EP:38 ビショップと帰還
プラント施設の中央に着陸すると外では
ポーンたちがテキパキといろんな機材をヘリに接続していた。
拠点でも何度か確認したが給油プラグや計測器の類だ。
いざという時のために迅速に補給や調整を行っているようだ。
中は安全そうに見えるが流石に外のゾンビ軍団を見て楽観はできない。
いつでも脱出できるようにの配慮だろう
外の風が収まっていくとヘリの扉のロックが外れ
ポーン達が整列して待機していた。
それぞれ荷物を持ち、俺から順番にヘリを降りると
見慣れない青年がそこに居た。
ビショップ「いやぁ~はじめまして暁くん!」
気さくに声をかけてきた人物……あからさまに白衣を着ている彼がビショップ
クイーンの旧友のようだ。
暁「はじめまして、天都 暁だ。」
ビショ「これは丁寧に、僕はビショップ、クイーンくんと同じマグメル職員さ。
実際はとっくの昔に本家からは追い出されてるけどね。」
ビショ「まぁ、マグメルは世界救済を目的とした組織だから
目的を違えてなければ一人残らずマグメル職員さっ!」
暁「なるほど、じゃあ、俺もマグメル職員だな。」
ビショ「はっはっは、そうだね。歓迎するよ。」
固い握手を交わしながらそれぞれのメンバーの自己紹介を済ませていく
そして、そのまま、ここの会議室へと移動し……。
クイーン『ビショップくん!久しぶり!』
ビショ「や~や~クイーンくん、久しぶりだね。
というか相変わらず成長してないね。」
クイーン『人のこと言えないと思うんだけど?
……なんで10年前から見た目が同じなの?』
ビショ「ポーンくんたちから聞いてるかな?
僕も同じく体を機械化したんだよ。」
クイーン『成功したんだね。』
ビショ「かなり大変だったけどね……。
そういう君の方はどうやって生き残ったんだい?」
ビショ「真人間が行きていける世界じゃないだろう?」
クイーン『こっちはゾンビの研究から安全にゾンビ化したんだよ。』
ビショ「なんと……よく他の職員が許したね?」
クイーン『他の人達は……。』
ビショ「そっか、結局残ったのは僕達だけってことか」
クイーン『みんな、人間に拘り過ぎてたからね。』
ビショ「ナノマシンを入れてる時点で皆普通じゃないんだけどね。」
クイーン『まぁね。』
ビショ「結局、マトモじゃない人しか生きていけない世界ってことか」
クイーン『そうだね……。
機械化を成功させたってことは世界を救済する方法は……。』
ビショ「残念ながらゾンビをどうにかってのはまだ出来てないね。
感染直前の人を機械化で腐敗病を無力化させることには成功したけど」
ビショ「ゾンビを機械化で、と言うのは出来なかったよ。そっちはどうだい?」
クイーン『私の方は暁くんの血を使って
条件付きで復帰させることに成功したわ。』
おぉ……。
クイーンの言葉に軽い感嘆の声が上がった。
彼らにとっても人類救済は待ち望んでいた事なんだろう。
心なしか表情が明るくなった気がする。
ビショ「なんと……まさかそこまで行ってるとはさすがクイーンだね。」
クイーン『専門が違ったってだけな気もするけどね。」
クイーン『まだ完全じゃないし、腐敗病の無力化は完璧だけど
目を覚ますのがごく一部って条件が引っかかってるけどね。』
ビショ「それでも十分すごいさ。
こっちは80%を機械化しないと無力化できなかったからね。」
ビショ「加えて機械化すると生殖機能の一部が完全に使い物にならなくなる。」
ビショ「そもそも、血を代替血液に帰る必要があるから
母乳や精子を作る機能は残せなかったんだよね。」
クイーン『それは……。』
スリーが女性に興味が無いと言っていたが
生殖機能が完全に死んだからだったのか……。
同じ男として流石に同情を覚える。
本人たちは残念そうな気配は無いみたいだが……。
ビショ「女性機能は母乳以外は全て問題なかったんだけど……。」
クイーン『男性が使えないと意味ないよね。』
ビショ「なんだよね。軽く絶望してたんだけど……。
クイーンくんが解決してるみたいで助かったよ。」
クイーン『殆ど運だったけどね。』
ビショ「運も実力の内さ」
クイーン『ありがとう。』
ビショ「それで……早速で悪いんだけど、こっちに提案があるんだ。」
クイーン『なにかな?』
ビショ「提案というよりお願いかな?
