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ある日の午後
第一章のスタートです。
俺━━━光山 敬は今とても困っている。
なぜ困っているかと言うと、今俺は崖と崖の間にまたがっている大木に、右手だけでぶら下がっている状態だからだ。
こうなった理由はいろいろとあるが、まぁ端的に言うとあいつ━━━桜宮 希のせいだ。桜宮はさっきまで俺がいた大木の向こうで
「大丈夫ー?」
などとさっきから叫んでいるが、大丈夫なわけあるかよ。このままじゃ俺の人生にエンドロールがくるぞ。
「今警察呼んだからー!もう少し耐えてー!」
それを聞いたのはもう10回目だ。別に2分おきに言われなくてもわかってるわ。しかしすぐ来るのなら耐えられるんじゃないか?
「すぐ来るのかー?」
「1時間はかかるってー!」
あ、これ無理ゲーだわ。
「桜宮ー!もう右手がもたない!」
「ええぇ!じゃ、じゃあせめて写真だけ撮らせて!」
「ふざけんなああぁぁ!」
俺は叫びながら谷底へと落ちていった。