EP:60 圧倒的威力と決着
私が地獄を表現するとするなら
それはきっと永遠に終わらないであろう絶望的な苦痛を味わい続けることだろう。
永遠に忘れられない精神的苦痛だったり、拭い去ることの出来ない激痛だったり
ともかく、終わりの見えない絶望……それこそが地獄だと私は考える。
その光景を見て俺の頭になんとなくこんな言葉が流れた。
それほど……それほどまでにこの光景はあまりにも凄惨だった。
ドラゴン「亜wせdrftgyふじこlp;@!?!?!?????!!!!!!!」
蛍「うわぁ……なんというか……うわぁ……。」
トウカ「酷い……ですね。これは……かなり……。」
だいぶ前にハルクが怒り狂って発狂していたのを見たことがあるが
これはそれ以上に酷かった。
口内にシュールストレミング弾が叩き込まれた直後
ドラゴンゾンビは声にならない声を周囲に撒き散らして
頭を死ぬほど地面に叩きつけだした。
というか現在進行形で生身なら死んでも可笑しくないレベルで叩きつけている。
蛍「やっててなんだけど……なんか凄く可愛そうになってきた。」
暁「奇遇だな。俺もだ。」
自らの頭がグシャグシャになるのも厭わずにひたすら叩きつける。
もう空を飛ぶとかそんな次元の話ではない。
俺はガスマスクを装着してるから実害は無いが
もし臭いを嗅いだら確実に憤死するだろう。
時として裂傷や火傷よりも味覚、嗅覚で受けたダメージの方が
耐え難い苦痛になると聞いたことがある気がするがまさにそれだろう。
ドラゴン「――――――!!!!」
叩きつけて、転げ回って、叩きつけて
もう悲鳴を上げることも出来ないほどに頭部の形状が消滅してもまだ暴れている。
蛍「あれってそんなにきついの?食べ物だよね?」
暁「俺は元の時代で注意書きを見たことがあるが
室内で開けないこととか書いてあったな。」
暁「あと捨ててもいい服とか、風下に人が居ないかとか」
蛍「本当に食べ物なの!?」
暁「日本では食品衛生法の問題は輸入制限されてるとかも聞いたが
とりあえず、街中で開けたら悪臭被害で速攻で捕まる類だろうな。」
蛍「こわ!?もう兵器じゃん!?」
トウカ「話に聞けば美味しいらしい……ですよ?
ドリアンみたいなものでしょうか?」
暁「ドリアンは一応、焼けば匂いは消えるらしいけどな。」
暁「俺やアツキ並に嗅覚が強化されてたならあの反応も納得だな。」
蛍「ふたりともどの位嗅覚凄いの?」
暁「わざわざ図ったことはないが……
犬は真水に酢が1滴入ったかどうかを見分けられるらしい。」
暁「そのくらいは余裕で出来るから
少なくとも犬並、人間の嗅覚の数億倍くらいか?」
蛍「えっとシュールストレミングは人でも悪臭被害になるくらいに危ないやつで
暁やアツキちゃんは人の数億倍のダメージか来るってこと?」
暁「普段は調節してるから常にではないが……だいたいそんな感じか」
遠くの距離で嗅いだアンモニア臭でも凄いことになったから
直でシュールストレミングを嗅いだ日にはドラゴンゾンビのようになるだろう。
蛍「要するに大ダメージってことだよね……ほとんど自滅してる感じだけど」
暁「匂いは元をどうにかしないとずっと付きまとうからな。
口の中に入ったならあらゆる方法で匂いが蔓延してるだろうな。」
頭を叩きつけまくってるのは匂いの元凶をどうにかするためだろう。
徹甲弾で破裂して口と喉に纏わり付いてそうだからどうしようもないだろうが
暁「何にしても時間は稼げた。」
時間を稼いだどころかもう自滅によって瀕死状態だが……。
同じ能力を持つ立場としてこれ以上見てられないので通信をつなげる。
ビショ『大丈夫かい!?』
暁「開口一番にいきなりだな。」
ビショ『いや、なんか凄い悲鳴みたいなのが聞こえたから』
暁「こっちは大丈夫だ。あっちは大丈夫じゃないが……。」
ビショ『ドラゴンゾンビが?何かあったのかい?』
暁「あぁ、不幸な事故がな……。」
ビショ『詳しい話は後で聞くよ。なんとかエネルギーの充填が終わったよ。』
暁「じゃあ、すぐにでも?」
ビショ『あぁ、その場を離れてくれればすぐに撃てるよ!』
暁「わかった。」
暁「和、電磁砲の準備ができた。この場を離れるぞ」
和「わかりました!」
指示を聞いてすぐに方向転換し、その場を離れていく
暁「準備ができた。早くとどめを刺してやってくれ」
ビショ『??よくわからないけどわかった。すぐに発射する。
くれぐれも近くに居ないようにね。』
暁「わかった。」
そう言って通信が切れる。そして、通信機の電源も切っておく
暁「そろそろ発射されるぞ。小型の電子機器の電源を切っておけよ。」
蛍「了解。」
トウカ「わかりました。」
各々が通信機やスマホの電源を切った頃
ヒュ~~~パンッ!
遠くで信号弾が上がった。
この合図から5秒後に発射されることになっている。
全員、しっかりと体を固定し、衝撃に備える。
そして、心のなかで数えた0と同時に
ビリビリと体が震えるような痺れるような衝撃を感じ
直後にゴォッ!と光の奔流がドラゴンゾンビを通過し、遥か後方まで飛んで行く
ドラゴン「―――――――」
光が通過した後に残ったのは上半身部分が完全に消滅した
ドラゴンゾンビの成れの果て……
暫く下半身だけでその場で停止し……ゆっくりと地面に崩れ去る……。
暁「命中した……どうだ。」
電磁波の影響がなくなっただろうタイミングで通信を再度つなぐ。
白『ドローンで確認した。生命活動は完全に停止したよ。』
蛍「やったあああああああ!!!」
両手を上げてその場で飛び上がる蛍
和もトウカもぐっと拳を握ってガッツポーズをしている。
暁「念のために周辺を見回ってからそっちに戻る。」
白『うん、こっちもエネルギーを充填しておくね。』
ビショ『気をつけて帰ってきてね~。』
ビショップのセリフを最後に通信が途切れる。
途切れる直前、向こうでも大歓声が聞こえていた。
ようやく……ようやく長い戦いが終わった。
俺達が手に入れた力は進化型に対抗できることが証明された。
まぁ、他にも対抗できる武器が存在したわけだが
なにはともあれ、次の目的であるアトランティスとの合流に向けて
俺達はヘリで周辺を見回りながら拠点へと戻った。




