EP:07 車の墓場と腐った首都
暁「ってことで到着、東京新地区前」
和「特に何もありませんでしたね。」
障害物を撤去した先へまっすぐに三人で駆け抜け、
数時間程度で目的地に到着していた。
元々、三人共常人離れしたのもあるが……
咲実「漫画とかゲームとかだと中ボスっぽいのが出るシーンなんだけどな」
暁「そう都合よく居ないわな。」
特に障害らしい障害が無かったのも理由の一つだ。
そもそも道中には人っ子一人居なかった。動物も居なくて不気味だったが
和「流石に東京内ではそうは行かないでしょうけど……。」
暁「んだな。さて、どうするか……。」
目の前に見える東京新地区だが話の通り、
地面が盛り上がっていてかなりの絶壁がそびえ立っている。
周辺にはリフトのようなものが幾つかあるが遠目では動いているようには見えない
現状、ゾンビくらいしか居ないし、頻繁に使われるわけもないから当然だが……
咲実「普通にリフトで上がればいいんじゃないか?」
和「何か気になることでも?」
暁「ん~、仮に上に生きた人間が居たとして……それが賊の類だったとしたら
リフトを監視してるんじゃないかなぁと思うわけだ。」
咲実「人を襲うのが目的ならそれが一番楽そうではあるよな。」
和「ですが、凶悪なゾンビが蠢く中でリフトを監視し続けられるでしょうか?
いくら小規模都市と言っても言うほど狭くはありませんし……。」
暁「それもそうか……じゃあ、普通にリフトを使うか」
咲実「おっけ~」
和「了解しました。」
念のためにあたりを警戒しながら進む俺たち
東京新地区に近づくごとにゾンビの数が増え、
ゾンビの死体(多分落下死)も散見されるようになった。
だが、突然変異種らしきものは居らず、
襲ってくるゾンビも居らず、順調にリフト近くまで到達する。
咲実「お、あれって車じゃね?」
和「と、いいますか……駐車場ですかね?結構な車がありますね。」
リフト付近に到着すると大量の車が停車していた。
リフトを使うために車を止める場所……だと思う。
ここでパニックがあったか、過去に到達した生き残りが車上荒らしでもしたか
幾らかの車窓が割れていたり、車自体がぺしゃんこだったりしたが
案外使えそうな車も結構多かった。
咲実「何台くらい持っていく?」
和「使えない場合もありますし……4台くらいでしょうか」
暁「すげぇ……違和感全開の会話だな。」
咲実「自分でもそう思うけど……持てるものは仕方ないだろ。」
和「ですね。」
暁「便利だから問題はないんだけどな……どういう車がいいんだろうな?」
和「やっぱり……ワゴンでしょうか?」
咲実「色々突っ切っていくならトラックとかバスのがいいんじゃね?」
暁「キャンピングカーとかもあるな。
トラックとキャンピングカーを改造したら移動拠点とかにならんかな?」
咲実「おぉ~それはいいな。それで行こうか」
和「どれで行きます?」
咲実「んっとな~」
車を三人で物色しながらどれがいいかを選ぶ
俺は移動できるなら何でも良かったが……
和は出来ればキッチン完備で生活空間がしっかりしたものがいいと主張
咲実は外見が格好いい感じが良いと主張した。
外見に関してはクイーンと一緒に調整すればいいんじゃね?という俺のセリフに
和の主張を優先して選ぶことに
和「そうですね。このトラックはなかなか広くていいですね。」
まず選んだのは中型のコンテナ付きトラック
大型では小回りがきかなすぎて微妙だし、
小型はサイズ的にキャンピングカーと変わりがないということで選択
冷凍食品も輸送できるようなタイプで空調完備というのが気に入ったらしい。
和「キャンピングカーの方は……これにしますか」
キャンピングカーの方はDVDやら冷蔵庫やらの付いている高級そうな物を選択
テレビは電波が止まってるから見れないがDVDは問題なく見れるらしいので
娯楽も楽しめるということで選んだらしい。
ついでに嗜好品の一つとしてDVDなどの映像作品も回収目標に加わった。
クイーンが堕落しそうだが普段はすることもなくて暇な状況ではあるので了承
ひとまず、全員で他のキャンピングカーや
テレビ付きの車を探索してDVDやらCDやらをかき集めることに
咲実「や~結構あったなぁ。」
暁「車に置いてあるもんなんだな。」
和「稼働していた頃はここで暇をつぶす必要があったのかもしれませんね。」
暁「首都だもんな。人の出入りは多かっただろうしな。」
咲実「こういうのは不謹慎だが……
お陰でちょっとは楽に目標達成できたな。」
和「ですね。」
暁「念のために車を離れた位置に移動させておこうか」
咲実「なにかあるのか?」
暁「幾つかぺしゃんこの車があっただろ?
