EP:08 お宝の山と生存者遭遇
流石に徒歩だと距離があるのでそこら辺に転がってたチャリンコに乗り込み出発
何かしらの妨害があるかな?と思ったが突然変異種も賊も居らず
当然、渋滞も全くなくスムーズに渋谷に到着した。
暁「うっへ……腐臭がヤバイな。」
咲実「相当な激戦区だったっぽいな。」
ゾンビも結構な数がうようよしてるが
それ以上にドン引きするほどの数の死体が転がっている。
死体の中には軍人らしき人も見られ、ここで壮絶な戦闘があったことがわかる。
その戦闘で勝利したのがゾンビだというのも
何人かいる軍服ゾンビを見て想像できた。
和「これほど大きな街には自動清掃ロボが設置されてるはずですが……。」
咲実「そもそも、死体とか除去してくれんのか?」
和「わかりませんが……
あまり不潔な場所に暁様を歩かせるのは個人的に看過し難いので……」
咲実「まぁ、そうだな。」
暁「そこまで過保護にならんでもいいんだが……。」
和「駄目です。こんな所に長居するなんて不健康じゃないですか」
咲実「それに食料をあんまりキショイ所を通って持ち帰りたくはないだろ?」
暁「それもそうか……
けど俺の居た時代に清掃ロボとか無かったからどんなのかわからないんだよな。」
咲実「そこら辺はオレと和で探すさ。
暁はスーパーとかコンビニに良さげな食料があるか確認してもらっていいか?」
暁「了解、気をつけてな。」
咲実「そっちこそな。」
和「すぐに済ませてきますね。」シュパッ
咲実「ちょ、はやくね!?」ダッ
一時も離れたくないと言わんばかりに超高速で走り出した和と
それを追いかける咲実を見送って俺は食料探しを開始、あとDVDとか
暁「娯楽品は……アホみたいにすぐ見つかったなぁ……」
捜索を開始してすぐ
俺の居た時代でも超有名だった某レンタルショップを発見した。
流石にこんな状況下で娯楽なんかにうつつを抜かしていられないのか
コンビニやスーパーなんかは窓ガラスが割れまくって
店内もぐちゃぐちゃで死体なんかも散乱してるのに対して
レンタルショップの店内には死体もゾンビも居らず、
埃が積もってるだけで完全に放置されていた。
暁「さて……あいつら一体何を見るんだ?」
早速、適当に収集しようと思って入店したが……
思ったら和たちの好みを知らなかった。
和はよくわからんが咲実は結構好みでDVDを選り分けてたはず
どういうのを選んでたかまでは確認していなかった。
暁「まいったな。大量に持ち運べなくはないがどう考えても嵩張る。
棚まるごと運ぶにしてもチャリだからバランス悪いし……。」
暁「うん、後回しだな。一緒に見回ったほうが早い」
結局、なんのために入ったのかわからないが店を出よう……
とした所で思わぬ発見をした。
暁「お菓子?」
出入り口付近まで戻ってくると
それなりに大きなカートに大量のお菓子が陳列されていた。
暁「マジか、都会のレンタルショップにはお菓子なんか売ってんのか」
陳列棚には定番のポップコーンにポテチ、
カラフルなグミやらチョコやらが所狭しと並んでいた。
陳列されたばかりなのか結構大量に置いてある。
暁「ちょっとバックヤードとかも確認するか」
食料があるなら話は別、とバックヤードや倉庫なんかを隅々まで探索……すると
暁「マジか~めっちゃお菓子あるじゃん」
バックヤードと倉庫には陳列されていたお菓子が箱で大量に保管されていた。
コンビニ、スーパーは残ってるかどうか怪しかったが
こっちは盲点だったのか全て手付かずで置いてあった。
暁「幸先いいなぁ。
クイーンの好きそうなものも結構あるし、全部持ち帰りだな。」
近くにかなり大きいディスカウントショップとホームセンターもあったから
そこで入れ物を探すなり作るなりすれば全部持って帰れそうだ。
暁「とりあえず、全部レジの所に移動してっと」
嗜好品だが食料を大量ゲットしたので上機嫌で移動作業をする。
暁「そう言えば……こいつもある意味、保存庫だよな……。」
一つ残らず、食料品を積み終えた後、ふと自販機が目に入った。
定番のドリンクの自販機にアイスの自販機、それにカップ麺の自販機
店内にあったからか人目につかず、未だに稼働している。
暁「アイスは特にクイーンのおみやげになりそうだな。」
アイスは流石に今中身を確認する訳にはいかないが
ドリンクの方は向こうで冷やせるから問題ないだろう
暁「よいしょっと!」ベギベギッ!!