僕達をそっちの拠点に行かせてもらえないかな?」
クイーン『こっちに?』
暁「この拠点はどうするんだ?プラントを一から作ったんだろ?」
クイーン『なにそれ凄くない!?プラントまで作れるの!?』
ビショ「まだ普通の30%くらいの機能しかないけど……。
そっちに移設したいと思ったのは君たちのゾンビの資料を見たからなんだ。」
ビショ「僕達はあれは薬かなんかで変化した突然変異種と思ってたんだけど
まさかアップデート機能から生まれた進化型とはね……。」
ビショ「暁くんは既に見たから知ってると思うけど
この周辺にはかなりの数のゾンビがたむろってる。」
暁「そうだな。」
ビショ「そして、この拠点に移ったのが大体半年前……。
進化型が誕生するのも時間の問題だろう?」
クイーン『確かに……かなり危ないね。』
ビショ「それに実はプラントを作れはするんだけど
どうにも進化型が強すぎてパーツが集まらないんだよ。」
ビショ「聞けば彼は突然のことで取り残されそうになった隊員を
進化型から助けたそうじゃないか」
暁「言っとくが倒してないぞ?」
ビショ「わかってるよ。倒せるかどうかは問題じゃないさ。
進化型から逃げ切れるかどうかのほうが大事なんだよ。」
ビショ「機械化した隊員たちは普通のゾンビ相手なら無敵なんだけど……。
流石に進化型には勝てなくてね……。」
ビショ「最初は30人居たのに今は10人せいぜい
殆どが進化型にやられちゃったんだよ。」
ビショ「付け加えるなら拠点も4,5回は進化型に潰されちゃってね。
どこからか追いかけて来たんだと思ってたんだけど……。」
ビショ「まさか勝手に生まれるとはね。」
クイーン『知らなくても無理はないわ。
私だって細胞を持ってきて貰うまでわからなかったもの』
ビショ「もちろん、拠点に移るのもただとは言わないよ。
素材さえあればもしかすれば進化型に敵う武器が作れるかもしれない。」
ビショ「それでなくても僕ならプラントを作ることが出来る。
食糧と燃料の確保は確実になるだろうね。」
クイーン『どっちにしてもこっちに拒否する理由はないんだけど』
ビショ「本当かい?」
クイーン『別に貴方と喧嘩別れしたわけじゃないしね。
ほかは知らないけど私は貴方の考えに賛同してたわ。』
クイーン『マトモじゃ生きていけない世界で
マトモに固執するのは無意味よ。』
クイーン『事実、私はゾンビ化、貴方は機械化してこの世界に生き残ってる。
あの思想が間違ってるとは言わないけど、私達のほうが正しかったのよ。』
ビショ「そうだね。それなりに不安もあったけど……。
そう言ってもらえると救われるよ。」
クイーン『お互いにね。』
暁「なら、ビショップたちを拠点に迎え入れる方向で進めていいんだな?」
クイーン『えぇ。ヘリも手に入れたんでしょ?
それならすぐにでも来てちょうだい。』
ビショ「助かるよ。もうどのくらい猶予があるのかもわからないからね。」
クイーン『私達の方は拠点に帰るから直接本拠地に来てね。』
暁「そっちに行ってるはずの電車に色々と残ってるんだが」
クイーン『おっけ、それも回収しておくわ。』
通信を切り、早速と全員で行動を起こす。
ヘリに燃料を入れていたのはすぐに脱出できるようにするためだったらしい。
ビショ「確定してない状態で先に動いてごめんね。」
暁「いや、ここの状況と今までの経緯を考えれば勇み足も当然だろうな。」
こっちだって進化型と出逢ってからは逃げたばかりだ。
倒したのは不完全な最初のやつとまだ大して結合してない小個体だけ
大型は一人も倒せていない。
既に20人も犠牲者が出てるなら一秒だってここには居たくないだろう。
暁「それより、機材を何も持っていかないのか?」
隊員たちの動きを見ているが……。
輸送ヘリにコンテナを新しく引っ付けるだけで機材の殆どを放置している。
ビショ「これでも何度も拠点を潰されたからね。
設計図は全部頭の中だし、ある程度の食糧さえ確保できれば新しく作れるさ」
暁「そいつはまたすごいな。」
ビショ「むしろこの位できないと生きてなんて行けないよ。」
ハードルの高い世界だ。
白と蛍が生き残ったのも殆ど運だったし、俺たちもそうだ。
もし、近くが群馬だったらと思うと寒気がする。
ビショ「流石に食糧は持っていくけど機材類が全部おいていくさ。
なんだかんだと嵩張るし重いしね。」
暁「まぁ、東京は大して凶悪なゾンビも居ない。
プラント方面は少々きついが素材集めは楽だろうよ。」
ビショ「そういうことなら早く東京に行けばよかったなぁ。
都心だから絶対にきついと思って近寄らなかったんだよね。距離もあったし」
暁「むしろ都心だったからこそ危険じゃなかったのかもしれないな。」
ビショ「というと?」
暁「生き残るために他者を殺してたり、浮島だから逃げ場がなかったり
かなり悲惨な環境だったからな……。」
ビショ「生き残りが居ない分ってことだね……。」
暁「なんとも言えない話だ。
生きてる方がより厳しい環境になっていくなんてな。」
ビショ「得てして人生はそういうものだけど……こっちは露骨すぎるよね。」
暁「全くだ。」
お互いに指示を出しながら撤収準備を進めていく
と言ってもこっちは来たばかりだから運ぶものは何もない。
データを和のPCで吸い上げているくらいだ。
ビショップの方もコンテナを繋げる作業くらいしかすることがないらしい。
主に俺の役目はアツキと一緒に警戒することだ。
群馬で何度も襲撃を食らっただけに
今度は油断しないようにしっかりと気を引き締める。