アレの上に落ちてきたっぽいゾンビの死体があってな。」
和「なるほど……落下して潰されては元も子もありませんね。」
咲実「だな。ついでに屋根みたいなのも作っとくか?」
暁「そうだな。万が一もあるし、コンテナで屋根でも作るか」
俺と咲実は協力して車を避難させ、コンテナの屋根を作った。
どうやら異常な怪力を持つのは俺と咲実だけのようで比較的非力な和は
集めたDVD、CDともぎ取ったデッキにモニターを手作りの鉄箱で梱包
更に予備燃料になる燃料パックを見つけたらしく回収に動いてくれた。
そして、和の作業は想像より早く終ったらしく
まだ作業中だった俺達の昼食の準備もしてくれた。
暁「まさか……未だに動いてる食料コンテナがあるとは……」
咲実「こんな状況でも動くとか奇跡だな……」
停車してればコンテナに電力が充電されるシステムがあったらしく
幾つかの食料コンテナが生きていたのを和が発見。
キャンピングカーがどの程度使えるか試す為に料理を作ってくれた。
和「食料コンテナに他に残ってた食料も詰め込みました。
主に生物と冷凍食品なので野菜や嗜好品は上で集める必要がありますが」
暁「おつかれ、なんか任せっぱなしですまんな。」
和「適材適所ですよ。私では車もコンテナも持って帰れませんから」
咲実「和が居てくれて助かったぜ。
オレと暁だけだと食事なんかしないで上に行ってただろうしな。」
暁「それにコンテナに食料があるかどうかなんて調べないだろうな。」
和「お役に立てて良かったです。」
ゾンビがウロウロしてる野外だと言うのに俺も含め三人で和やかに昼食タイム
続いて冷凍のケーキなんかがあったのでティータイムも堪能した。
暁「さて、腹も膨れたことだし、本番と行くか」
咲実「一体何が出るかねぇ」
和「リストのものがあればいいですけど……。」
全く緊張感のない俺達だが……思い思いに気を引き締め、リフトを動かす。
ゴォン ギギギギ ウォォン……
電力は普通に生きているようで多少軋む音をたてながらゆっくりと上へ昇っていく
一体何が待ち受けているのか、
不謹慎ながらワクワクしつつ、到着するのを待った……
ガコンッ
暁「到着したみたいだな。」
和「ですね。」
咲実「ここが東京か~」
リフトが大きな音と立てて止まり、自動でフェンスが開かれる。
かつては日本の首都として栄えた都市……東京
リフトの向こうに広がる東京の景色は……
とてもではないが栄えた首都とは言いがたかった。
暁「なんとまぁ……見事にゾンビだらけだな。」
我が物顔で東京の町並みを支配しているのは青白く、生気の欠片もないゾンビたち
人の気配なんて微塵もなく、腐臭すら漂ってきそうな光景が広がっていた。
咲実「とても生存者が居るようには見えないな……。」
和「居るとしてもおそらくプラントのある場所だと思いますよ。」
咲実「それもそうか、わざわざゾンビまみれの場所なんて歩かないよな。」
暁「位置的にここはどこらへんになるんだ?」
和「あそこに地図看板がありますよ。」
リフトから少し離れた位置に結構立派な地図看板が設置されていた。
そこで現在地を確認してみると世田谷区あたりの位置にいるらしい。
暁「ってことは向こうに行くと渋谷、新宿方面か」
和「プラントは……かなり距離がありますね。
八王子市のあたりですよ。」
暁「電車とか動いてるかな?」
咲実「電車も自律稼働だから動いてると思うけど
……ゾンビと死体まみれだと思うな。」
和「自動清掃ロボットが稼働中なら大丈夫かもしれませんが……
あれは確か半自動ですからスイッチを押してないと動かなかったと思います。」
咲実「動かしたとしても1日くらいは掛かるんじゃないか?」
暁「じゃあ、プラントは後回しにするか」
和「それが良さそうですね。」
咲実「それじゃあ……渋谷方面で食料と娯楽品探し……かな?」
和「それと復帰しそうなゾンビ探しですね。」
暁「そんな感じだな。ぱぱっと済ませて帰ろうか」
咲実「了解」
和「はい」