EP:53 潜入と黒いモノ
暁「準備はいいか?」
通路を目前まで慎重に掘り進めていくうちにトラップの設置も完了したようだ。
1時間ほど休憩して、脱出ルートをしっかりと頭に叩き込む。
咲実「脱出ルート多すぎねぇか?」
アツキ「にゃぁ……。」
和「考えうる不測の事態に備えていますからね。」
暁「この状況なら何が起こっても不思議じゃないしな。
ムカデゾンビも得体が知れんし」
暁「まぁ、咲実もアツキもはぐれなければ問題ない。」
突入した後に俺達はもう一度別れて行動することになる。
理由はムカデゾンビの撹乱
どちらが到着しても確実に電磁兵器のデータを回収できるように別れる。
メンバーは速度重視で和とアツキ
確実性重視で俺、咲実、トウカだ。
暁「最終確認になるが……和とアツキは脇目を振らずにとにかく直進で」
和「はい、大丈夫です。」
アツキ「最速で行く!」
暁「俺達は広いルートを慎重に進む」
咲実「おう!戦闘は任せとけ!」
トウカ「暁様を守り抜いてみせます!」
暁「当然、いざという時はすぐに脱出ルートを通って逃げること
最悪、片方が二匹とも引き連れて迷宮のトラップで潰すのも良いな。」
和「そういう事態にはなってほしくないのですが……。」
咲実「っても、こればっかりは向こう次第だもんな。」
暁「白の探索ドローンもあるから
不測の事態には対応できるだろうが過信はできんからな。」
和「ですね。」
暁「最終確認が終わったら突入する。気を引き締めろ。」
和ト「はいっ!」
咲ア「おうっ!」
装備を抱え、侵入ルートをゆっくりとこじ開ける。
とにかく慎重に、音を出さないようにゆっくりと……。
鉄の壁が崩れ、真っ暗な部屋が現れる。
和「ふっ!」
すぐに発光玉を和が投げ込み、部屋が一気に明るくなる。
もともとは食料庫だったんだろうか、それっぽいものがそこら中に転がっている。
暁「潜入した。動きは?」
白『今のところ気がついてる様子はないよ。』
暁「よし、じゃあ、手はず通りにここから別れる。」
白『分かった。ドローンは監視のままでいい?』
暁「頼む。」
白に指示を出して各々準備する。
暁「俺達は右ルートを」
和「絶対に無事に戻ってきてくださいね。」
暁「当たり前だ。そっちも気を付けてな。」
和「はい。」
トウカ「では、合図を出します……。」
用意した指向性爆弾、消音機能付きのものだが気付かれない保証はない。
これが爆破したと同時に俺達は別れて突き進む。
トウカ「推しました。」
ピッピッピッっとカウントが進む
トウカ「3、2、1……GO!」
トウカの合図とともに煙幕と共に無音のまま目の前の壁が消える。
和「絶対にご無事で!」
暁「そっちもな!」
お互いに最後の言葉を交わして走り出した!
…………
暁「とりあえず、こっちのルートは正面ゲートを突っ切る形になる。
ムカデゾンビは施設中央にいるらしいから問題はないだろうが」
咲実「でも距離はあるんだよなぁ。」
トウカ「安全性を考慮してますからね。
向こうはかなり狭い通路ですがこちらは広さがあります。」
暁「いざという時にすぐに対応できるってわけだ。」
マップを開いて咲実とトウカ先導してすすむ。白からの通信も無いし、
問題はなさそうだが慢心は出来ない……と言うより
暁「嫌な予感がするな。」
咲実「ん?なんで?」
トウカ「暁様もですか……実は私も……。」
咲実「え?オレだけ仲間外れ!?」
暁「仲間はずれ云々はともかく、ゾンビの動きがなさすぎる。」
咲実「あ~そういやそうだな。寝てんのか?」
トウカ「ゾンビって寝るんですか?」
暁「さぁ、普通のゾンビは寝ないが、進化型は特殊過ぎて分からんな。」
暁「なんにしてもここまで動きがないのは不自然なんだが……。」
咲実「安全に到着するなら問題ないと思うけどなぁ……。」
暁「それはそうだが……白」
白『どうかした?』
暁「ムカデゾンビの動向は?」
白『まだ動きはないかな……。白い方も黒い方も動いてないよ。』
暁「ふむ……。」
咲実「考えすぎなんじゃねぇの?」
暁「だと良いんだが……。そこを曲がるぞ」
状況は順調そのものだが……何やら嫌な予感が収まらない。
杞憂なら良いんだが……。
いくつも角を曲がり、徐々に目的地に近づいていく
暁「もうすぐだな。」
咲実「やっぱ杞憂だったな。」
あと2つほど部屋を抜ければ目的地だ。
和達はもう到着してデータ収集に回ってるらしい。
ここまでくればもう安全……と思うような自分じゃなかったことを
今ここに神に感謝した。
暁「止まれ!!」
咲実「うぉっとぉい!?」
トウカ「っ!」
ビシャァッ!!
