EP:27 姉妹と半ゾンビ化
蛍「どういうこと!?どういうことなの白!?
なんでお姉ちゃんに相談もしないでゾンビになってるの!?」
元々、白の肌は色白で気付くのが遅れたが
よく見ると完全にゾンビ色になっている。
暁「昨日は普通だった……よな?」
白「うん、さっき薬ができたから半ゾンビ化してみたの」
蛍「してみたの……じゃないよ!?結構重要な事なのになんでぇ!?」
発狂する蛍……気持ちはわかる。
いきなり妹がゾンビになってたら流石にビビるだろう。
特に彼女はさっきまで半ゾンビ化について悩んでたんだ。
相談もなしにあっさりとなられると釈然としないだろう。
とはいえ……なんで彼女が半ゾンビ化したのか?という疑問があった。
俺たちと違って事務担当である彼女は拠点に出る必要がない。
そんな彼女にはゾンビ化はリスクのほうが大きいはず……。
白「お姉ちゃんには私の気持ちはわからないよ……。」
蛍「え……白?」
さっきまで普段通りだった白がうつむき……何やら神妙になる。
まさかこの姉妹の間に何かあるのか?
かつてないシリアスの予感にリビングの空気が重くなった……気がする。
蛍「わ、私が何かしたの……白?」
白「お姉ちゃんにはわからないよ!太る女の子の気持ちなんて!!」
蛍「……ゴメン、お姉ちゃん馬鹿だからなに言ってるのかわからない。」
君は分かる?みたいな目線を俺に向けてくるが俺もわからない。
フトルオンナノコノキモチって何語?
白「お姉ちゃんは良いよね。太らないもん。」
白「ここに来てから美味しいもの食べて
ずっとダラダラしてるのに全然太らないもん。」
蛍「え、えっと……。」
白「世界は理不尽だよ。私なんて5kgも太ったのに!
なんでお姉ちゃんだけ太らないの!?」
蛍「な、なんかゴメンね?」
白「私だってダイエットに悩まされない体が欲しかったの……。」
暁「その答えが半ゾンビ化ってどうなんだ。」
蛍「わ、私に相談してくれればよかったじゃん。」
白「お姉ちゃんは化物だから太る女の子の気持ちなんてわからないよ……。
この前だって、お肉バクバク食べながら」
蛍『何も気にせず美味しいもの食べられるって最高!』
白「普通は気にするよ!?体重気になるよ!?」
蛍「なんかごめんなさい……ほんとに……。」
暁「とりあえず、そんな理由でゾンビ化して良いものなのか?」
蛍「そうだよ!もしかしたらもう目が覚めないかもしれないのに!」
白「そこは大丈夫だよ。安全に半ゾンビ化出来る薬が出来たからね。
ここ最近、クイーンさんと作ってたやつなんだ。」
蛍「え……そんなの作ってたの?そんなに体重が気になってたの?」
白「それは……ちょっとあるけど
本当はゾンビ化してるクイーンさんと私じゃ動ける時間に差があったからさ。」
白「足手まといになるのも嫌だからゾンビになろうと思ってたんだよ。」
白「それに……この世界だと人間は普通に生きていけないしね。」
白「目が覚めないかもしれないってリスクを取り除けば
むしろゾンビ化したほうが良いと思ってさ。」
蛍「そ、そうなんだ……えっと……。私はどうしたら良いの?」
白「お姉ちゃんもゾンビ化したいの?」
蛍「うん、私は白みたいに賢くないしさ?
いざという時も考えると……ってさ?」
白「じゃあ、お姉ちゃんも飲む?」
そう言って差し出されたのは【半ゾンビ薬】と書かれた小瓶
なんか……スタミナドリンクみたいな見た目だ。
蛍「私……半ゾンビ化ってもっと色々あると思ってたんだよ……。」
白「ワクチンと大して変わらないよ?
一度感染してすぐに治療される感じだしね。」
暁「あ~デメリットとか……あるのか?」
デメリット付きのものをあっさり差し出すような子じゃないが……。
もし万が一……というのもある。
白「一応、目が覚めない可能性があるってのがデメリットなんだけど
条件を満たしてればそのデメリットはないに等しいんだよね。」
蛍「そういや、どうやって問題を解決したの?