隙間に手をねじ込み、力を加えるとあっさりと自販機が開く
こっちも補充したばかりなのか大量のドリンクが中に入っていた。
暁「おぉ~結構あるなぁ。」
変なドリンクも混じってるがオーソドックスなのも結構ある。
暁「とりあえず……買い物カゴに詰め込んどくか」
後でお菓子類と一緒に適当な箱を見繕って運ぶのは確定だが
忘れないように先に買い物かごに移しておく
暁「それと……和は紅茶で咲実はスポドリだったな。」
二人の好みの飲み物を差し入れとして持っていくために幾つか避けておく
暁「なんか……レンタルショップだけで大半の目標が終わったな。」
思わぬ発見で想像よりも早く、
菓子類とドリンク類の収集が終わってしまった。
おまけにアイスというレア品までゲットするという幸先の良さ
暁「どうするかなぁ……先に二人と合流するかなぁ……。」
まだ野菜とかを探す任務が残ってるんだがこっちの方は正直望み薄だ。
コンビニもスーパーも遠くからでも見ればわかるほど荒れてたし
中も死体まみれでちょっと食料収集しよう、とは思えない光景だった。
倉庫とかに行けば手付かずであるかもしれないし
冷蔵庫とかに色々はいってる可能性はあるが
重箱の隅をつつくかのように回収されまくってたら厳しい
そもそも、腐ってる可能性も高いし……。
暁「ん~…………よし、合流を優先するか」
和のあの速度ならもうロボットを起動させてる可能性が高いし
見つけた食料品も結構な量がある。
一旦任務達成ということで二人を探―――
ターンッ
暁「っ!」ダンッ!!
いきなり遠くから聞こえた銃声らしき音
二人に何かあったのかと脳裏によぎった瞬間、俺は動き出していた。
…………
………………
和「…………生存者……ですよね?」
咲実「一応?」
賊A「へ、へへ……運がいいぜ。」
賊B「うひひ……女だ……女だぁ」
暁と別れて掃除ロボットの捜索に出た二人
掃除ロボットは比較的すぐに見つかったが早く見つかりすぎて時間が余ってしまい
少しでも掃除ロボットの仕事が終わるように自主的に清掃をしていた。
しばらく、無数の死体を片付けていると
……いつの間にかアサルトライフルを構えた男が5人ほど、
彼女たちの周りを囲っていた。
一応、生存者のようで先手必勝で攻撃はしなかったが
彼らの表情には下卑たものが含まれていて二人に嫌悪感を抱かせた。
咲実「あ~、どう見ても賊だよな?こういうときってどうするんだっけ?」
和「サーチ・アンド・デストロイ?」
咲実「だったっけ?」
実際は説得して救出という指示を受けているんだが
仮にも少女を前にして銃器を向けて、
下卑た笑いで近付いてくる相手を説得したいとはとても思えない。
ゾンビではないし、感染者でもないみたいだが
二人にとってはむしろゾンビのほうがまだマシに思えた。
咲実「とりあえず、あれだ。オレが前の3人潰すから」
和「私が後ろの2人ですね。」
対話する気も無い二人は役割分担を決めてお互い背中合わせに立つ
賊C「うへへ~大丈夫だよぉ~痛くしないからねぇ」
賊D「そのまま動かないほうがいいよぉ~
せっかく今日まで頑張ったのにさぁ?死にたくないだろう?」
賊E「ひひ、ひひひ」
ゾンビに囲まれてる中で生きてきた彼らにはまともな思考が残ってないのか
思ったことを口にして二人に不快感を与え続ける。
……しっかりと見れば彼女たちの肌の色は薄く青白いのにそれに気付いていない。
特に期待していたわけでもないだろうが……
まともじゃないと揃って判断した二人は軽く目配せをして
咲実「ふっ!」ダンッ
和「っ!」ヒュンッ
即座に処理するために動き出した。
賊A「ヒヒャァッ!」ターンッ
和「っ!?」バスッ
流石に地獄の中を生き抜いてきただけはあるのか
常人では捉えられない速度で動き出した和に賊Aの放った銃弾が腕に命中する。
だが
賊A「ゴヒャッ!?」ゴキンッ
半ゾンビ化している和にダメージが入るわけもなく
命中させたことに油断した賊Aは首を撫でられるようにへし折られて絶命した。
賊B「ペギャッ!?」ドシュッ
返す刀で賊Bは喉を貫かれて絶命……
和が相対した賊の二人は何が起ったのか理解も出来ず、
和を前にしていたときと全く変わらぬ表情でこの世を去った……。
対する咲実の相手にしている三人の賊
こちらは和以上にシンプルに終わっていた。
賊CDE「「「」」」しーん
瞬殺。まさしく瞬殺だった。
この三人が賊Aに劣っていたわけじゃない。
単純に戦闘において咲実が圧倒的に優れていた。
攻撃力もそうだが速度も和をゆうに凌駕しており
和が銃を撃たれたタイミングですでに二人が絶命させられていた。
ただ、横っ面をビンタした……それだけで頭が消し飛んでしまった。
もはや戦闘でもなければ蹂躙でもない、ただの作業
咲実が手を振った……そしたら死んだ。それだけのことだった。
だがもし、もし彼らが生き残っていたとしても結果は変わらない
……いや、もっとひどい結果が待ち受けていただろう。
暁「大丈夫か!?」
5人が死んだのとほぼ同時にもう一人の死神が現れたんだから……