうです?」
そんな。私のいたわってオーラをガン無視して喋るティナちゃん。
「えーと、花だらけだね」
「カワイイでしょう?」
そう、花だらけなのだ。至る所に花が活けてあるのはもちろん、壁紙、絨毯、ベッドの柄も全部花がら。座っている椅子にも花の細工が施されている。さらには今お茶を飲んでるカップにも花がついてる。
「しかも、天上にまで花描いてあるし……よくこの短時間で出来たね」
「頑張りましたから」
笑顔で言うティナちゃん。背後に控えているレイナさんもウンウンと頷いている。
頑張りましたからってもうそういう次元じゃないよ?!天井絵とかガチ過ぎだろ、さすが貴族様。
「てか、私のスペースもやってくれたんだ?」
「田舎くさいんですもの、周りの物ぐらいカワイくした方が良いと思いまして、せめてもの救いですわ」
なんで。この子はこんなにも人の心を抉ってくるのだろう?……でも、もう昨日で鍛えられたからね、何度でも、甦れるよっ!
「そう言えば、明日、クラス分けがあるようですわ」
「……クラス分け?」
「知らないんですの?この学園の名物でもあるのに」
……あー、知ってる。知ってるどころかやったことあるよ、ゲームでだけど。
確か個人の魔法戦闘力の高さで入るクラスが決まるんだよね?しかも、年齢関係なし。実力が高い者から上のクラスに振り分けられるんだよね。
「全く。貴女の頭と耳はマグロですか?そこかしこで噂になっているのに」
うわぁー、ダブルで貶されたぁ。多分、歩くしか能がないの?って言ってるんだよね?
「……そんなにウワサになってるの?」
「えぇ。なんだって国王様、軍のトップの方々がいらっしゃるから、国王様方の目に止まる最高の機会ですわ」
あー、なんだっけ。この試験用に捕らえられた悪魔倒すんだっけ?確か。みんなの前とか、緊張しそうだね。
「ふーん、だからみんな必死になって目立とうとするんだね」
「えぇ。国王様に見初められるなんて最高の誉れですから!」
「ティナちゃんも国王様に褒められたいの?」
「えぇ!もちろん!上手く行けば未来の王女になれるのですからっ!」
そう、興奮したのか少々息を荒らしながら言う。愛おしい。……ん?未来の王女?どゆこと?
「まだ、王子様はまだ婚約なさってないっ!」
「あー、理解。国王様の目に止まるって、
『なんやコイツ、強いのお!』っなって、
『よし。ワシの息子のヨメにしたろ!』ってなる訳ね?」
「うふふ、いつかきっと私は国の頂点に立ちますわ」
なんか、デカい野望持ってるね、ティナちゃん。さすが、主人公ちゃんと王子様の恋を邪魔する役!
……そっかー、そのうちティナちゃんとも仲悪くなちゃうんだよね。いやだなぁ。
「……貴女にも負けるつもりはありませんことよ?」
「私は、ティナちゃんに負けるつもりしかないよ?」
この状態のティナちゃんに啖呵を切るほど、私も馬鹿じゃない。でも、まぁ、主人公ちゃん魔法暴走させて悪魔倒すけどね。
「……って!魔法!!」
「っ!!急に大声出さないでよ!貴女の野蛮な耳と違って私のは繊細なんですから!」
ティナちゃんの心抉られる抗議なんて耳に入らない。ヤバイヤバい、どうしよう。だって私、
「魔法使ったことないっ!!」
「…………はぁ?!」
魔法使ったことないよ。てか私魔法使えんの?主人公ちゃんの魔法ってなんだっけ?重力魔法だ。重力魔法ってなに?そもそもどうやって魔法使う?魔法ってなにもの?魔法魔法魔法魔法。
「魔法魔法魔法……なんか、魔法がゲシュタルト崩壊してきた」
「ちょっ、ちょっと大丈夫ですの?!」
「……あはは。10は3で割り切れるんだよ。私スゴいでしょう?」
「レッ、レイナ!これを何とかしなさいっ!」
「お嬢様。私にも出来る事と、出来ない事がございます」
……あはは、うふふ。これもう詰んだやつだ。
「いろいろ諦めてとりあえず、寝よう」
「なんです?!その全てを悟った笑顔は?」
ウン。そうしよう。それがいい。
私は椅子から転がり、バタンとうつ伏せに寝っ転がった。いや、倒れた。
「ちょっ、え?そこは床よ?!」
「平民は、床で寝ることもあるのです。そっとしておきましょう」
レイナさんは変人の扱いを心得ているようだった。そう、変人は放っておくに限る!構ってると呑み込まれるよ!
「毎晩眠りにつくたびに、私は死ぬ。そして翌朝目をさますとき、生まれ変わる」
……願わくば、目覚めた時、魔法使いになってますように。って、こんな年になって願う夢じゃないけど。
倒れた私を見たレイナさんの一言。
「ここだけ掃除が出来ませんね……」
……観点がちょっとズレてた。