ゾンビがただ暁の血を飲んでも目が覚めないってやつでしょ?」
白「その問題は暁さんに好意を持ってるかどうかだったんだよね。」
蛍「ん?」
暁「俺がじゃなくて、相手が?」
白「うん。暁さんに好意を持っていて
暁さんの細胞を受け入れる事が目醒める条件みたい。」
蛍「なるほど……。」
暁「待ってくれ……それだと俺は
咲実以外で血を摂取したゾンビ全てに嫌われてるってことなのか……。」
白「そこに関しては咲実さんがすごく特別なだけだよ。
ゾンビはそもそも人を感染させようって意識しか無いから」
白「普通に摂取させても復帰することはないんだけど……。」
白「出会ってすぐに一目惚れしてラブラブになれるくらいの相性なら
もしかしたら復帰出来るんじゃないかなぁって結論になったよ。」
蛍「それは……厳しすぎない?」
暁「でも和は?彼女もゾンビ化してる途中だったが
目覚めたばかりで会話もなかったぞ?」
白「和さんはゾンビ化したばかりで意識が残ってたから
その時の暁さんの行動に好意を持ったんじゃないかな?」
白「本人に聞いてみたけど身を挺してくれたところは覚えてたよ。
和さんと咲実さんが並んだからクイーンさんも混乱しちゃったみたいだね。」
暁「ってことは今後、ゾンビを撃っても復活は難しい?」
白「可能性はゼロじゃないけど……。」
蛍「0.1%も0も大して変わんないよね……。」
白「だね。意識がある人なら言葉をかわして好意を持てるけど……。」
暁「ゾンビでそれは厳しいわな……。」
白「だから目が覚めないデメリットは私達にはあんまり関係ないよ。」
蛍「悩んでた私がなんかバカみたい……。」
白「他にもデメリットみたいなのはあるけど……。」
蛍「そなの?」
白「うん、ゾンビ化すると生命機能が全部停止するからね。
体が成長しない。年を取らない。体型が変わらない。とかかな。」
蛍「もう不老不死じゃない!?どこがデメリットなの!?」
白「人によってはデメリットなんだよ。
クイーンさんとか結構嘆いてたし……。」
蛍「あぁ……。」
白「それに体が変化しないから傷付くと自然治癒では元に戻らなくなるよ。」
蛍「それはたしかにデメリットだな。」
白「あと、半ゾンビ化すると暁さんに逆らえなくなるのもあるよ。」
暁「それまじだったのか……。」
白「試しに適当に命令するとわかると思うよ?
全裸で逆立ちして外を走ってこいって言われても聞くかもしれない。」
暁「その命令を出す意味がわからん。」
蛍「ある意味一番大きなデメリットだけど……。
そもそも、そういうこと言う人に好意は持たないよね。」
白「うん。だからデメリットだけど……
デメリットにはならないみたいな感じだね。」
白「一応、メリットはゾンビから対象外になる。
スタミナ無限、体力無限、身体能力向上と一部超向上」
白「ダメージ無効、損傷回復薬が使用可能かな。」
暁「もはやゲームの設定だな。」
蛍「スター状態みたいな感じだよね。」
暁「身体能力向上の方は分かるが一部超向上ってなんだ?」
白「身体能力向上に加えて本人の持ってる特性?
