EP:41 休暇期間と新たな?
降ってわいたような休息期間
ここまで強行軍みたいな感じになっていたからちょうどいいタイミングだ。
今までの場所に比べてここはかなり安全だし、
これからのことを考えればベストの判断だろう。
いくらゾンビにスタミナの概念が存在しないと言っても集中力には限界がある。
いざという時に失敗しないために適度な休息は必要だろう。
とはいえ、俺にはスタミナの概念があるし、
定期的に隙きを見て休憩していたからそこまで疲れているわけじゃない。
改めて休むことになっても何をすればいいか……。
そんなことを考えながら歩いていると……。
アツキ「ツモ……大三元?」
ポーン「えぇ!?いきなり役満ですか!?」
スリー「つ、強すぎる!」
蛍「うなぁぁ~すっごいヤバイ!?」
何やら施設の一室に人が集まって騒いでいた。
声を聴く限りマージャンをしているみたいだが……。
白「あ、暁さん」
中に入ってみると、白や蛍、アツキ、それに機械兵の面々が居た。
居ないのはビショップとクイーン
この二人は拠点の移設準備中だから当然として
他に和とトウカも居なかった。
暁「随分と盛り上がってるみたいだが」
白「さっきまで皆でアニメを見てたんですけど
アツキちゃんがマージャンをしたいっていい出して」
暁「マージャンなんてあったか?」
映像機器やゲームばかり集めていて
トランプやボードゲームみたいなレトロゲームはまったくなかったはず
トランプはトウカが持っていたが……。
ポーン「あ、俺達の持ち出しですよ。
娯楽といえばこういう物しかありませんでしたからね。」
よく見れば牌は手作りみたいだ。
そういえばトランプも手作りだった気がする。
ポーン「ここに来てまさかゲームやテレビを見れるとは思いませんでしたよ。」
咲実「こっちは近くに東京があるからな。結構楽に集まったぞ」
ポーン「みたいですね。群馬も埼玉も相当な状況だったので
まさか東京のほうが楽とは思いませんでした。」
ある程度ビショップに聞いたが群馬も埼玉も
突然変異種と進化型がとんでもないことになっているらしい。
少数都市計画の代表格の都市が揃ってこれでは
東京はもっと凄惨な状況だろうと探索しなかったんだとか
クイーンの話では逃げ回りながら研究施設を探しているうちに
いつの間にか東京に来ていたとのことだが運が良かったんだろう。
ポーン「とは言え、こっちにヘリはなかったみたいですし
僕達がここで活動していても無事だったかどうか……。」
彼らは別れてすぐにビショップが移動手段を探し
あの輸送ヘリを手に入れて拠点を転々としながら逃げてきたんだとか
俺達はそもそも半ゾンビ化で戦闘にすらならなかったが
彼らは感染しないだけでゾンビは惹き付けてしまうらしい。
ポーン「あ、それロンです。」
アツキ「うにゃ!?」
ポーン「中のみ。」
蛍「あれ?しょぼくない?」
ポーン「そうでもないですよ。」
アツキ「にゃ~親流された。」
ポーン「そして次は俺の親番です。全力で行きますよ!」
点差はアツキがトップで後は殆ど一列だが蛍が僅かに下になっている。
今の対局では随分旗色が悪いらしい、このまま行くと最下位確定かもしれない。
咲実「そういや、ポーンとかに聞きたかったんだけどさ……。」
ポーン「はい?」
アツキ「ツモ、中のみ」
ポス蛍「はや!?」
アツキ「にゃ~親番取り戻すっ」
ポーン「くっ!?……っと、何でしょう?」
咲実「あぁ、トウカってお前らの誰かと付き合ってんの?」
また随分と聞きにくいことを……。
男所帯に女性一人だから可能性は大いにある。
俺的にはビショップと怪しいんじゃないかと思ったが……。
そばで見ているとそんな感じには見えなかった。
ポーン「トウカですか?いえ、誰とも付き合ってませんよ?」
アツキ「やっぱり……BL?」
咲実「ま、まじかよ……。」
ポーン「そっちもないですよ。俺達は性欲がそもそもありませんからね。」
蛍「やった!ツモ!七対子!!諸々合わせて跳満!!」
スリー「ここで大物手!?」
蛍「一気に2位このまま行くわよ!」
咲実「性欲がないってなんだ?」
ポーン「ゾンビに感染する原因は流石に知ってますよね?」
咲実「血液感染だけだよな?」
ポーン「えぇ、正確には血液内のナノマシンに反応して
腐敗病が発生、肉体の制御能力を失うんですが……。」
ポーン「ビショップはこれを単純な方法で制御しました。」
咲実「血液抜いたとか?」
ポーン「惜しいですね。」
咲実「惜しいのかよ!?」
蛍「え?機械のヒトって血がないの?」
ポーン「血はありますが比率は普通の人の50分の1程度ですね。
ビショップが擬似血液を作り、それにナノマシン制御能力を与えました。」
ポーン「元々の血液を制御能力の高い擬似血液にすることで
腐敗病を克服したんです。」
ポーン「ですが体の殆どを擬似血液にしているので色々と問題もあります。
例えば精子を作る機能、これがまず完全にありません。」
咲実「まじで?」
白「でも精子って精漿と精子が殆どの成分じゃ?