俺が声を上げた瞬間、目の前に何かが降り掛かった。
それはジュゥゥ!っと焦げるような音をあげながら地面を溶かしていった。
咲実「溶解液!?」
暁「白っ!」
白『今確認した!黒い方だけ抜け殻だった!』
咲実「抜け殻って脱皮すんの!?ゾンビだよな!?」
何から何まで異常な存在だ……。
爬虫類ならともかく元人間のゾンビが脱皮って……。
しかも、俺らが驚いたのはそれだけじゃなく
黒ムカデ「ミィ~ズゲダァ~~」
咲実「ちょ!?喋った!?」
黒く長い髪の間から覗く顔から確かな言葉が出てきた。
アツキのような例もあるし、取り込んだ数が多ければいずれはと思っていたが
まさかこんなに早く接触するとは……。
咲実「ど、どうするんだよ!?てかどうすりゃいいんだ!?」
暁「落ち着け……言葉は通じるか?」
黒ム「ツウジル~コトバ~ツウジル~」
暁「そうか、ふっ!」
黒ム「ギャァァ~イダイィィ!!」
咲実「ちょ!?なんでいきなり蹴ったんだよ!!」
暁「もしかすれば対話できると思ったが……どうやら理性はないみたいだ。」
咲実「はぁ!?な、なんで!?」
暁「さっきの返答が答えだ。
俺の応答に同じ言葉を返してきただけだ。」
理性がある相手ならもう少し応答に何かある。
最初の言葉も状況に即して出て来ただけの単語
何より……。
暁「問いかけたときに溶解液を吐こうとしてた。」
咲実「まじかよ……。」
蹴っ飛ばした方向に液体が撒き散らされ、ところどころ壁が溶けている。
どうにも最低限の知能があるらしい。
言葉に関しても
黒ム「イダイィィ~ナンデェェ~イダイィィ~~」
暁「ちっ、小賢しい動きをされると反吐が出るな。」
咲実「いや、ちょっと冷酷すぎねぇか!?」
暁「ただのポーズだ。ああやっておけば攻撃をためらうかもしれんだろ?」
咲実「いや、まぁ……でもゾンビだぞ?」
暁「ゾンビだからだ。ゾンビに痛覚はない。」
咲実「あ……。」
痛覚がないのにイタイイタイと叫ぶ、
ジタバタしているように見えて実際はこちらの動きをじっくり待っている。
要するに……。
暁「こいつがこの施設の奴らを皆殺しにしたのは間違いないな……。」
ゾンビだからと油断していれば間違いなくこいつに蹂躙されるだろう。
今までであってきた中でかなり手強い……。
暁「さて、行くか退くか……。」
相手の既に和たちが到着しているから問題はないが
こんな個体が居るとなると今後を考えるならある程度情報を引き出したい。
トウカ「ハァッ!!」ザンッ
暁「トウカッ!?」
後ろでいきなりトウカが発声と共にナイフを振るった。
何かが切れる音と共に近くに落ちたのは……。
暁「髪?こいつ……。」
咲実「嘘だろ……。髪を天井に這わして!?」
暁「撤退する。こいつは厄介にも程がある!」
溶解液と攻撃を受けた振りだけならともかく、
こちらが止まっているのを確認して死角からの攻撃は流石に笑い事じゃない。
確実にこちらを仕留める方法を知ってる動き……。
しかも、髪の毛をぶった切ったのにもう再生を始めている。
髪の毛も随分と自由自在に動くみたいだ。
暁「とりあえず燃やしていくぞ!」
トウカ「はいっ!」
ベルトに備えておいた油瓶を投げつけ、トウカが続けて発火剤を叩きつける。
黒ム「ギャァァァ~~~」
油にまみれた直後に発火剤によって黒ムカデが燃え上がり、悲鳴を上げる。
それがポーズなのは一目瞭然、
叫びながらこっちが逃げるのを察して地面を這ってこちらに向かってきた。
咲実「うぉぉっ!?キッッッモイ!!」
燃え上がりながら悲鳴を上げ、
髪の毛と多数の手足で虫のようにガサガサと進んでくる。
普通にトラウマになりそうな攻撃だ。
暁「ちょっと止まってろ。」ベシャッ
黒ム「ギャァァ~~~~」
なかなかの速度で這いずってきた黒ムカデだが
地面に特製のトリモチをぶちまけると髪の毛と体が絡まって
そのまま地面にへばりつく形になる。
咲実「よっしゃ!止まったよな!?」
暁「いや、どうやらそんなに甘くないらしい。」
ほんの少しだけ時間は稼げたが……。
ブチブチと耳を塞ぎたくなる音と共に体から髪の毛が引きちぎれ
手足がぐちゃぐちゃになりながらも進み始めている。
咲実「うわぁぁぁ~~!気持ち悪すぎだろぉぉぉぉ!!」
咲実が叫びたくなるのも無理はない。
俺もトウカも目の前の光景に目を覆いたくなる。
いくらゾンビだからといってここまで行くとドン引きだ。
暁「とにかく走れ!第三ルートから逃げるぞ!」
どうなろうとお構いなしの黒ムカデを引き連れたまま施設を走り抜けていく




