EP:28 休息その2と新たな?
蛍と白が半ゾンビ化して更に少し経過した。
二人のゾンビ化は多少驚かれたが
特に何かあるわけでもなく平常運転のままだった。
大きく変わったことと言えば
探索隊に蛍と白が加わったことだろう。
蛍は単純に戦力として
彼女が加わったことで俺、咲実のどちらかが護衛に回せるようになった。
白はこの世界での情報を集めるために参加することに
本当はクイーンもこの役目を担うはずなんだが……。
ゾンビに対して完全にトラウマになっていて役に立たない。
そこで白が代わりに情報収集のために探索に参加した。
とは言え、大方針が宙ぶらりんな今の状態ですることも大して多くない。
相変わらず、クイーンは研究室篭りだし、白も探索以外はずっと研究室だ。
白の話ではかなり進んできているそうだが……。
暁「ふぅ、今日の探索も無事終了っと」
蛍「いやぁ~いっぱい製菓用品見つかったねぇ!」
最近、探索の収集アイテムに新しい項目が増えた。
蛍がバッグいっぱいに担いでいる製菓用品だ。
どうやらこんな世界になる前は将来パティシエになるのが夢だったらしく
相当なレベルでお菓子作りをしていたらしい。
流石に今の世界では無理だろうと諦めてたが
ゾンビ化したことである程度安全に外を歩けるようになり
しかも、白がダイエットに悩まないからと毎日のようにお菓子を作っている。
製菓用品も食材の一部だからまずないだろう……と思っていたが
暁「案外、転がってるもんだな。」
蛍「ま~、この世界で料理そのものが難しいのもあるんじゃないかなぁ?」
抱えてるのは小麦粉にバターを筆頭に細々とした材料類
食材ではあるが中間素材みたいなものは殆ど手付かずだった。
牛乳と卵はプラントで作られてるのを回収すれば大抵のモノは作れるらしい。
幸い、この2つのプラントは二人が居たプラントとは別の場所にあり
ハルクゾンビとかありえないものも居らず、回収は楽だった。
暁「調理できれば問題なく食料になると思うんだがな……。」
蛍「や~そういう発想も難しいと思うよ?
私は白のおかげで拠点でゆっくり出来てたけど……。」
蛍「手間がかかる料理はやっぱり無理だったからね。
そんな余裕がなかったしさ。」
暁「なるほどな……。」
そう考えると今後はそういう、調理が必要な食材
芋系とか小麦粉とかそういうのを集めていく方針になりそうだ。
暁「ポテチってジャガイモからだったよな?」
蛍「だよ。スライスして上げてもいいし、蒸して潰して揚げてもいいよ。」
暁「それなら今後、ポテチの心配もなさそうだな。」
相変わらず、クイーンのポテチ消費は激しい。
何処かに製造工場があるとは思うが未だ発見に至っていない。
一応、彼女のやる気向上のアイテムだからどうにかしたいと思っていたが
ジャガイモさえ手に入ればとりあえず何とかなりそうだ。
蛍「なんかさ~」
暁「ん?」
蛍「なんだかんだ言って暁ってクイーンに甘々だよね?」
暁「そうか?」
蛍「うん。私でも流石にあのポテチ消費はどうかなぁ
って思うけど止めないよね?」
暁「もはや諦めたってのもあるが……
別に太らないし、健康もクソもない状態だからいいと思うんだが」
蛍「それはそうだけどさ。
和さんとか自重を覚えて下さいってめちゃくちゃ説教してるじゃん?」
暁「いつの間にか王道の流れになってるな。」
蛍「でも暁は特に何も言わないよね?」
暁「言ってる……はずだが」
蛍「言っててもそろそろ自重しろよ~とか
またやったのか仕方ないやつだな。くらいだよ?」
暁「そうだったか?」
蛍「自覚ないんかい」
暁「かなり厳しい方だと思うんだが……。」
蛍「それもすっごく偶にだよ?
