ダイバー
小説を書くのは楽しいですね。
河川敷に着いた俺たちは、すぐに帽子を見つけた。見つけたのだが・・・・・
「あ、あれだよね。おやつとかあげたら返してくるかな?」
犬がくわえていた。
「敬はなんか犬が好きそうなもの持ってる?」
「俺のポケットにはスマホとあいつから貰ったスーパーボールしかないぞ。」
河川敷に桜宮と行くとなんかトラブルおきそうだから財布は持ってきてないとか言えない。
「そっかー。私もなにも持ってなかったし、捕まえるしかないか!」
そう言って桜宮は犬に向かって走り出した。
「敬はそっちに回って!」
「お、おう。」
「そっち行ったよ!ちょっと!なに逃がしてるの!」
「ご、ごめん。」
「ほらこんどはそっち!」
「もう帰っていいかな…」
「ほら、行ったよ!」
「よし、こんどこそ!…あああ!また逃げられた!」
「…使えないな敬。」
もう泣いていいかな。
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「はぁ、はぁ、はぁ、やっと追い詰めた…」
早く取り返して家帰ってゲーセン行こう。
「観念しろ!」
そう言って桜宮が手を伸ばすと・・・・
「あ」
犬がくわえていた帽子を川の方へ放った。俺はとっさに帽子に手を伸ばし、ギリギリのところで帽子をつかんで・・・
「敬ナイス…
そのまま手すりをこえて川に落ちた。
…ナイスイン。」
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「なんでこうなるんだよおおおおおおおぉぉぉぉぉぉ!!!」
2日連続で川ダイブWASとか呪われてんのかな。財布持ってこなくてほんとよかった。
「まぁまぁ、帽子は無事だったからよかったじゃん。」
帽子びしょ濡れだけどな。
俺たちは、帽子と俺を乾かすために河川敷の土手で夕日に当たっていた。
「きっと日頃の行いが良くないんだよ。」
「お前よりはいいと思うんだが。」
「私ゴミ拾いしながら帰ったりしてるよ。」
「………嘘だろ………」
「なんでそんなに驚くの!?酷くない!?」
「酷くない。」
「酷いよぉぉぉぉぉぉ!」
毎日のように俺をトラブルに巻き込む桜宮がそんないいことしてると聞いて心から驚いただけだ。
「もうー、そんなんだから敬はモテないんだよ?」
「やかましいわ。」
俺だって昔は彼女いたんだぞ、とは口に出さなかった。そのことを言ったら、あのころのことを思い出してしまう気がするから。そして、
「私は、敬のこと好きだけどね。」
そんな桜宮の小さな小さな独り言は、俺には聞こえていなかった。
「なんか言ったか?」
「……言ってないよ。」
桜宮は、笑顔でそう言った。