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馬鹿にされるってわかってて馬鹿にされに行く私だけど、断じてドMじゃない。

 現在、学園散策中。

 昨日はあの上がったテンションを押さえつける事が出来ず、よく眠れなかった。ようやく浅い眠りに落ちたかなぁ〜って思ったらもう朝で。隣りのティナちゃんからものすっごい睨まれていた。解せぬ。

 そんな私の思いとは関係なく空はよく晴れていて、爽風とともに桜の花弁が踊っている。

 今日は、引越し日。昨日の午後まるまる空いてたのにまだ終わってないんだよ?信じられる?


「まぁ、それもそのはずだよね。ティナちゃんなんか柄が気に入らないからって絨毯剥がしてるし」


 他にも、備え付けのベットを天蓋付きにしたり、壁に絵を描いたり……やりたい放題。さすが貴族様。


「そりゃ、午後ずっとやったくらいじゃ終わんないよね」


 つまり、貴族様たちの自室改造日である。

 もちろん私はそんなことする必要もなく、財力も、人もなく。ティナちゃんはお部屋改造の現場監督で忙しく。


「晴れて、私はタダの、暇人!」


 こんな感じで、誰もかまってくれる人が居ないため、ボッチ学園探検をしているのだ。……寂しい。


「まぁ、理由はそれだけじゃないけどね……あっ、やっぱり居た!」


 建物に囲まれた庭の様な場所。そこにポツンと置いてあるベンチに人が居た。

 バレないようにとの影から観察。……ビンゴ!


 記憶が確かなら背はかなり小さく、いわゆる、ショタだったと思う。全体にもしゃっとした茶髪天パの持ち主。だが、けして貧乏臭い感じはせず、むしろある種の気品的なものが滲み出ている。

 今はその大きく、吸い込まれてしまいそうなほど黒い瞳を鋭く細め、本を読まれていらっしゃる。

 だが、片手にあるロリホップキャンディが彼の可愛さを引き立ててしまっている。



【ノア・アンダーウッド】

『キミだけを救う』の攻略キャラ。ちびっ子。そのクセ態度はデカい、偉そう。あと、確か養子。唯一、イケメンでは無い、そこは褒める。ちなみに、私が付けたあだ名は『ショタっ子坊や』略して『カワイイちびっ子』だ。

 死因は、魔力暴走による、自爆。



「はぁ、そろそろ部屋に入れるだろうか」


 その、小さな口を振るわせそう呟く。……たぶん。いかんせん遠くてよく聞こえない。


「はぁ、なんで私がこんなストーカーまがいの行動をしなきゃいけないんだ」


 もちろん、出会いイベント攻略の為である。

 あっ、立ち上がった。そのままちびっ子は読んでいた数冊の本を片手に庭を出て行く。


「タイミングを合わせて……いまだっ!ベンチにゴー!」


 ちびっ子の影を追うように私もベンチに向かう。『あるもの』回収の為に。


「……あった?」


 ベンチには、ちびっ子学園読んでいたであろう、本が置きっぱなしにされていた。あれぇ?おかしいな、確かキャンディーだった筈なのに。……まっ、いっか。


「あっ、あのぉ!そこのちびっ子!本をお忘れですよー!」


 あっ、やべ。ノリでちびっ子って呼んじゃったよ。

 ……あぁ、ふり向いてくれたけど顔が、ウン。もうカンカンに怒ってらっしゃる。イケメンだったら、『ざまぁww』ってなるけどこの子可愛いし、性格しってるから、ただただ恐怖でしかないわ。


「……あのぉ、これ貴方のですよね」

「……」


 沈黙が痛い。その大っきい目からビーム出てんじゃないの?


「……あぁ、確かに僕のだったね」

「だった?」

「なに触ってくれちゃってんの?」

「へっ?」

「うわ、本当最悪。穢れちゃったじゃん、もうそれゴミだから」

「えっ?えっ??」

「僕、平民が触ったもの触ったら手がかぶれちゃうから、その本もう読めないんだ」


 手に持った灰色キャンディーをヒラヒラさせながらのたまう。……関係ないけどそれ何味?ゾウ味?


「この本は……」

「テキトーに処分しといて、平民程度の頭で理解出来る内容でもないと思うし。ありがた迷惑ありがと、ゴミ溜めちゃんっ」

「……なっ?!」


 なっ、ナンダトォ!ゴミ溜めちゃん!?さすがに温厚と名高い私でもこれは怒った。もう怒った。可愛いからって調子に乗りやがって。

 そもそもお前も平民の出でしょ!?

 それに私穢れてないし!この美しい見た目ゴミって呼べるとか神経疑うわぁー、ドレスだって今日はレイナさんに着せてもらったから皺くちゃじゃないよ?!こんなにも神秘的で美しい主人公ちゃんだよ?

 お前なんてもうあれだ。だだのチビだ。やーい、チービチービ!


「じゃぁね。もう一生僕の視界に入んないでねぇー」


 可愛くウインクしながら去っていった。もちろん本は私の手の中だ。


 ウン。もう、コイツ、嫌い。殴りたい。


 ……ちょっと、冷静になろう、私。胸に湧き上がるこの本の角で頭を殴りつけたいという衝動を必死になだめる。


「てか、ゲームと違い過ぎない??」


 そうなのだ。元々はキャンディーを忘れる筈なのに、高そうな分厚い本を忘れていくし。罵倒だってこんなに沢山言われなかった。せいぜい『穢れたから要らない』ぐらいしか言われなかった。それでも酷いけど。

 ……そんなに、ちびっ子って呼ばれて怒ったのかよ。心せっまいなぁー。シャーペンの芯折れたぐらいでしか怒らない私を見習えよー。


「てか、本どうしよ…………売るか」


 キャンディーよりも高値で売れそう。見た感じ古い感じするし、高そうだし。

 ……ウン。そう思うとイライラが薄れてく感じがする。


「思わぬお金も手に入ったし、散策の続きでもしますか。……この学園広すぎ、マップ覚えんのしんどい」


 ググゥーっと背伸びをし、私はまた歩き出した。質屋どこだろ?そもそもあんのか?……そんな小さな不安を抱えながら。

天パをフワフワさせながら歩く、チビの一言。


「この煙味のキャンディー、結構美味しい」


……味覚が少々おかしかった。

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