クイーンが篭りっぱなしもあるけど、基本甘々だよ?」
暁「ん……そう言うなら少し引き締めるか……。」
自覚はないんだが蛍が言うってことはそうなんだろう。
暁「まぁ、たしかに消費が激しいのは気になるし、
多少他ので代用するようにしてもらうか……。」
蛍(問題なのは貴重品食べ過ぎなんだけどなぁ……まぁいいけど)
蛍「あれ?入り口にいるのクイーンじゃない?」
暁「そうなのか?」
今の場所からは拠点が見えるくらいだが
蛍にはクイーンの姿まで見ているみたいだ。
ゾンビ化すると生体機能を喪失する。
人が生きていく中で最もエネルギーを使うのがこの部分だ。
それを使わなくなる持て余していたエネルギーを他へと誘導する。
その結果、本人の特性みたいなものが飛躍的に向上する……と白に説明された。
咲実は身体能力、和は瞬発力が相当なレベルまで高まっている。
白とクイーンは脳の処理速度が上がったらしい。
蛍の場合は五感が飛躍的に向上した。
視力、聴覚、嗅覚、触覚、味覚が改造された俺を上回る程に高まったらしい。
とは言え、常時性能アップ状態だと日常生活に異常をきたす。
それでポーズを取った時だけ性能を引き上げるようにした。
指で輪っかを作って覗くと視覚が、
手で鼻を包むようにすると嗅覚がみたいな感じだ。
蛍に言われて俺も嗅覚を引き上げるとたしかに入り口にクイーンが居る。
暁「珍しいな……電磁防壁があってもゾンビが怖くて出てこないのに」
蛍「だね~あ、でもなんか隣に……誰かいる?ちっちゃい子」
暁「ふむ?」
流石に電磁防壁の向こう側だから慣れ親しんだクイーンの匂いしかしない。
蛍が居ると言うんだから居るのは間違いないだろうが……。
暁「人形とかのオチじゃないのか?」
拠点には俺、和、咲実、蛍、白、クイーンしか居ない。
一応、半ゾンビ化して目が覚めない300人位の人間も収容しているが……。
蛍「もしかして……覚醒できるようになった……とか?」
暁「ありえなく……はないか?」
そもそも、俺が目が覚めたのは腐敗病を治し、世界を元に戻すためだ。
彼女もそのために色々やってるのは知ってる。
かなり難しいと言ってたがここ最近は白が手助けしてくれる影響で
色々と進んでいるみたいだし、ありえなくはない。
暁「嬉しくて連れてきたってことか?」
蛍「あるかもしんない。」
今外に出てるのは俺と蛍の二人だけ……。
他の三人に見せ終わってからこっちに連れてきたのかもしれないか……。
暁「少し、早めに行くか」
蛍「うんっ!」
もしかすればこの世界を救うさらなる希望を得たのかもしれない。
そわそわする蛍と一緒に早足で拠点に向かった。
…………
………………
クイーン「あ!暁くーーーん!」
暁「こんな所まで珍しいな。そこの子と関係あるのか?」
?「…………。」
蛍の言うとおり、
拠点の入り口の向こうにはクイーンとクイーン並みに小さい女の子がいた。
一瞬等身大人形かとも思ったが……。どう見ても生身の人間だ。
バチバチと外敵を拒絶する防壁を潜り体面……することになるが
蛍「きゃ~かわいい!!この子誰!?どこの子!?」
蛍が興奮して早速抱きつこうとする。
暁「待て」
蛍「おぶっ!?く、首根っこ掴むのはヤバイって……。」
飛び出す蛍を抑え、クイーンに目を向ける。
暁「……クイーン、どういうつもりだ?」
クイーン「あ、あれ?マジ怒り?え?」
蛍「え、何どういうこと?ロリっ娘は嫌いなの?」
蛍は気がついてないらしい。
まぁ、嗅覚を引き上げても分かるかどうか怪しいから仕方がない。
暁「あの拠点で匂いは嫌って言うほど覚えた。」
蛍「匂い……何のこと?」
クイーン「おぉ、言わずに気付いちゃった?さっすがぁ~」
暁「茶化すな。どういうつもりか聞いてるんだ……。」
クイーン「おぉぅ……。」
蛍「ねぇ、なに!?何の話!?」
暁「その少女からハルクゾンビの匂いがする。」
蛍「うそ!?」
暁「気のせいかと思ったが……。
俺が持ち帰った頭と全く同じ匂いだ。服以外の全部がな。」
蛍「え……じゃあ、どういうこと?」
暁「クイーン……多少のことなら見逃すが……返答によっては」
クイーン「まままままって!?マジおこじゃない!?
大丈夫多分思ってるのと違うから!説明するから!」
最悪、俺達を全滅に追い込んだかもしれないアレを思い出して警戒心が先にくる。
見た目は愛らしいが……元を思えば楽観視出来ない。
むしろ、咲実のように超パワーを持っててもおかしくない。
キョトンとしているハルク少女には悪いが……最悪の場合を考える。
クイーンに手を繋がれて特に何かあるふうには見えない……のか?
やたら俺をじっと見ているが
とりあえず、落ち着いて話をするために拠点に戻ることに……。