今だとナノマシンもあるんだっけ?」
ポーン「今は殆どがナノマシンと精子ですね。
異常な性欲減退が原因で超少子化を引き起こしましたからね。」
ポーン「殆どの成分をナノマシンにすることで
性交からの受胎比率を引き上げたんだそうです。」
ポーン「ですが私達機械兵はそのナノマシンを制御しているので……。」
咲実「ナノマシンがあった前と同じになったってことか?」
ポーン「同じ……ではありませんね。
僅かに残っててもむしろ邪魔でしか無いのではっきりと消失させてます。」
咲実「そいつは大丈夫なのか?」
ポーン「生き物としては異常ですがこの世界では異常なのが正常ですからね。
それに悪いことばかりでもありません。」
ポーン「性欲を0にすることでその欲求を別の方向へと向け
結果、僕達機械兵は常人の数倍の身体能力を獲得しました。」
咲実「性に向けるエネルギーをパワーにしたとかそんなの?」
ポーン「そんなのですね。」
ポーン「それに性欲の影響で女性に対して感情をいだき
不和を起こしたりするのも防いでいます。」
咲実「お前らはそれでいいのか?」
ポーン「少なくともここに居るメンバーは全員納得してますよ。
生き残り、世界を救うために多少の犠牲は仕方がありませんし……。」
ポーン「この世界で最も全滅の危機を引き起こすのが人間関係ですからね。」
咲実「ゾンビじゃねぇの?」
ポーン「進化型ならともかくゾンビ体はそこまで強くありませんからね。
力自体は相当ですが……動きが遅いので囲まれなければ容易に逃げられます。」
ポーン「ですが団体行動中に不和を引き起こすと
どんなプロ集団でもあっという間に瓦解してしまいます。」
白「私達のところも一番の問題が人間関係だったな。」
蛍「だったねぇ。白とか超美人だからめっちゃ言い寄られてたしね。」
白「お姉ちゃんも似たようなものだったけど……。」
蛍「さくっと見切りをつけて逃げたおかげで私たちは助かったけどさ」
ポーン「結局、生き残れるのはしっかりと協力していける人達だけなんですよ。」
咲実「なるほどなぁ。」
ポーン「ちなみに暁さんはトウカの事をどう思いますか?」
暁「どうとは?」
ポーン「恋人関係になりたいとか思いません?」
暁「いきなりどういう質問だよ。」
ポーン「実のところ、俺達には性欲はありませんが彼女にはあるんですよね。」
咲実「あん?性欲を無くしてパワーアップとかじゃねぇの?」
ポーン「普通はそうなんですが彼女は大分後に機械兵になりましたし……。
幾らなんでも母体0で世界を救うのは現実的ではありませんからね。」
ポーン「彼女も機械兵ですが母体としての能力もしっかり持ってますよ。」
咲実「ビショップの技術ならクローンカプセルとかでもいいんじゃねぇの?」
ポーン「残念ながら……ずっとゾンビに追い掛け回されてますから
クローンにしろ培養にしろ、生命を作るには相応の時間が必要になります。」
咲実「ゾンビに襲われながら厳しいってことか……。」
ポーン「言い方は悪いですが
彼女のように動ける母体が必要不可欠だったんです。」
ポーン「とは言え、最新技術を全てつぎ込んだのが彼女なので
進化型と遭遇してからはずっと彼女に頼りきりでした。」
ポーン「安全が確保できてない状態で子供を作るわけにも行きませんし
彼女という戦力がなければ早々に全滅していて手もおかしくないですし」
ポーン「結局、その能力は存在するだけで一度として使っていません。
何より僕達とって彼女は娘のような存在ですからね。」
ポーン「いくら世界のためとは言えモルモットじみたことは流石に……。」
暁「それと俺と何の関係が」
ポーン「聞けば暁さんには生殖能力があるとか……。」
ポーン「加えてこの拠点には僕達以上の戦士が大勢いますし
彼女もここでなら落ち着いていられるかと思いまして」
暁「娘って言ったよな?そう簡単に差し出していいものなのか?」
ポーン「貴方なら大丈夫でしょう。
これだけの女性に囲まれても仲良くしているようですし?」
確かに周りのことは良好なん関係を築いているが……。
だからといってホイホイ受け取れるわけじゃない。
何より彼女の感情が最優先なんだ。
そもそも、こんな状況の人間に
いきなり、よろしくしてという女性なんていないだろう……。
トウカ「おや、こちらにいましたか」
暁「あぁ、トウカ」
なんとも絶妙なタイミングで本人がやってきた。
誰かに用事らしいが……ん?
暁「トウカ……お前……肌の色」
トウカ「お気づきになりましたか、クイーンにゾンビ化してもらいました!
これからは暁様の下で動くことになります。よろしくお願いします!!」
ビシっと敬礼して頭を下げるトウカ……。
機械兵「「「おぉ~」」」パチパチパチ
何故か後ろではポーン達が拍手していて……流石に頭が痛くなった。