みたいなのがもの凄く上がるんだよ。」
白「咲実さんの超身体能力は身体能力向上に加えて
身体能力が超向上したからみたいだね。」
蛍「二重がけみたいになってるからあの強さなんだ。」
白「和さんは瞬発力が凄いことになってるよ。
あんまり目立たないけど……一瞬のパワーは多分咲実さん以上かも」
二回目の探索でビルと敵を殲滅したのは怒りパワーとかじゃなかったのか……。
白「私とクイーンさんは思考速度が上がってるよ。
普通の人の3倍早く色んな答えを出せる感じかな?」
蛍「暗算とかが超得意になったみたいな感じ?」
白「そんな感じかな。クイーンさんは60桁まで暗算できるんだってさ
私は40桁くらいかな。」
蛍「桁おかしくない?私一桁なんだけど?」
白「あんまり生活の役には立たないけどね。」
蛍「じゃあ、私が飲んだら何か特性が作ってことね。」
暁「なんかワクワクしてないか?」
蛍「や~もしかしたら咲実さんみたいになれるかもと思うと……凄く心躍る。」
一応、人生を左右する薬品なんだが
白が既に半ゾンビ化したのと、スキルゲットのチャンスと聞いて
悩んでいた姿もどこへやら、両手で小瓶をしっかり握って
白「全部飲まないと効果ないからね。」
蛍「…………行きます!」
覚悟を決めて一気に飲んだ。
白とクイーンの薬だから万が一はないと思うが
中身が半分ほど言った所で動きが止まる。
蛍「うぎゅっ!!?!?!」
暁「蛍っ?」
白「あ、良い忘れてた……凄くまずいよ?」
蛍「……っ」ダンダン
地団駄を踏んで早く言えよ!と講義してるんだろう。
本当ならすぐにでも離して文句をいいたいんだろうが
全部飲まないと効果がないと聞いた手前、止まることは出来ず
とにかく飲み干そうと喉を鳴らした。
蛍「あぁぁぁぁぁ~~~~!!!!」
数分かかってようやく飲み終えてから悲痛な悲鳴が上がった。
暁「よしよし、頑張ったな。オレンジジュースだぞ」
蛍「あ"り"がどぉ~」ゴキュゴキュ
余程、えげつない味だったのかガラガラ声になってる。
えげつない味を流すためか、喉を治すためか
ジョッキに入れたオレンジジュースを物凄い速さで飲んでいる。
暁「蛍がここまでになるってどんなまずさなんだ?」
白「味覚が激痛と嫌悪感をすごく感じる味……かな?」
蛍「かなって何!?ありえないまずさだったんだけど!?」
白「言うの忘れてた……ごめんね。」
蛍「危うく吹き散らすとこだったよ……。
もうちょっと飲めるレベルに出来なかったの?」
白「まずさはワザとなんだ。」
暁「わざと?」
白「誤飲防止のためにね。人生を大きく左右するし、
全部飲まないと効果ないから、知らない人はすぐ吐き出せるようにね。」
蛍「それならまぁ……納得の味だったけどさ……。」
暁「そもそも誤飲するような物でもないと思うが」
白「クイーンさんがよく飲食物を持ち込むからね。」
暁「あ~」
普通、薬がある場所に誤飲するようなものがあるわけないが
色々と研究室に持ち込むクイーンなら誤飲しそうな雰囲気がある。
白「それで……気分はどう?」
蛍「ん……ん?あんまりよくわかんない。」
暁「肌の色は変わってるが」
蛍「てっきり、全身が冷たくなって寒々しく感じると思ったんだけど……。」
白「生命機能が停止するだけで感覚は全部そのままだからね。
感覚は多少鋭敏になるけどそれ以外は殆ど一緒だよ。」
白「強いて言うなら普通の人に触るとより暖かく感じるくらいかな?」
暁「握ってみるか?」
蛍「じゃあ……あ、ホントだ。さっきよりずっと暖かい。」
暁「蛍の手は多少冷たくなってるな。」
蛍「ゾンビは氷みたいに冷たい印象なんだけどなぁ。」
白「ナノマシンで擬似的に生きてる状態だからね。
ゾンビみたいに完全停止はしてないからそこまで冷たくないよ。」
蛍「なるほどねぇ。
ま、これで私もみんなの仲間入りってことねっ!」
紆余曲折あったがこうして、拠点からマトモな人間はいなくなった。
個人的にはこれでいいのか?と思ったりしたが
異様な世界で普通に生きていくというのは想像以上に難しい。
これからもこの世界で生きていくには必要なプロセスなのかもしれない。
そんなことを思いながら
蛍「はっ!?白がダイエットに悩まなくなったなら
これからお姉ちゃんおやつ作り放題!?」
白「一応、材料にも限界があるから程々にね。」
蛍「止められなかった!やったぁ!おやつパーティーだぁぁぁ!!」
ゾンビ化しても変わらず仲の良い二人を眺めていた。




